コンサイス No.27 東芝ノベルティー
コンサイスの円形計算尺も各種ノベルティー商品として社名などが入れられ、主に業務向け機器の展示会などの販売促進品としての需要があったようで、当方も何点か持っておりますが一番多いのがA型換算器あたりで、次に多いのがこのNo.27NとNo.28です。片面の円形計算尺で、裏面が換算テーブルのため、この部分をブランクにして社名などを大きく入れることができるのですが、昨年オク上で長くさらされていた物のように裏面全部がいまは無きパンアメリカン航空のマークになっているNo.28なんていうのもありました。その中でも特に顧客として多かったのは、各種教育研究機関に自社の製品を納める計測、実験機器のメーカーで、見たことのあるものだけでも島津製作所、菊水電気、タケダ理研(現アドバンテスト)、日本光学、石田のハカリ、三菱電機、日立製作所などがありました。まさに研究職に配って喜ばれそうなノベルティーで価格が適当なものという条件に当てはまったのでしょうが、時代が下って名入れカード電卓の時代を経て、いまや展示会なんかで配って喜ばれるものは何なんでしょうか?たぶん名前を入れたUSBメモリーあたりがノベルティー商品としては多いのかも…。
今回千葉から入手したのは東芝のノベルティーもののNo.27で、ケースに東芝真空管・半導体とい金箔押しがあります。実は東芝の真空管の製造中止の時期に関していささか下知識があり、というのもアマチュア無線と真空管には昔は切っても切れない縁があり、いまだに当方は真空管で電力増幅する無線機を使用しているのです。いにしえのHF用無線機はDSBからSSBに移行するに従い807から俗にTV球とよばれた大型真空管テレビのタマを無線機用に少々アレンジしたものを特注で真空管メーカーに作らせており、アマチュア用の電力増幅管を主に作っていたのが東芝電気と松下電器だったのです。東芝は主にヤエスの無線機に、松下は主にトリオの無線機に終段管、それぞれ6JS6CとS2001を供給していたのですが、東芝がTV用真空管製造から全面撤退することになり、困ったヤエスが自社用の6JS6Cおよび旧型機の保守用に6KD6などを作らせたのが日本電気でした。確か東芝の真空管の製造終了が昭和48年あたりのことだと思います。しかし、50年代に入ると日本電気も松下も真空管製造から撤退し、電力増幅のトランジスタ化が遅れたアマチュア無線業界ではヤエスもトリオも電力増幅管としてTV球ではなく純粋な無線用電力増幅管であるジェネラルエレクトリックの6146Bをオールトランジスタ化のめどが立つまで使わざるを得なかったのです。そういう経緯からすると当然東芝が真空管製造からの撤退以前でマツダの商標終焉以降のものということになりますが、コンサイスにはデートコードが存在しないため、製造年代を特定することは出来ません。ちなみに東芝と計算尺の係わりに関して付け加えると、芝浦製作所と合併する前の東京電気(旧白熱舎)が逸見製作所に作らせたものに通信用計算尺というものがあり、これが戦後にヘンミ計算尺から市販されたNo.256の原型です。芝浦製作所は変圧器などの強電系の会社で東京電気は国産初の電球の製造から始めた一般電球・真空管などの製造を得意とする会社。マツダの商標は明治末期から東京電気が使用権を持っていたものです。
ところで、今回入手したものはコンサイスの27Nではなく単なる27なのですが、今まで両者の違いについてまったく興味がわかず知りませんでした。今回始めて比べてみると色々と仕様に違いがあるもので、まずNo.27はカーソルが両面型のようにカーソルばねが存在し裏側にも回っている構造ですが、27Nは重量計算器のように片面型用カーソルです。また、表面には殆ど差異がなく、C,D尺の4-5の目盛りの切り方が1/20から1/50へ、CI尺が27Nになって赤くなったくらいですが、裏側の換算表がかなり異なり、27が重量・長さ・面積・体積にほぼ特化しているのに対して、27Nはそれらに加え速さ・温度・圧力・仕事、エネルギー及び熱量という項目が追加されています。また27のほうが27Nに比べて3ミリほど小さく(有効基線長は同一)両面方のように厚みがある構造です。まあ、計算尺としての魅力としては小さくても存在感のある27のほうでしょうか。また裏の換算表は日本語版と英語版の双方が存在するのはA型換算尺同様に国内用と輸出用が厳密に異なるということのようです。
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