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September 06, 2013

興洋商事5インチプラ計算尺

 企業のノベルティーとして作られたチープなポケットタイプの計算尺は発売元が計算尺屋というわけではなく、商事会社を名乗るいわゆる名入れのギフト屋さんが名入れマッチやタオルと同じ扱いで企業にセールスに回って歩いて注文を取り、プラスチック加工業者に製造させるという形態を取っており、計算尺自体に製造元の刻印は一切入らず、ビニールシースにも企業の名前が入ってしまうために、説明書が無くなってしまうと名無し計算尺となってしまいます。そのため「国産不明5"プラ尺XX社ノベルティー」で分類上片付けざるを得なかったのですが、過去の落札例を調べると意外な真実が判明しました。今回徳島からまとめて入手した計算尺の中に入っていた企業ノベルティー物のプラ5インチ尺ですが、知られた計算尺メーカーの中には類似のカーソル形状のものが無く、そのカーソル形状を手がかりに探してゆくと、同じカーソルを持つさまざまな企業ノベルティーでメーカー不明となっているものが多数見つかりました。
 このメーカー不明尺はA,B,CI,C,D,K,の6尺で滑尺裏がブランクのものと滑尺裏に三角関数を備え、裏に副カーソル線窓が開いているものの2種類が見受けられ、さらに年代によってCIが黒線で入れられているものと赤線で入れられているというパターン違いのものがあるようです。√10切断ずらしのタイプが見当たらないので、あくまでも表面の目盛りの型は一種類しか起こしていなかったのでしょう。カーソルがFUJIのNo.2125-Dのようなかまぼこ形状ですが、拡大効果はありません。外して拡大鏡としては機能するのですが(笑) それで肝心な発売元ですが東京の港区芝田村町2丁目(昭和40年に西新橋1丁目に住所表示変更)に存在した興洋商事という会社で、おそらく昭和30年代初頃から40年頃にかけて扱っていた(説明書記載の電話番号局番が都区内なのになんと2桁)ものなのでしょう。一見すると山梨あたりのプラ尺メーカーに外注したようにも見受けられますが、表面の目盛り型が一種類しかなく、バリエーションも2種類しか認められず、さらにカマボコ型の5"用プラカーソルが山梨系のプラ尺には見当たらないので、山梨ではなく都内のプラ加工業者あたりに製造させていたのかもしれません。尺のバリエーションは2種類しか見当たらないのにもかかわらず、計算尺を収めるビニールシースはかなりの種類を選べたようで、そのすべてが企業名を印刷したり、ホットスタンプでエンボスにしたりというような名入れになっています。すなわち計算尺そのものが市販に回った形跡がありません。名入れのケース素材も一番安い透明ビニールやグレービニールの皮風シースケース、皮もどきのサックケースから本皮のサックケースまで色々なバリエーションをチョイスできたようです。皮ケースなんて中身よりケースのほうがコストが高かったのではないでしょうか?そんなわけでケース違いのパターンがいくつも存在するためにそれぞれ別メーカーの計算尺だと誤認され易かったのかもしれません。ところでこの計算尺の発注元の北海鉄工という会社は北海道の会社ではなく大阪は岸和田の現在も盛業中の金属加工屋さんで、この「鏡板」というのはボイラー用語で、ボイラー筒の両端を覆っている一番構造上圧力の掛かる丸い板のことです。この会社は昭和30年代に独自のプレス加工技術を開発して、均一でコストも安く、納期が短い鏡板の供給で業績を伸ばした会社らしいです。そのため「いつでも3日で納品できる即納の鏡板・北海鉄工」というキャッチフレーズが通常の計算尺の裏側だけでなく、なんと滑尺を抜いた滑尺溝にもしつこく全面に渡って入れられています。こんなところまで企業広告を入れるとはさすがに実利の大阪商人というべきでしょうか。そのためかケースは一番安そうな透明ビニールシースで、ここにもしっかり計算尺裏と同じ印刷型を使って名入れがされています。何かダイハツミゼット連呼の大村崑さんじゃありませんが昭和30年代の大阪パワーを感じさせる企業ノベルティーです。
(9/7追記)過去に一度だけPILOTネームの5インチプラポケット尺がオク上に出たことがあり、形式名は不鮮明でよくわからないながら√10切断ずらし尺で、この興洋商事扱いのマンハイム型とは異なりますが、同じ特徴的なカマボコ型カーソル付きで、そのことから推定するとどうもこれらの5インチプラ尺、ならびにHATOやPILOTなどの類似した8インチプラ学生尺の製造元も実は同一だったという可能性が浮上してきました。
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