スタンダードC520のコンデンサー交換修理
第一の素材は数ヶ月前に入手したスタンダードのC520です。たぶん平成に年号が変わったころに発売されたデュアルバンドのハンディー機ですが、当時の新機軸としてV/U同時受信が可能になった最初の世代に属するハンディ機です。アクションバンド誌の影響かどうかは知りませんが、コマンドによる受信改造などの自由度が大きく、映画の影響でスキー場などで使う人間が多かったからか、かなり売れたハンディ機のようです。当時の一番人気機種だったのではないでしょうか?そのため、オークション上でも常に見かけるハンディー機ですが、よく知られているように使われている表面実装型電解コンデンサーの不良で、まともに電源が入らないものが多く、さらには電源を入れると送信状態になったり、電源をいれていちいちリセットを掛けないと表示が出ないなどの症状はこのコンデンサーの液漏れによる容量低下や通電不良、さらに内蔵リチウムタブ電池切れが原因になることが多いようです。メーカーではすでに修理の受付は終了しているようなので、これらの修理は自己責任による個人修理で基板洗浄のうえ、コンデンサー交換を行うことになりますが、ほとんど千円未満の部品代で修理出来るのであればそれに越したことはありません。それがいやであれば個人でC520の修理を業としている某氏もしくはラジオ何とかという神奈川の業者に修理依頼するしかありません。ネット上ではC520の修理例が山のように載っている関係かC520のジャンクは残存価値以上にオークションで価格が高騰します。しかし、普段から半田ごてもあまり握ったことがない人がジャンクのC520をいきなり修理しようとして、どれくらいの割合で修理を完結出来たのでしょうか?
釧路から入手したC520はスピーカーマイクが付属してましたがそこそこの落札額でした。実験用の安定化電源を底の端子につなぎ、スイッチをひねっても表示も音も出ません。そこでボリュームとスケルチおよびロータリーエンコーダーのつまみを外し、底ビスと前後の筐体を止めているビスを外すと本体が分解できますが、予想通り表面実装の電解コンデンサーは液漏れしきったものやマイナス側の足に緑青が浮いたものばかりで、あまつさえ電解液が基板に漏れ出して汚染しているものもあり、コンデンサーを除去したあとに徹底的に電解液を洗浄しなければ基板上でショートを生ずることもあるかもしれません。また、なぜかタブ付きリチウム電池が付いていませんでした。とりあえず表面実装電解コンデンサーを除去しますが、液漏れコンデンサーをおそらく数百個単位で交換した経験上、そのまま熱を掛けてランドから浮かせてはがすのは、それでなくとも腐食で弱くなったパターンを基板からはがしやすく危険で、結論からしてニッパーでコンデンサーを根元から切り取り、残った足を半田吸い取り線をあてて半田ごてで溶かして除去するのが一番安全という結論に達しています。このうち220μF 6.3Vの筒型電解コンデンサーのみ50Vの耐圧のものしか手持ちがなかったのと、液漏れの様子がなかったので交換を見送りましたがこれが大きな誤りでした。手もちのコンデンサーはすべて標準サイズの足つき電解コンデンサーでこれをそのまま取り付けたのでは前後のケースが閉まらないので、足同士がショートして動作不良が起きないように配置を考えて足をまげてコンデンサー本体をオフセットする必要があります。たまたま33μF 6.3Vのコンデンサーは小型のディップタンタルしかなかったため、これを取り付けることによって少しスペース的にゆとりが出来て何とか標準サイズのコンデンサーの組み合わせて前後のケースを閉じることが出来たような感じです。コンデンサーの半田付け前にエレクトロクリーナーで液漏れ箇所を徹底的に洗浄したのは言うまでもありません。これを怠るとかならず動作不良を来たしたり、パターンの腐食を進める原因になります。第一、洗浄しないとランドに半田が乗らず、いも半田になったり余計に熱を掛けてパターンを剥がしてしまう原因になります。
手持ちのタブ付きCR2032電池は足の長さが基板まで届かなかったため、切ったコンデンサーの足をエクステンションにして基板上に半田付けしました。そして本体を組み立て直し、安定化電源を底の端子に繋ぐと電源が入らず、横のリセットキーのホールをピンで押してリセットを掛けると、電源が入って表示も出たのですが送信状態に陥ってしまって通常動作はしませんでした。しかし何回かリセットを掛けると受信状態になったりもしますが、一旦電源スイッチをひねってオフにして再びスイッチをひねっても電源が入らず、またリセットを掛けると表示が出て送信状態に陥るというような状態になってしまいます。どうも220μF 6.3Vの筒型電解コンデンサーを交換しないと埒が明かないようで、ネット上で耐圧が10Vのものを発注しましたが、これも標準サイズの足つきコンデンサーしかなくまた足同士がショートしないように本体をオフセットして取り付けなければなりません。コンデンサーはまもなく入手できたのですが、古パソコン再生作業のほうが忙しくなって2ヶ月も作業を放っておいてしまうことになりました。
