SUPER ZENITH 20x50mm3°Zタイプ双眼鏡
一時期からか、国内に大量に安く出回ったスーパーゼニスの20x50mm3°のZタイプ双眼鏡です。これも504円で12台入手したなかの1台でした。おそらくは1980年代前半くらいの双眼鏡だと思われますが、まだ東南アジアの生産ではなくJapanの刻印のある双眼鏡です。
とにかく軽いというのが印象で、さらに50mm双眼鏡の割りに筐体が小さくて対物筒の長い双眼鏡だと思ったら、対物筒や対物セルはオールプラスチックの成型品、筐体はいまだにダイキャストでしたがごく薄く仕上げられていてプラスチックが被さっているような感じの一応は金属製。接眼レンズアッセンブリーは鳥居やシャフト、接眼レンズ筒を含めオールプラスチック、おまけに接眼レンズもプラスチックのレンズがはまっているような双眼鏡でした。
そのため、従来のZタイプ50mm双眼鏡の重さが1kg前後なのにこの双眼鏡は630gしかなく、通常の8x30mm双眼鏡よりやや重い程度という本当のライトウエイトの双眼鏡になっています。
そのスーパーゼニスというブランドですがうわさではオメガのように板橋双眼鏡業者の共通ブランドという人もいますが、もともとは戦後の早い時期から「ゼニス」ブランドで主に北米方面に輸出された輸出双眼鏡のブランド名です。通常のZタイプの普及クラスの双眼鏡だけではなく、栃原製のミクロン型や明らかに光機舎製のズーム双眼鏡のゼニスブランドやスーパーゼニスブランドもありました。明らかにどこかの輸出商社のブランド名だったのですが、それがどこだったのかは今のところわかりません。
それがどうやら円の変動相場制のあおりで輸出が立ち行かなくなり、その商標がどこの所有になったのかはわかりませんが、急に国内の市場にディスカウント双眼鏡として大量に出回りだしたのはテルスター双眼鏡同様です。
その後スーパーゼニスブランドは平成の時代になってもおそらくは生産国を東南アジアに移行したのちも残ったようで、中には近江屋写真用品のHANSAとのダブルネームの双眼鏡も見かけました。 スタイル的に対物筒がやたらと長く感じる双眼鏡ですがそれもそのはず、筐体部分が通常の50mmレンズの双眼鏡のものではなく8倍30mmクラスの大きさで、その分焦点距離を稼ぐために対物筒が長いのです。
対物側から分解してみると対物レンズの飾りリングもバヨネット式に外れるプラスチックで対物枠もプラスチックなのですが、これギアのようなギザ状のリングで押さえられており、たぶんこれは接着で分解不能。まあ筐体の芋ねじで視軸を調整するタイプなので対物レンズ押さえが接着でもかまわないのですが対物レンズの裏側を拭き上げるのは大変です。対物筒は革シボ模様まで成型で再現された一体プラスチック製です。
対物側のプリズム押さえはネジ無しの差込式でこの時代の双眼鏡としては一般的なものですが、肝心なプリズムはノーコートでした。筐体内部は反射防止塗装特にナシです。
接眼レンズアッセンブリーは接眼レンズ筒、鳥居やネジシャフト含めてプラスチックの成型品で接眼ガイドスリーブも接眼側鏡板と一体のプラスチック。
驚いたことに接眼レンズもすべてプラスチックレンズでさらにはノーコート。これもギア形状のリングで接着されているため、内部が曇ったとしても分解不能です。プラスチックレンズでノーコートなこともあり無水アルコールでレンズを拭くことは厳禁です。
見た感じではとても20倍という倍率ではないようなので倍率を実測しました。射出瞳径が真円でなくノギスでの測定範囲を決めるのが難しかったのですが実測値が5.15ミリもあり、口径をこの数値で割ると約9.7倍ですからおおよそ10倍50ミリの倍率詐称双眼鏡ということになります。これも高倍率イコール高級品信仰の国内向けの措置なのでしょう。こういう「倍率詐称双眼鏡に名機なし」なのは言うまでもありません。
コントラストが低くていかにもしまらない描写でおまけに視界も狭いが視界の周辺部に渦巻き収差はもちろんのこと色収差まであり、見ることのできる範囲はほんの中心部にしかすぎません。視界の端に入った電信柱の左右が青と赤の輪郭線がつくので、おかしいと思って接眼レンズを外し、接着のため分解は出来ないものの外から光を当ててみると接眼レンズの構成はプラスチックなこともさることながら単レンズの凸レンズを組み合わせたラムスデンに間違いないようです。いまどきケルナーじゃなくて色消しにもなっていないラムスデンのそれもノーコートのプラレンズを接眼部を持つ双眼鏡なんかはっきり言ってゴミ双眼鏡。まあ視界の中心部分はまともなのですが。
それでもただでくれるといってもありがたく貰うような双眼鏡ではなく、まともなレンズを持つテルスターのほうがよっぽどありがたみのある双眼鏡です。
しかし、スーパーゼニスは最初はまともな双眼鏡だったでしょうにいつからそんなゴミ双眼鏡に成り下がってしまったのでしょう?
追記:それでこのプラボディのスーパーゼニス20x50mmですが、製造はおそらく埼玉県鳩ケ谷市に工場の在ったJB-4の輸出コードを持つ東栄光学の製品です。この東栄光学はこのスーパーゼニス以外にもハンターなどの商標のついた双眼鏡を大量に生産しており、共通している特徴としては昭和50年代からの製品はほとんどが対物レンズ接眼レンズとも歯車状の樹脂環を高周波ウエルダーで枠止めしていることでコストダウンを図り、この仕組みで特許を取得し、他社が追随したためにこれを特許侵害で損害賠償を起こし、勝訴するといういわゆる「東栄光学樹脂環訴訟」の当事者になったことです。しかし、このコストダウン双眼鏡は接眼レンズも樹脂環止めのため構造上樹脂レンズの2枚玉のラムスデンにせざるを得ず、中央は像が鮮明でも周辺部に色が着いて見えるという安物です(笑)そのため、ハンターブランドの双眼鏡のようにレンズ表面を金色を蒸着したりして色をごまかすなんてこともおこなわれたようでした。
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Comments
たびたび失礼します。
7x50ですが、このlight wightの海外の使用動画がありました。
https://m.youtube.com/watch?v=hGLaUGPAPLY
この動画を見ますと確かに視野端の糸巻きで盛大に像がぐにゃぐにゃになっていますね。また色収差も本当に激しく視野枠も青っぽく色ズレしているのにはびっくりです。
双眼鏡でここまで派手な収差が発生しているのは始めてみました。それでも中心が割とシャープなのはなんだかもやもやしますね(笑)
Posted by: igay | March 05, 2022 10:00 AM