IDEAL-RELAY No.105 システムリッツ計算尺
戦前のIDEAL RELAY時代の計算尺はすでに何本か入手していますが、その殆どは製造元の東洋特専興業刻印のものではなく、販売元の理研光学発売のものが多く、東洋特専興業刻印のものは唯一一本しか所持していません。今回のIDEAL RELAY No.105と思われる計算尺も理研光学発売刻印のもので、戦前HEMMIの片面尺のように逆Cカーソルが付いていました。この逆Cカーソル付きのIDEAL RELAY計算尺はなぜかかなりのレア物で、当方のコレクションにも他に一本だけです。このNo.105はHEMMIのNo.64同様のシステムリッツです。このNo.105はそのままの姿でRELAYからRICOHに至るまでだらだらと製造が続きますが、戦後は√10切断尺が主流になり、相対的にHEMMIのリッツ尺No.64の割合が減ったのと同様にNo.105も数はそれほど多くは作られなかったようです。HEMMIのNo.64は延長尺部分が赤で入れられるのがお約束ですが、RELAYのNo.105は逆尺の数字以外は黒のため、色味に乏しく、ゲージマークこそ一通り揃ってますが、厚みもHEMMIより薄く、カーソルも補助カーソル線が無いなど相対的に安っぽく、戦前HEMMIのNo.64のクオリティには到底かないません。その分、HEMMIのNo.64よりはかなり割安な価格で売られていたようです。また当時のIDEAL RELAY計算尺は目盛りはともかく、数字などの刻印にシャープさがなく、全体の印象もダルな印象が強く、損をしているような。そもそもHEMMIのNo.64はA.W.FABERを向いているのにIDEAL RELAYのNo.105はまるっきりHEMMIのNo.64の方向を向いているということで、最初から志が違うようです。さらにRICOH時代のNo.105に至ってはご丁寧に各尺種類が刻まれたかわりにゲージマークなどが相当省略されたものとなり、HEMMIのNo.64とは差異が生じ、何のために昭和40年代まで残されていたのかわからない状態になっています。ケースは以前手に入れた理研光学発売刻印のNo.109が入っていたのと同じ戦前ヘンミの片面尺用同様の楕円断面の蓋付貼箱で、戦争が激しくなるとHEMMIもIDEAL RELAYも簡単なサックケースになってしまいますから、まだ戦時中でも初期のころの製品でしょう。同年代のHEMMI No.64と比較してみると刻印ゲージマークはほぼ同じでK尺の数字がNo.64はフルで刻まれているのに対しNo.105は上一桁のみで0が省略されています。またNo.64は延長尺部分と逆尺の数字は赤で刻まれているのに対してNo.105は最初から黒のままのようです。また本体も固定尺と滑尺の幅は同一ながらと厚さがNo.105はNo.64より2ミリほど薄く、スケールを含めた幅も2ミリほど薄くなってます。またIDEAL RELAY時代のNo.105はまったくのNo.64コピーですが、戦後の輸出再開時に製造されたダブルスターRELAYの時代になって初めて尺種が刻まれ、逆尺の尺種と数字のみ赤入れされ、そのときにHEMMIの戦後型No.64同様に裏側副カーソル線窓にセルロイドが嵌ったようです。またHEMMIのNo.64は昭和28年頃に左右延長尺部分の開始と終了部分が改められましたが、Relay No.105は終末期まで延長尺部分が改変されることもなく、RICOH時代になって、あまり使わないゲージが大胆に整理され、No.102やNo.103同様に「初心者用」と割り切られてしまったような感があります。
ごくごく簡単な理研光学が発行した説明書がケースの中に残っていましたが、当時の理研光学では詳細な説明書を編集する人材が乏しかったようで、HEMMIの片面尺用計算尺説明書と比べると相当見劣りがする基本的な操作のみの説明書になっています。入手先は東京で、上固定尺の接着が剥がれてセルがいびつに収縮したらしく、張りなおしてありましたが残念ながら末端の目盛りがすっかりずれてしまっています。
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