スタンダードC470のメンテナンス
広域帯受信に対応してかつ、V/Uのゲインの高いアンテナを中古で物色し、落札したらジャンクでいいならとUのハンディ機をいただきました。いただいたのはスタンダードのC470で、先だって電源の入らないという修理を依頼されたC460の後継機種になります。このC470はアナログ式携帯電話の勃興期に発売された機種であり、携帯電話の回路技術のフィードバックによりC460と比べるとかなり小型軽量化され、電池ケースを外した状態の大きさは今出来のハンディ機とさほど変わりません。しかし、小型高出力の背面装着型リチウム電池登場以前の機種のため、下に電池ケースを装着するのは以前の機種と変わらず、なんか中途半端で惜しいような気がします。面白い機能として430メガ帯のトランシーバにも係わらず、144メガ帯が50mWという微弱電波で送信可能なことです。この時代のハンディ機のことはあまり関心がありませんでしたが、他メーカーでもモノバンド機は同様な機能があったのでしょうか?そのため、申請上ではデュアルバンダー機扱いになります。また受信拡張を施せば下はFM放送帯の82MHzから上は999.990まで連続して受信が可能なようで、エアバンド帯は自動的にAM受信になる優れものです。
またロータリーエンコーダーが一種のジョグダイヤルになっていて、早く回すと周波数が大きく変化し、細かく動かすと通常の設定ステップで周波数が変化するような仕組みになっていますが、本体を右手で握ったときにちょうど親指が掛かるように大きくなっていて、片手操作が容易です。このダイヤルの採用でアップダウンキーがなくなりましたが、テンキー操作はフル入力可能でバンド切換なしに下は080.22から上は999.99まで親指一本のダイレクトキー操作ですぐにQSYが可能で、広域帯受信機代わりとしても十分な操作性を備えます。2種類のメモリーユニットが用意されており、これを電池ケースを外した本体に差し込むことで、40chと200chの周波数メモリーが可能というのは、当時メモリーチップがまだまだ高かった時代ですので仕方がない仕様かもしれませんが、この個体には40chのメモリーカードが装着されていました。このカードを取り付けると起動時にポパピポ音とディスプレーにC470の機種名が表示されるというギミックが仕組まれていて、この起動音はSFチックでスタートレックマニアには受けそうな。
広域帯受信機能付きで、その昔エアバンド受信によく使われたDIAMONDのRH-901のおまけとして届いたC470は電源が入らないということで、乾電池ケースを外してよく見ると前後の電極を繋ぐ金属のタブが下に曲がって前後のケースの底に挟みこまれている状態で、これでは乾電池電源の用途を果たしません。ラジペンで反対側にちゃんと接触するように整形して電池を入れると、当たり前のことですが、ちゃんと上部の電極に電圧がかかりました。電池ケースを装着して一旦リセットをかけて電源を入れないと電源が入らないのではないかと危惧しましたが、電源スイッチを押しただけでポパピポ音とともにあっさりと起動に成功。メモリー機能も正常ですので、バックアップ電池も抜けていないようです。受信拡張改造もされており、これであとはもう手をかけるところがなく、逆にちょっとがっかりしました。
まあ、これでは技術的興味は満たされないので、コンデンサー液漏れチェックをかねて分解します。底のビスを外し、上パネルの選局ダイヤル、スケルチ&ボリュームノブを外し、防水ゴムに隠れている2本のビスを外し、BNCコネクタ台座の防水ゴムを外します。そしてサイドとバックのビス2本を抜くと本体が前後に分解出来ますが、この時代はもうコネクトがフレキシブル基板となっており、この基板を切らないように注意しなければいけません。さすがに前設計で懲りたのか、この時代のスタンダードのハンディーもご多分に漏れず表面実装の電解コンデンサーが極力廃され、変わって容積も小さいチップタンタルコンデンサーが多く使われています。一部使用されている表面実装の電解コンデンサーに液漏れの兆候も見当たらず、内蔵バックアップバッテリーの電圧も十分だったため、今回は予防のためのコンデンサー交換もなしに点検後にそのまま組み立て直してしまいました。
C470は技適機種なので、電子申請ですぐに変更届を出すことが可能で、TSSに保証認定を申請する必要がなく楽ですが、乾電池パックで1.5Wの出力しかなく、自ずから主にレピーター交信用などに用途が限られます。トランシーバというより広域帯受信機代わりにポケットに忍ばせておくという用途で使用したほうがいいような。でもまあ、今出来の同クラスのトランシーバと比べて電源電池の分だけ大きいのはしかたがありません。その分電池ケースがグリップ代わりになって握り易いことは確かです。
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