RICOH No.252
かなり以前にRelay時代のNo.252を手に入れましたが、今回のものはRICOH時代のNo.252です。理由はわかりませんがRelayの両面計算尺の旧命名本則から外れているため、ダブルスターRelay時代にはなかった両面計算尺のようですが、なぜか他のRelay計算尺にはない同長型の計算尺です。π切断ずらし尺を持つために技術用という位置づけなのでしょうが、そのコピー元はやはりHEMMIのNo.250あたりで、さらにむりやり源流をたどると、どうやらHEMMIのNo.250のルーツであるNo.150のコピー元・K & Eの4088-3あたりまでさかのぼれそうです。でもNo.252の誕生経緯をしらべてゆくと、意外なところの発注からこの形ができたことがわかりました。HEMMIのNo.250との違いは√10切断ずらしかπ切断ずらしの違いというのが大きく、対米輸出を意識したのかRelayのNo.252はπ切断のため、いちおう技術用という位置づけなのでしょう。HEMMI No.2664Sの三角関数が逆尺なのに対してRelayのNo.116が三角関数尺度が順尺であり、DI尺で数値を読むため、DI尺分1本多い尺度を持つということがありましたが、RelayのNo.252も三角関数が順尺で、双方とも裏面の一番下にDI尺を持ちながらNo.250にはないST尺が加えられていて、結局は1尺余分に尺種をもっていることになります。あまり売れなかった計算尺なのか、見かけることが少ない計算尺で、特にRelay時代の緑箱入りのものはレアものに近い感じです。
今回入手したNo.252はRICOH時代のもので、おそらく塩ビの透明ケースに入れられていたもののようで、経年劣化でケースが失われ、本体のみで入手したものです。まあ、あまり調べられることも稀なReley時代とRICOH時代のNo.252の相違点などが見つかれば面白いと思って、その興味だけで入手したものです。Relayのものは「I.S-5」刻印が表面右下に入っており、RICOHのものは「N.S-2」刻印でした。どちらも佐賀の製造で、それぞれ昭和35年5月と昭和40年2月ということになります。おおよそ5年の差があるわけなんですが、Relayのほうは当時の他製品同様に逆尺の目盛も数字もすべて赤で入れられているのに対して、RICOHのほうはCI尺のみオール赤なのに対して、他の逆尺は記号と数字のみ赤で、目盛り自体は黒というような差異があります。C,D尺に存在する微小角計算用のゲージマークもRelay時代のものは度・分・秒の三種類が揃っているのにRICOHのものは度一種類に削減となってしまっているのは、RelayからRICOHに継承された一般の計算尺同様の現象です。しかし、RICOHのほうは三角関数尺すべてに赤字で逆数の数値が入れられるようになり、D尺でもDI尺でも数値が読めるという利点が増えました。基本的に双方とも角度はデシマル表記です。カーソルの形状は殆ど差が無いように見えますが、Relayのほうは分厚いアクリルの一枚板で固定尺滑尺と常にこすれる構造なのに対し、RICOHのほうは固定尺とあたる部分に僅かに突起をつけて面でこすれないような構造に変わっています。またπのマークもRelayのほうは足がはねた通称「釣り針足」なのに対してRICOHははねのないπになっています。またRelayのほうは裏面A,B尺にπゲージがありますが、RICOHのものでは省略されています。またこのπゲージは表面の釣り針足ではなくはねのないπマークという「ひとつの計算尺にπの書体が2種類ある」という珍しい状態になっています。入手先は東大阪で、前回のRelay時代のNo.252も大阪からでした。
ところで、このNo.252はRelay/RICOHではワンアンドオンリーの同長尺なのですが、実はアメリカ向けのOEMにU.S.GOVERNMENTの刻印が入れられたものがあり、どうやら米国政府が示した仕様によって作られたため、PICKETのような同長型の姿になったようです。軍用ならこのようなπ切断でありながら事務系のような内容の計算尺になってしまったというのもわかります。以前に米軍が使っていたK & Eなどの計算尺を入手していますが、どれも特殊な関数はなく、日本でいうと初心者用とされてしまうような内容の計算尺でした。せっかく金具などを新たに起こしたので、米国政府向けのOEM輸出だけではもったいないと思ったのか、国内販売もしたものの、国内向けの販売はあまりはかばかしくはなかったようで、意外に見かけることの少ない計算尺です。
上2点RICOH No.252の表面裏面 下2点Relay No.252の表面裏面
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