Simor 7x35mm 10°Zタイプ双眼鏡(日吉光学)
SIMORというまったく見たことも聞いたこともないブランドの双眼鏡ですが、輸出製造業者コードのJ-B207が打たれていましたので、これは日吉光学が製造したものでしょう。ただ、J-B207はアポロン光機、常陸光学がそれぞれ同一のコードを持っていて、さらに日吉光学もJ-B56を持っていますので、あとから日吉光学に統合されたのちもこのコードを使い続けていたということなのか、その辺りの経緯は不明です。
SIMORが何を意味するかはわかりませんが、少なくともシムールと読ませる仏語ではないようです。もしかしたら東京光学機械を中心とした双眼鏡組み立ての中心地である板橋の志村をもじったのではないかと思ってしまいます。
視角が10°という広角双眼鏡ですが、対物レンズ径30mmクラスの双眼鏡だと8.5°クラスが無理のない性能限界です。こちらは対物レンズ径35mmと若干広げて倍率を7倍に落とし、視角10°という広角双眼鏡にしたものです。
ニコンにも昔から7x35mmという双眼鏡があり、当方も25年前に普段使い用にマルチコートのニコン7x35mmを新品購入したのですが、こちらはNEWノバーやトロピカルと同じ視角7.3°でしかありません。
年代的には昭和30年代末から昭和40年代初めくらいの製品のようで、ケースは豚革貼りボール紙芯の飯盒型ケース。本体ストラップも豚革製です。 これより年代が少しでも下るとケースはさらにコストダウンされ、ビニール製ボシェット型もしくはビニール貼りボール紙芯の四角いケースになるようです。双眼鏡よりも高級な光学製品の一眼レフでさえもケースは後々合成皮革製になって、今になっては経年劣化でひび割れて粉が吹いています。
当初、製造メーカーが特定できなかったときには、板橋の無名双眼鏡にしてはなかなかのつくりだと思って感心していたのですが、あとから日吉光学の製品とわかってなんとなく納得しました。自社で光学系の設計能力を持たず、昔ながらの板橋クオリティーの双眼鏡を作り続けていたのだったらNIKONやVixenの高級機を初めとした世界中の著名光学メーカーの双眼鏡OEMメーカーとして現在も存続出来たがどうかはわかりません。
中の反射防止塗装も手抜きはありませんし、プリズム側面の迷光防止の黒塗りこそありませんが、対物筒の遮光筒も当然のこと備えています。
ニコンのマルチコートの7X35mmと比べるのはいささか酷なのですが、さすがにニコンのほうは視野が明るくクリアなのに対してこちらは視野が若干暗く、視界が広くて気持ちがいいのですが解像力およびシャープネスは物足りません。また視野周辺部はさすがに像がかなりゆがみます。
視野が広い利点としては動きのある物体を捕らえるような用途には適しているかもしれません。
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