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April 14, 2013

似非Macintosh NEC PC-9801CVの整備

9801cv1_2 以前はどこの会社にいっても必ずと言っていいほど使用されていたいわゆる国民機:NECのPC-9801ですが、今となってはまったく触ったこともなければDOSのプロンプトからどう操作していいのかもわからないパソコンユーザーが殆どになってしまったと思います。それというのもCONFIG.SYSやAUTOEXEC.BATの呪縛から開放され、誰でもアイコンをダブルクリックすればアプリケーションが起動するというGUI環境が整ってからパソコンを使い出し、CUIの環境でコマンドにスイッチやパラメーターをつけたコマンド入力で操作する必要のあるパソコンを使ったことの無いユーザーが大多数を占めるようになったからに他ありません。しかし、そのウインドウスしか知らないユーザーの中にもあえてCUI環境のパソコンを使ってみたいという酔狂な人もいるようで、今では粗大ゴミ以外の何物でもないPC98の中でも1万円を越えて取引されるような人気の機種もあるようです。しかし、各種機械の制御用という産業分野には未だにPC98が無ければ事業が成り立たないところがあり、今になっても完全整備済みのPC98を求めるという深刻な事情のある需要はあるようですが…
 ところで、我が家ではEPSONのPC-486HAとPC9821V233という青札タワーを中核とするPC98環境が未だに稼動状態にあり、いつでも使えるのですが、初期の98ソフトでは2ドライブを要求されるものが多く、特に5インチFDD2枚が使用可能な環境が現在無いため、あえて当時の5インチFDソフトを使うためだけにPC-9801FA2なんかのジャンク再生などを行っています。しかし当時のPC98は3.5インチドライブも5インチドライブも酷使と経年劣化による作動不良が多く、さらにマザーボードの4級塩コンデンサー液漏れによる通電不良やパターン腐食などもあり、その修理再生はなかなか一筋縄というわけにはいきません。おまけに長年使用してきた水平15,24,31kHz3モード対応モニターがフライバックトランスからCRTに伸びる高圧コードの経年劣化絶縁不良で、導電塗料を塗ったケースに最近アーク放電するようになり、使用を即刻停止した関係で8ビット機、PC98などの修理再生なども滞ってしまい、まったく困ってしまっています。
 そこにモニター接続の心配の無い一体型のPC98が一台大阪からやってきました。モニター一体型というと以前PC-9821Cbの初代キャンビーをリアルタイムでいじったことがありましたが、これはすでにWindows3.1に特化したPCで、以前のPC98の資産を有効活用しようとするとそれでなくとも拡張性が乏しいのに色々と機器を追加しなくてはいけなく、またMacintoshユーザーからしてみるとQハチ君メニューというランチャーでGUI環境を得ていても所詮は出来の悪いWindows3.1マシンでしかなく、さらに設置場所を意外と食うため深入りしなかったのはもちろんです。案の定、パワー不足(486SX 33MHz)と拡張性が無いのが仇となり、直後に訪れたWindows95の発売時には使い物になりませんでした。今回の一体型PC98はキャンビー以前のV30専用機、PC-9801CV21です。8086上位互換のNEC V30 10MHz搭載機で、1988年3月の発売ながら、そのスペックは1985年発売のデスクトップ並であり、そのころには286/V30の2CPU搭載機が当たり前で、386搭載機もぼちぼち出始めた頃だと思いました。そのため、後の286以上を要求されるゲームソフトはまともに動きませんし、もちろん1メガを超えるEMSなんか組み込むことができませんので、ソフトによっては「コンベンショナルメモリーが足りません」などのメモリー不足の呪縛からは逃れられず、640kBの範囲内で使えるコンベンショナルメモリーをちまちまと節約しなければならず、当然のことながらWindowsなんか動きません。そもそもHDDを内蔵することすら出来ないのです。当時はHDDというと未だにSASI規格の時代でしたが、おそらくCバスのSCSIカードを取り付けたところで外付けのHDDも20MBか40MBしかサポートしていないのでしょう。V30の独自拡張命令の正式サポートはMS-DOS3.3Dだということを聞きました。しかしながらMacintoshのPlus以降の一体型マックに良く似た姿は、どでかいキャンピーなどに比べるとかわいらしいの一言で、たとえ用途が限られようとも動作品を一台置いておきたいものだと思っていました。ところがすでに粗大ゴミとして出しつくされたのか、今ではオークション上で年間に出品される数も少なく、今までことごとく捕獲に失敗してきました。いくら数がすくなくなったとはいえ、動く保証の無い粗大ゴミに大金を払う気はさらさらありませんでしたが今回は運良く1000円で捕獲に成功。もっとも送料が2250円掛かってしまったのは仕方がありません。N88 ROM-BASICのHow Many File(1-15)の表示だけの出るのが確認されたジャンク品でFDDのべセルが殆ど飴色に変色していましたので、相当使い尽くされてFDDが認識されなくなった状態のジャンクかと思ってました。9801cv2_2 届いたPC-9801CV21は以前見たときの印象と違って奥行きが予想以上にあり、これはCバスを搭載しなければならない関係上しかたがないようです。ちなみにマックの一体型の奥行きが、たかだか25センチ程度なのに比べて33センチ近くも奥行きがあります。