廃局 ? ! 我が貧乏無線局の行方
無線機の新スプリアス規定の猶予期限がいよいよあと2年を切り、当方の貧乏無線設備は旧技適マークつき無線機を含めてすべて新スプリアス規定をクリアできない無線機ばかりのため、実質的にはすべて無線機を買い換えないと免許状更新が受けられないという状況に陥ってしまいます。
悪いことに真空管リグでしか免許状を得ていない100Wの固定局が新スプリアス規定の猶予期限平成29年11月30日を超えて半年で局免の期限を迎えるため、更新手続きを申請するためには各バンドの占有帯域幅以外の輻射スプリアスの強度を一年以内に校正したスペアナで測定して測定結果を所定の書式で提出しないといけなくなるそうです。
そもそも旧技適の無線機でさえ対策をほどこさなければクリアできないものを、アナログVFOでファイナルが真空管の無線機で対策を施すなどということはほぼ不可能です。そうなるとコリンズであろうがFT-101であろうが愛すべき昔の真空管リグというのは平成29年11月30日を超えて多かれ少なかれ5年以内に局免の期限を以て電波の世界から消滅してしまうことを意味します。
デジタルシグナルプロセッサーによる内部処理が行われるのが標準になってしまい、スイッチを入れればすぐに電波が出せるHF機に対してアナログ真空管のHF機というのはパワースイッチと同時にヒータースイッチを入れ、真空管が温まらなければ電波が出せず、バンドごとにプレートとロードの摘みを調整してチューニングを取らなければいけないという儀式が付きまとい、アナログVFOは温まらないと周波数が安定せずQRHがあるため、ときどき周波数を調整してやらなければいけないなど、トランジスタファイナルのHFリグしか使ったことのない人にとってはわずらわしい以外の何物でもないのでしょうが、当方はそれがわずらわしいと思ったことは一度もありませんし、むしろ伝統技能の継承だなんて思ってそれを楽しんでいました。ただ安定度の問題でPSK-31などのデジタルモードの運用にはまったくの不向きで、そちらのほうは当初から切り捨てていました。真空管リグを一生使っていこうと思っていたため、新品の6146Bや6JS6Cなどの終段真空管は未使用品をストックしていたのですが、それも局免期限の終了とともに無駄なコレクションになってしまいそうです。今では空の上でお互いに真空管リグでQSOするなどという機会も激減してしまいましたが、明らかに最新の内部デジタル処理のリグの声とは違って野太く温かみのある音は真空管リグならではのものです。まあ、新スプリアス規定の完全実行はWARCのRRで以前から決まっていたことなので電波の質が適合しない真空管リグの無線の世界からの強制退場というのは製造終了後35年ほど経過しているために仕方がないことなのでしょうが、個人的には無線機の調整もできない最新リグを使ってアマチュア無線技士からアマチュア無線交信士に格下げになるのは忸怩たるものがあります。またうちの機材は人が捨てるようなものをかき集めて修理調整して現役に復帰させた無線設備ばかりですが、アマチュア無線はアンテナの自作も含めてほんの僅かな費用だけでもそろえることが可能だということを身をもって証明してきました。うちの無線設備なぞ1980年前後のものばかりです。さすがにハンディ機は1990年前後まで時代は下りますがそれでも25年は経過しています。アマチュア無線というものは最新のリグでも骨董的なリグでも、自作のリグでさえも平等に交信できるということが当たり前だったのに、これからは選択が限られた新スプリアス規定クリアのリグ同士でしか交信できなくなることになるのでしょう。
現在保障認定業務も行うようになったJARDが新スプリアス適用以前の無線機のサンプルを集めて各機種がどれだけ規制値を逸脱しているか、クリアできる機種があるかどうかの調査を行う準備をしているようです。この結果如何では頭に002KNが付かない旧技適マークの無線機でも平成29年11月30日を超えて保障認定さえ得れば免許状更新し続けることが可能になるかもしれませんが、それはあくまでも素の状態でスプリアス規制値をクリアしていることが前提になるでしょう。旧技適よりも古い無線機、まして真空管ファイナル時代の無線機はどう転んでも救済処置はないことを覚悟して新しい無線機を探したほうが利口です。
しかし、現在JARL会員の平均年齢は60歳を超えており、年金生活者も多いというなかで、最低でも10数万円するHFの普及機に買い換えてまで無線を続けようというアマチュア無線家が何割くらいいるでしょうか?平成29年12月1日を境にその後数年で怒涛の廃局ラッシュというものが続いてゆく気がします。
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