Light 8x30mm Zタイプ双眼鏡
Lightという商標の昭和30年代半ば過ぎくらいに作られた8x30mm双眼鏡です。これ、送料が安いだろうと札幌のリサイクル屋さんから購入したものですが、面白いと思ったのはトレードマークが菱形にFSKというものだったことです。
トレードマークというのは輸出用商品の荷印という意味で商品にもパッケージにも付されるものですが、双眼鏡に関しては古くからの輸出商品だったこともあり、ブランドが相手向けのOEMでも製造元がわかるというわけです。 例を挙げればI.O.C.は板橋光学、K.O.C.は黒木光学というように3文字アルファベットで表されます。
それでFSKはもしかしたら富士写真工業でLightは明眸(メイボー)の明かと思ったのですが、それは期待が大きすぎたというものでした。
届いた双眼鏡はいちおうまともな豚革飯盒型ケースに入っていました。本体にはダイキャストを製作したメーカーコードJ-E11が入っているものの組み立て業者コードが入っていないのでおかしいと思ったら対物レンズの色が違う?
何と左はシアン色コーティングながら右側はノーコートレンズがはまっています。接眼レンズ側はノーコートのようでした。これから察するにこの双眼鏡は換金目的でブランドをでっち上げた部品寄せ集め双眼鏡らしいことがわかりました。
それにしてもJ-E11がどこのダイキャスト屋さんのコードかは知りませんが、この筐体だけは非常にかっちりと良く出来ていて内部の黒塗りは丁寧だしプリズム装着部分の精度も良く、プリズムもはまる込むと微動だにしません。何かこの筐体だけ使って別なもっと良いレンズを移植してしまいたいほどです。
ダイキャストの精度が良く出来ていることもあり、レンズもプリズムも洗浄したのちの光軸出しは容易でした。
覗いてみた感じは周辺部はけっこうゆがむものの中心部は意外にシャープな結像をします。まあ部品寄せ集めの双眼鏡ながらダイキャストの精度が良いだけにさほど箸にも棒にもかからないような粗悪な双眼鏡ではないようでした。
板橋に双眼鏡組み立て業者が雨後の筍のように次々に設立された結果、大手の富士写真工業にあやかったようなFUJIを商標とする業者が数社ありました。中にはSUPER FUJIのように富士写真工業を超越させるようなネーミングの双眼鏡もありましたが、FUJIあやかりネームの双眼鏡はおしなべて本家には足元も及ばないシロモノです。その点、この富士の判じ物みたいなこの双眼鏡は寄せ集めの換金もののなかにあっては筐体の精度のおかげでまあ使えるレベルのものでした。
ちなみに本家富士のトレードマークはF.P.I.(富士フォトインダストリー)だった由。
それで後からしつこくあれこれ調べてみたらFSKに該当する会社は昭和22年6月に渋谷区池尻で設立されたJ-B28の輸出業者コードを持つ富士精密機器製作所がかなり怪しいことがわかりました。富士精密機器でFSK。古くから輸出もあったようですからトレードマークとしてFSKはありえないことはなさそうな。この富士精密機器は双眼鏡/オペラグラスの組立が本業の会社だったようですが、その後どうなったのかの資料はまったく見つかりませんでした。当時の商業統計調査などを調べてみる必要がありますね。
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