いちおう通電だけしてみましたらちゃんとピポ音が鳴り、ROM-BASICが起動するようなので表示には問題がなさそうですが、各部の状態を調べるためにケースを開けて見ることにします。ここで注意しなければいけないのは、我々電気のライセンス持ちにとっては当然なことですが、必ず電源コードを抜き、フライバックトランスからCRTのアーノードにかけてのラインには触れないことで、下手にアーノードキャップをめくって電極に触れようものなら数千ボルトの電撃をくらって運が悪ければ心停止の状態に陥ることもあります。ケースに「サービスマン以外ケースを開けるな」の警告がありますが、CRTの動作原理に知識のない人は絶対にケースを開けないで下さい。テレビと電子レンジの修理中に感電死した事故を何件も知ってます。ケースはマックのような特殊なドライバーやこじ開け器なしに上部の取手奥の左右2本とケース下の2本のねじを抜き、ケースを後ろに引き抜くとシャシー部分が露出します。使いつぶされたという予想はみごとに裏切られ、マザーボードにはまったく埃も溜まっておらず、電源の冷却フアンにも僅かにしか埃がこびりついていませんでした。ケースなどの成型時のタイムスタンプ、FDDのラベルを見ると、なんと1990年4月から8月のタイムスタンプばかりの部品で構成されていました。それ以前のタイムスタンプが見つからなかったため、このPC-9801CV21は1990年8月以降のアッセンブルだということがわかります。V30搭載の一体型機が発売から2年半も作り続けられていたことはある意味オドロキですが、386機がほぼ標準になりかけた時代にV30機を導入したところで殆ど使いようがなかったのでしょう。こちらにとってはほとんど使われずに放置された個体であるということがわかってある意味ラッキーでした。この時代の標準2モード3.5インチFDDであるNEC FD1137Dはよく動作不良を起こすことで有名らしいですが、いちおう中の状態を調べるためにシャシーから取り付けマウントを外そうにもCRTの前枠が邪魔で外すことができません。前枠を外すためにはまず電源部を取らないとどうしてもドライバーが入らないネジがありますので、まずは電源を外すため電源コネクター5箇所を外します。サイドのネジを外して電源を取り出したら今度は前枠裏のCRT4隅のネジ4本と下部の左右のネジを外すと前枠は簡単に前へ外すことが出来、FDD取り付けマウントのネジを3箇所外し、横に引き出しながら電源と34PINの接続コネクターを外せばFDDを取り出すことができます。両方のドライブを抜き出してケースを開けてみましたが、こちらもまったく埃の吸い込みも見当たらずきれいな状態でした。ところがあとになって重大欠陥を持った状態であったことが判明します。とりあえず内部目視ではコンデンサーなどの液漏れも見当たらず、表示も通常に出来ていることからそのまま逆の手順で組み立て直し、FDDに起動ディスクを入れてブートを試みますがFDD1も2も何の反応を示さず、ROM-BASICが立ち上がります。完全にFDDが壊れてます。ためしに外付けの5インチFDDを繋ぎ、ゲームソフトのデモをブートさせてみると「このソフトウエアは640kBのメモリーが必要です」の警告が…。いつもEMSになれていたから気づきませんでしたがずらりと並んだディップスイッチのひとつで640kBと512kBに切り替えるようになっているようで。ちゃんとディップスイッチを外付けディスクからのブートに設定しなおしてメモリーも640kBに切り替えるとちゃんとゲームソフトのオープニングが特徴的なFMサウンドと共に流れるようになりました。本体の機能はまったく問題がなく、単に内蔵3.5インチFDDであるFD1137Dの不良ということがわかりましたが、ネットで調べるとFD1137Dはマイクロスイッチに挿入したFDが接触してスイッチが入るようになっているものの、この接触部分の樹脂が磨耗してスイッチを押し切れなくなったり、また接点の接触不良も起こし易く、そうなるとまったくFDDドライブとして認識されなくなるとのこと。このFDDは1990年4月製造品でもあり、ハードに使用した形跡もまったくないので、樹脂の磨耗は無いにしてもマイクロスイッチの接触不良でFDDに電源が入らず、FDが認識されないのは確かなようです。面倒でしたが再度分解をしてFDDを取り出し、天板とべセルを抜いてマイクロスイッチのシャフトを見ますと磨耗はまったくなく、FDを挿入するとちゃんとマイクロスイッチを押しています。そうなると接点復活スプレーに付属のノズルチューブを取り付けてシャフトにかぶせ、ほんの僅か接点復活材を注入して割箸の先端を削ったもので上下に何度も軽く動かすことを繰り返し(他に漏れた液は綿棒で完全に拭いておくこと)、これを2台のFDDとも行ってからもとに戻し、ダメもとでFDDにシステムディスクを入れて電源ボタンを押すと、ちゃんとピポ音のあとにFDDからシステムブートして画面に表示が出るようになりました。さらに昔、成田のLAOX階段脇においてあったTAKERUからダウンロード購入したN88 BASICベースの3.5インチFD、V30機時代のゲームなどもちゃんと動作しており、ここにPC-9801CV21の1990年後期生産品が完全動作品になりました。 思い起こせばすでにPC-9821の時代に秋葉原のラジオ会館の何階かで酷使され薄汚れたた小型のCRT一体型PC-9801マシンが、けなげにも黙々とデモ画面を映し出していたのを見た光景からはや20年、よもやうちのPC98ラインにこいつが加わることになるとは思いもせず、何かうれしいなぁ。しかしFDDのアクセス音でかすぎ(笑)また電源フアンの音も気になります。いっそうのこと静音仕様のやつに付け替えてしまいましょう。

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