Relay No.150 (H.K-4) 両面機械技術用
オークションの出品写真が不鮮明で形式名が特定できなくて昔よくやった何が出てくるかわからないという一種のバクチのような気持ちで落札したものですが、入札した瞬間に形式名の確証を得てしまい、ちょっと気持ちが萎えてしまった計算尺です。それというのもすでに一本同じ物を持っていたからなのですが、それがRelayのNo.150という両面計算尺です。以前入手したものはM.S-3刻印で当然リコー計器に社名が変わった次代の計算尺にも係わらず、箱は丹頂ベージュのRICOHの箱なのに中身の計算尺の刻印はRelayという妙なものでした。今回落札したのは確証どおり丹頂黒箱のRelayのNo.150でした。こうなったらRICOH移行期のNo.150と2本並べてその差を探るという興味しかありませんが、No.150自体さほど世の中にあふれているというわけではないので、いい機会になったかもしれません。滋賀の大津から届いたNo.150は刻印がH.K-4ですので昭和34年の4月製です。おまけにNo.82のB.K-2刻印のものが付属していまして、同じネームか彫り込まれていたところから、双方ともに紛れもなく同一人物によって使用されたものに間違いありません。その製造年の差が6年ですから中学でNo.82を買ってもらい、大学入学でNo.150を買ってもらったというような計算尺の個人史が想像出来ます。この時代のRelay両面尺にありがちな金具がクロームメッキの光沢仕上げのものです。以前のNo.150の記述と重複しますが、表面L,LL1,DF,[CF,CIF,CI,C,]D,LL3,LL2の10尺、裏面がLL0,LL00,A,[B,K,CI,C,]D,S,ST,Tの11尺の合計21尺で、ナローボディーの両面計算尺となります。π切断のずらし尺を備えたおそらくリッツの技術用両面計算尺ということになるようで、いちおう技術用の位置づけになると思われます。そもそもは米国向けのOEMから始まった計算尺で、アメリカ向けの初出荷は昭和28年ごろと現地在住のコレクター達に言われています。おそらくいちばん仕向け先ネームで売られたいわゆるOEM先の多いRelay計算尺で、INTERNATIONAL SLIDE RULE MUSIUM上のRELAY OEM一覧でもAA SR815,ALVIN 1151,COMPAS 1321,ENGINEER No.1500,JASON 802,LAFAYETTE F341および99-70310,MICRONTA 150,OLSON TL-373,SANS & STREIFFE 310,ZODIAK No.150というのがすべてこのRelay No.150なのです。そのOEMのNo.150の終焉もRICOH時代末期の昭和46年あたりまで続き、いかに長くこの計算尺が輸出されていたということがわかろうというものですが、このアメリカでの盛況ぶりに反して、日本ではほとんど注目されていないのが不思議でなりません。表面がL,LL1,DF,[CF,CIF,CI,C,]D,LL3,LL2の10尺、裏面がLL0,LL00,A,[B,K,CI,C,]D,S,ST,Tの11尺で、合計21尺を備えます。H.K-4とM.S-3の違いですが、当然のことながら尺種はすべて同じですが、目盛りの原版は新たに起こしたようで、数字表記や色の入れ方などの細かいことを別にして三角関数尺の角度単位がH.K-4は1°が60'単位なのに係わらずM.S-4はデシマルという大きな差があり、インバースの数字が赤で追加されているという違いもあります。普通だったら形式末尾に-Dといれたいところなのでしょうが双方が併売されたわけではないので同系式名マイナーチェンジということで、No.150の名をそのまま継承したようです。
上がNo.150(H.K-4)の表裏で下もNo.150(M.S-3)の表裏
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