作業再開のきっかけはたまたま入手したアルインコのDJ-560SXというデュアルバンドの時代も機能もC520と殆ど変わりないハンディ機をC520の半値近い落札額で入手し、たまたまそのDJ-560SXがスピーカーからの音が小さいという故障を生じていて、この症状は十中八九は低周波増幅回路のパスコン抜けに違いなく、分解すると案の定、表面実装の電解コンデンサーのマイナス足が液漏れで腐食しているという大変にわかりやすい状態になっており、これを同容量同耐圧のものが高いディップタンタルコンしかなかったため、もったいないと思いながらこれを交換して一発で修理完了した勢いで、C520の残りのコンデンサー交換にも手をつけたのでした。C520の220μF 6.3Vのコンデンサーはこの4個だけスルーホールで裏の基板に半田付けされています。そのため裏側から半田吸い取り線を当てて半田ごてで半田を融かして除去するのですが、基板の裏側に一部スルーホールを伝って電解液で汚染されていました。コンデンサーは割と簡単にスルーホールから除去できましたが、スルーホールに半田が残ってしまい、いくら半田吸い取り線で半田を吸い上げようとしても除去できません。それで車で15分ほど離れたホームセンターにピンバイスと極小ドリルビットを買いに走ってしまいました。何とかスルーホールの半田をさらい、PTT付近の3個のコンデンサーの交換に成功しますが、CPU付近の1個を見落としてしまい、組み立て直してもいちいちリセットを掛けないと電源が入らないという症状は改善しませんでした。CPU付近のコンデンサーを交換してはじめて正常に表示をして受信常態になるのですが、スイッチを入れたときに一瞬もしくはほんのわずかな秒数、発信してLEDが赤表示になったあと通常の受信状態の緑に戻るという症状が出てしまいました。コンデンサーの極性や容量のミスはないはずです。それで半田付けの部分をもう一度総点検し、一部のコンデンサーの半田付け部分に熱を掛け直すことにより、スイッチ投入直後に発信状態に陥ることもなく、完全に通常動作するようになりました。最後に周波数計のBNC端子にアンテナを装着し、C520のアンテナにダミーロードを同軸ケーブルを介して取り付け、周波数計と疎結合としてFずれチェックを行い、誤差の範囲内であることを確認して修理完了です。さらにダミーロードに他のハンディ機のアンテナを疎結合して変調の具合をモニターしてみましたが特段問題なく、オシロを繋いでの変調度の測定等のチェックはパスしました。ただ一箇所不具合があって、原因はわかっているのですがSSGを繋いでチェックしなければいけなく、現状維持にしてあるところがあります。それは430MHzのRFレベルの強度が変化しないことで、これは内蔵リチウム電池直下のトリマーコンデンサーでレベルを調整するようですが、このトリマーが液漏れコンデンサーの電解液で汚染されていて直結もしくは不通状態になっているようで洗浄かトリマーコンデンサー自体を交換して基準信号掛けて調整しなおさなければいけません。現状使用する分には問題ないので、後日の課題にして今回は目を瞑ることにしました。
このC520には7.2Vの充電池パックが着いていましたが、適合するACアダプターでスロー充電を掛けても殆ど充電されず、中身を交換する必要がありました。ところが、最近は環境問題の影響か一般に入手出来るAAのタブ付き電池はニッケル水素電池に限られますが、このニッケル水素電池はニッカド電池に比べて高容量ですが、自己放電が大きいという欠点があり、またニッカド電池使用の機器に置き換えるのには充電器や保護回路の問題を始め、いくつか注意を要します。当方は機会あるごとに秋葉原でタブ付きのニッカド電池を電卓修理用に購入しており、ほかにも未使用ジャンクの組電池ニッカドパックを集めていましたので、無条件に6本組みのニッカド電池パックを作って中身を交換することにしました。今出来のタブ付きAAニッカド電池は1100mA/hのものがあり、手持ちもあるのですが、これはけっこう高価(一本300円?)だったので、ジャンクで入手した700mA/h6本組み電池を使用します。作業はさほど面倒くさくありませんが、充電の保護回路として一種の温度スイッチが入っていて、充電が完了してニッカド電池の温度が上昇すると回路が切れる仕組みになっています。使用した電池パックの温度スイッチのほうが薄くて邪魔にならないものでしたので、こちらをそのまま流用しました。充電池パックを時計の裏蓋はがし工具で溶着部分を慎重に割り、中身を取り出すと、マイナスの電極から満遍なく白い粉が析出しています。これではさすがに充電能力はありません。配線配置を間違えないように組み電池のタブを半田付けしなおし、配線もつないでケースを接着してクランプ2個で固定し、半日放って接着が完全になった後にスロー充電し、ニッカド電池パックの再生が完了しました。おそるおそる電源のつまみをひねると、これがなぜかうんともすんとも言わず、あわてずにリセットを掛けると何事もなかったように電源が入り、通常の受信状態となりました。つかさず資料を見ながらコマンドによる受信範囲の拡張ならびにスタンダードの当時のキー操作による3桁入力というのは非常に使いにくいため、4桁入力の隠しコマンドで拡張領域でのダイレクトキー入力操作をやりやすくしました。コマンド入力による機能拡張はあえてこの程度にしておきます。
周波数メモリーがV/U各10波だけというのは、同年代他メーカーの機種と比べても見劣りしますが、以前使用していたアルインコのDJ-500SXは鉄道のCタイプ無線機の3周波数が受信周波数拡張してもカバーされておらず、このC520は高利得アンテナを装着し、専ら鉄道無線Cタイプ受信用に使おうかなんて考えつつ、修理の上がった他のハンディ機とまとめてTSS経由で保証認定とって変更届を出さなくてはいけません
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