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August 07, 2018

日本光学New Nover 7x50mm 7.3度Zタイプ双眼鏡

Dvc00057 オメガブランドの双眼鏡の口直しというわけではありませんが、日本光学のNEWノバー7x50mmを(笑)
 日本の7x50mm双眼鏡は大正時代末期に日本光学が開発したノバーの7x50mm7.1°という光学系を基本にしたZタイプのポロプリズム双眼鏡が基本で、戦時中も軍用としての需要で日本光学だけでは生産が間に合わず、その図面が各海軍工廠や光学各社に回っていろいろな7x50mm7.1°の派生型が作られています。
戦後はそれを基本に新たに参入したメーカーも含めて光学的にはまったく同一な7x50mmが輸出用双眼鏡として作られまくったのですが、本家の日本光学では戦後の昭和24年に新たな光学系を使用した7x50mm7.3°の双眼鏡を開発し、防水型のトロピカルと非防水型のNEWノバーとして発売するに至ったわけです。
 当時の板橋輸出用双眼鏡と異なるのはプロユースを想定して可能な限りは双眼鏡内部の内面反射やプリズムの迷光防止のために手間隙を惜しまず手を尽くした双眼鏡で、そのあたりは妥協がありません。
 それというのも主に海上で使用する航海用として使用した場合にはぎらぎら光る逆光の悪条件下で海面に漂う流木などを発見できないと生死に係わることもあるため、自ずからして使用できる双眼鏡はアマチュアが使うようなものではなく、逆に言うとこの日本光学のNewノバーはプロに選ばれた双眼鏡なわけです。
 これは昨年の11月くらいに入手したノバーですが、推定年代は昭和20年代末から30年代初めの製造だと思います。ちょうど日本光学ではニコンS2あたりを製造している時代で、そろそろ民生品は双眼鏡からカメラのほうが主力になりつつある時代の製品。
この時代のノバーはすでにレンズもプリズムもフルコーティング化しています。Newノバーの7x50mm7.3度の光学系は主に接眼レンズの改良で、旧ノバーと比べると接眼レンズの口径が大きく接眼レンズのバレルもかなり太くなっています。射出瞳径は真円で周囲に青いケラレもないことからおそらくプリズムもいち早くBK7からBaK4に硝子材が変わったのでしょう。対物筒に反射防止筒が追加になりプリズムは側面の黒塗りはない代わりに迷光防止のため底面にちゃんと刻みが入れられています。前から覗いても内部は艶がまったくない漆黒の世界です。
さすがは旧海軍相手に商売していただけのことはありますが、戦後は海軍に変わって民間の商船団や漁船団相手に日々改良を重ねてきたのでしょう。トロピカルよりも圧倒的に軽いながら同種の双眼鏡と比べて重いというクレームでもあったのか、日本光学では昭和30年代初めに筐体のダイキャストをマグネシウム合金にして軽量化を計ったフェザーウエイト仕様の7x50mm7.3°ミクロンを発売したようですが、あまり重量軽減には効果が少なかったためかフェードアウトし、すぐに7x50mm7.3度IFの時代になったようです。そのため、あまり7x50mm7.3°のミクロンネームのものは数が残っていないようです。
Dvc00056 それでわずかにカビのスポットとプリズムの曇りがあったこのノバーですが、筐体内部の加工も優秀でアルコール洗浄後のプリズムはがたつきも無く微動だにしません。接眼側のプリズムポケットも加工精度は抜群でしたが、後の7x50mm7.3°IFは鏡板の密閉性を高めるため、黒のパテを使用して筐体との密閉性を確保してあるのですが、この時代のノバーにはまだそれがありませんでした。波飛沫が掛かるような船舶で使用するのならトロピカルを使用せよということなのでしょうか。それでも後になってちゃんとこういうところも改良するのはさすがにプロユースの日本光学です。
 肝心の見え方ですが、マルチコートの明るい視野にはかなわないものの当時としては丁寧に反射防止を施したことによる群を抜いた明るい視野にコントラストのあるシャープな見え方はさすがプロのための双眼鏡で、板橋の輸出双眼鏡が束になってもかないません。というのも悪天候下、悪条件下でもいち早く相手の船や障害物を発見しなければいけない道具なので、言うなれば命が掛かっている道具なわけです。そのため、アマチュアが個人で手に入れるようなものではなく、官公庁や海運会社、大手水産会社などの装備品として償却資産扱いで購入されたものが殆どだったのでしょう。昭和40年代でもニコンの双眼鏡の価格は別格で高価でした。
 解像力分解能至上で描写に味があるかどうかということは論外でしょうが、意外に立体感に乏しく初期のニッコールのようにカリカリの描写に近い感じがします。
 ケースはフラップがバネ式からボタン止めになった茶色の飯盒型牛革ケース。ストラップも茶色の牛革ストラップでした。
 ただ、一つだけ残念なのは戦時中から戦後すぐのころのノバーに使われていた接眼フォーカシングリングのローレット加工がダイアモンドから単純な縦グルービングに変わり、コストダウンを感じさせることでしょうか。

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