IDEAL RELAY No.505 5インチポケット計算尺
つい最近オークション上に「戦前のRelay T-401」と称する4インチ逆尺付きマンハイム尺が出品され、その説明書きが商品とは異なっているものの、とんでもなく詳細で、相当な計算尺研究者の出品かと思いきや、こともあろうに以前当方が取り上げたダブルスター時代の輸出用T-401の記述を断片的にコピペした文章で、いかにも自分の独自研究のように装いながら、的外れな記述に終始し、あまりにも腹立たしいので質問欄に「当方の記述をコピペして的外れな説明を加えるとは不愉快だ」と書き込んだのにも係わらず、オークション終了まで無視を決め込まれ、なんら回答も釈明もないままオークション終了という事態がありました。さらにこの業者は新規のサクラを使ってとんでもない価格をBidしたのか、入札額を引き上げるということをいまどき平気で行い、結局はそこそこの値段で入札する人がいることがわかって、当初の出品価格の3倍半で再出品するというどこまでもとんでもない業者でした。さらに再出品の際もT-401の長い説明記述はばっさりカットしたもののコピペされた説明文使用には変わりありません。しかし気の毒なのは最初に手の内を晒してしまったIさんだった鴨。正直逆尺付きの4インチIDEAL RELAYは持っていないのですが、それより古い逆尺なしのNo.41は持っているし、こんな業者には死んでも入札はしません。ということで、腹立たしさが収まりきらずに今回取り上げるのは戦前尺と思われるIDEAL RELAY時代の5インチマンハイム尺で、楕円シールが欠落していますがおそらくNo.505というところでしょうか。戦前の品番がNo.55だったかどうかは確認していません。固定尺の左右に位取り指示のマークが入っているのが戦後のものと異なります。おそらく戦時中のもので、入手当初からカーソルが無く、丁寧に自作のサックにビニールで包装されていました。これは以前、茨城方面から学生尺をまとめて十数本落札したときの一本で、元の持ち主は相当な計算尺コレクターだったらしく同時に珍しい戦前の英国尺も2本落札しています。カーソルなしの状態で発掘されたことからもしかしたら以前は竹枠カーソルが付属していた可能性もあります。ちなみにこの竹枠カーソルは竹の弾性なんかも利用して巧みなはめ込み構造となっているのですが、にかわででも止めてあったのか本当にバラバラになり、悪いことに使用中であれば床にカーソルグラスを落として破損させるのは火を見るよりも明らかです。所詮物資欠乏時代の代用品なので、戦後も使い続けられた計算尺なら金属枠カーソルにアップデートされたのは確実です。今は便宜的にオキュパイドジャパン時代の裏板が完全に腐って欠落したNo.2634のカーソルを着けましたがこのNo.505のほうは2ミリほど幅が狭いので、カーソルバネを相当起こしてやらないとHEMMIの5インチ尺のカーソルはスカスカです。コピー元は明らかにHEMMIのNo.34RKなのでしょうが、本家には最初から無かった位取り指標が入ってるおかげで古めかしく見えてきます。本家に位取り指標がないのは、それまで4インチ尺にまで位取りカーソル付きを用意していたものが、No.34シリーズには最初から位取りカーソル付きの準備が無かったためのようですが、果たしてIDEAL RELAYのポケット尺に位取りカーソル付きが用意されていたかどうかはわかりません。もっとも計算尺を使う人間は計算結果の桁数なんかいちいちカウントしておかなくても直感的にわかる人だけが使用してますから、位取りカーソルが太平洋戦争までに廃れてしまった理由もわかります。固定尺上のスケールは0-13cmのメトリックで、下固定尺側面は0-5インチのインチスケールです。刻印は東洋特専興業も理研光学の刻印も無くRelayの商標のみで、本来蓋付きのサックケースが付属していたはずですが、戦争末期のRelayポケット尺のサックケースは和紙の貼り合わせの表面に擬革紙を貼り付けたものを縫って皮サックの代用にしており、そんなものが長く使えるわけではなく、失われて本体だけになってしまったものが殆どです。この和紙製代用並サックは6インチ尺についていたもの1個しか持っていません。
しかし、この東洋特専興業時代のIDEAL RELAY時代の計算尺はなぜか尺種記号と数字がダルなことが特徴で、この計算尺のように版ズレしているものまで見かけます。目盛りよりも記号数字を太くするためには2度スタンピングしなければいけなかったのでしょうか?そのあたりがいかにもHEMMIよりもクオリティーが劣るように感じさせるのかもしれません。Relay計算尺がクオリティー面でHEMMI計算尺に迫るのは昭和30年代中ごろを待たなければいけないような感じです。
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