藤野式計算器 No.2556 金属重量計算用
戦後のコンサイス円形計算尺のルーツである藤野式計算器ですが、さほど珍しい計算尺ではないのにも係わらず、意外と高い落札金額がつく計算尺です。発売初年は大正中期のようで、戦時中に金属が枯渇した時期まで二十数年にわたって発売されたようですが、年代によって刻印などが異なるものが見つかっています。玉屋の取扱商品目録や実際に目にする藤野式などによって発売当初から一般計算用1種類、金属重量計算用5種類、工作時間計算用1種類の7種類がラインナップされていてそれぞれ、No.2551からNo.2557の形式名が付けられていますが、本体には旧字体で「製造番号第弐五五壱号」などと刻まれてますので、シリアルナンバーと勘違いしている人もいるかもしれませんが箱のラベルと本体を包装しているパラフィン紙には「No.2551」表記ですので、これが形式名であることがわかると思います。今回入手したのは金属重量計算器のNo.2556ですが、奇跡的に内包装と外箱が残っている完全品で、こんな古い藤野式がこんな状態で出てくるのは奇跡に近いものがありますが、箱の表面に張られていた商品一覧により、当時発売されていた藤野式の全貌がわかりました。
それによるとNo.2551が一般計算用、No.2552とNo.2553が鋼材の重量計算用でそれぞれの単位がインチとメートルの違いがあります。重量単位は貫、キログラム、ポンドの各目盛を有します。No.2554,2555,2556は鋼、鋳鉄、砲金用の金属重量計算器で、No.2554は長さがインチ・フィートで重量がポンド、No.2555は長さがメートルで重量がキログラム、No.2556は長さがインチ・フィートで重量が貫です。No.2557が工作時間計算用マニシストコンピューター、おまけでNo.2571が別売りの革ケースです。
それが昭和7年の玉屋の目録では内容は変わらないものの品番がNo.4501からNo.4507までに変更になり、革ケースの品番はNo.4508になっていますが、この品番になるまでNo.4001という鉄鋳鉄用金属重量計算器(寸法インチ・フィーと重量キログラム?)というものがあったり、No.2555なのに外周部にポインティングデバイスが付いたものなどもあり、わからないことがまだまだあります。また一般計算用のNo.2501は「専売特許藤野式計算器」などの書体がまったく異なる2種類があり、なぜこのようなものが存在するのかは、あまりにも残存個体数が少ないために想像することもできません。
今回入手した藤野式はNo.2556の金属重量計算器で、長さがインチ・フィートで重量単位が貫です。今のところ一番良く見るのはNo.2555の長さメトリック・重量単位キログラムのものですから今回のNo.2556はある意味レアもの。使い勝手が悪かったのかあまり使われずに箱や包装までそのままで、残ってしまったのでしょう。この藤野式が戦後にコンサイスに引き継がれるわけですが、藤野式の直径が9センチに対してコンサイスは約10センチ少々と大型化しました。しかし有効基線長が長くなったわけではなく、単に円盤の直径が大きくなっただけで目盛りの基線長はまったく同じです。入手先は四国の今治市からで入手価格はたったの1.2k円でした。ちなみに大正6年当時の価格はNo.2557を除き各モデルすべて3円、No.2557は4円です。
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