HEMMI No.40F 生徒用計算尺
金属枠つきカーソルのHEMMI No.40RKを手に入れると、なぜか手元にまだ無いことが急に気になりはじめたHEMMIのNo.40Fですが、不思議なことにこの生徒用10インチ√10切断ずらし系計算尺は昭和30年代末期に入ってから突然ラインナップに加わったようで、8インチの学生用計算尺が戦後すぐにマンハイム系√10切断ずらし系の2種類が揃っていたのになぜここまで発売がずれてしまったのか、その事情がわかりません。そのため、√10切断ずらし系のNo.40Fはプラ一体型のカーソルが付いたものしか存在しないようです。ケースは30年代末期から40年代初期の仕様変更で、緑箱と緑帯箱の双方が存在します。また、学校教育用とは規格が異なる10インチ尺のためか、No.40RK同様にその大部分が輸出に回ったようで、国内から出てくる数はNo.40Kなどと比べると圧倒的に小数ですが、国内であまり売れなかったためか、売れ残りのデッドストック発見率は高いようです。ところが、よくよく調べて見ると輸出に大半が回ったように想像していたNo.40Fは欧米では一軒もOEM先が見当たらず、特に北米方面では√10切断尺になじみがなかったためかその存在自体注目されていないため、輸出といっても東南アジア方面向きのものだったか、もしかしたら国内専用だったのかもしれません。その都度スポット的に何年かづるづると製造されたということもありますので、製造刻印には今後とも注目していきたいところです。実は当方もまったくNo.40Fの存在は気にも留めていませんでしたが、40RKがあればNo.40Fがないのも不自然ですので、注目してみるとあまりケースはきれいでありませんでしたが100円で出品されているものを見つけ、久々に100円で落札した計算尺になります。No.40Fは緑箱時代の前期型と緑帯箱時代の後期型が存在するようですが、今回入手したものは緑帯箱時代の後期型です。前期型と後期型の違いは刻印のみで、前期型は滑尺右にメーカー刻印と形式刻印が入るのに対して、後期型は当時のNo.2664Sなどと同様に下固定尺右にメーカー刻印が入り、形式刻印は上固定尺右に入ります。またCF,CI.,C尺左に÷×÷のマークが追加され、カーソルには×÷×の刻印が加わり、初心者練習用計算尺の印象がより深まりました。他の竹製学生尺などと同様に固定尺断面はスクエアで、固定尺裏同様にセルが張られておらず、裏側同様ニス塗り仕上げとなっています。入手先は香川の東香川市で、製造刻印は「UA」ですので、昭和45年1月。8インチ尺は前年からプラスチックの山梨系OEMに変わっていますので、おそらくこの手の裏ニス塗り仕様の練習尺としては最末期のものになると思います。その後アメリカ輸出の10インチ練習尺も山梨系のOEMに変わったようです。今回初めて気が付きましたがNo.40RKの三角関数尺は当然のことながら順尺なのにNo.40Fの方はわざわざ逆尺に刻まれています。戦時中のNo.2664以来のHEMMI片面√10切断尺の伝統みたいなものですが、HEMMIが特許を持っていたらしく、他社が追随できなかったようです。逆に√10切断ずらし片面尺ながらNo.P45Dのみ順尺で、これは裏の副カーソル線窓が省略されてしまい、滑尺をひっくり返さないと使えないというコストダウンの事情によるものです。
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