意外に気がつかないHEMMI No.2664Sのインチスケール
日本国内における計算尺の永遠のスタンダードと言えるのがHEMMIのNo.2664Sだということは誰もが認めるところです。本命計算尺のバーターという形で自分の意思に係わらずいつの間にかコレクションにHEMMIのNo.2664Sが増殖してしまい、古くはH刻印の極初期型からX刻印の末期方までありとあらゆるバリエーションが揃ってしまいました。そのため過去にケース、刻印、スケール等の変遷もまとめて発表済みです。今回また新たにバーターでNo.2664Sがやってきたのですが、普通ならそのままバルクのダンボール行きになってしまうところ、たまたま刻印のチェックだけしようと中身を確かめてみたところ、なにかおかしいと感じました。よくよく見ると上部のスケールがインチで刻まれてます。No.2664の上面インチスケールは当たり前のように存在しますが、No.2664Sに限っていえば、上面にインチスケールがあるのはいままで相当な数をチェックしてきたはずですが、今回までまったく気がついたことがありません。それで初期から末期まで手持ちのNo.2664Sを調べてみたのですが、下固定尺側面には年代ごとにパターンが異なるものが存在するものの、上面は十数本すべてメトリックの27cmスケールで相違ありませんでした。
HEMMIの計算尺はJ.HEMMIの時代から仕向け先などによって上部スケールがインチとメトリックの両方あるのが普通で、国内にはその両方が出回っていたのにもかかわらず、その区別を明確にして販売していた節はまったく感じられません。原則、国内ではメトリックのスケール付きのものを販売して、数が足りなくなったとか輸出向けに準備していたものがキャンセルになって余剰が生じたなどの際は輸出用のインチスケールのものも流していたのではないかと考えていますが、これは製品の中でもフレデリック・ポストなどのOEMで対米輸出用がある計算尺に限られ、学生用などの国内向けで対米向け輸出の無い計算尺には原則インチスケールのバリエーションが存在しないと思ってました。すなわちNo.64やNo.50Wなどには戦後のものであっても国内向けにインチスケールとメトリックスケールが混在し、欧米ではポピュラーではなく、輸出用OEMのない√10切断ずらしのNo.2664Sはインチスケールのものが最初から存在しないと思っていたのです。ところが、No.2664にはスケールがメトリックとインチのものが戦時中を含めて全製造期間を通じて混在(昭和20年代製造のものは返ってインチスケールのもののほうが多い?)しますので、国内専用にインチスケールなしの原則には合致しません。というよりまったくそのあたりの疑問にはいままで深入りしていなかったのでした。HEMMI No.2664Sに関してはあまりにもスタンダードすぎて、過去のオークション落札品チェックなどほとんどしていないのですが、このインチスケール付きのNo.2664Sの存在にはまったく気づかされていなかったというのが本音です。製造刻印は「JG」なので昭和34年7月。下固定尺の側面にはメトリックで27cmまでのスケールが刻まれているパターンのNo.2664Sです。このNo.2664Sも昭和40年代半ばを過ぎると上面にメトリックのスケールが刻まれるのみで下固定尺側面はブランクになりますので、おそらくインチスケール付きのNo.2664Sは昭和30年代半ばまでの初期タイプのNo.2664Sにしかないパターンなのかもしれません。そう思ってよく調べたら表面下固定尺の右下に形式名刻印が移動した昭和40年代初期のNo.2664Sにもインチスケールのものの存在を確認しました。「上面インチスケール付きNo.2664S」をお持ちの方はぜひ製造刻印をお知らせください。
また、昭和34年製造の片面計算尺だけに存在するまるでダブルスターリレー時代の片面尺のような特殊な黄色いアルマイト処理の裏板ですが、このインチスケールのNo.2664Sは通常のものが装着されていて、以前入手した昭和34年もののNo.64や40RKのような完璧なアルミのなべのような黄色い裏板ではありませんでした。
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