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August 14, 2018

Vision 15x40mm 5°広角M型双眼鏡(成和光学工業)

Dvc00074 盆の入りで今年の6月に亡くなったばかりの叔父の家に行き、釣り道具置き場兼作業場の物置から出てきたものを頂いてきたものがこのビクセンのサブブランドだったVisionのミクロン型双眼鏡です。
 我々が小中学生の時には小型から大型に至るまで多種のミクロン型双眼鏡が作られていましたが「立体視が肉眼よりも縮小される」という欠点から超小型のミクロン型ならまだしも大型のミクロン型は意味が無いと考えて、最初から7x50mmのツアイス型一本やりだったのですから友人のミクロン型は手にすることがあっても自分からミクロン型を選ぶということはありませんでした。
 主目的が天文用だったということもありましたが、プリズムむき出しの双眼鏡は落としたら絶対にダメージが大きいだろうなということは気がついていましたし。
 そのミクロン型をカタログに大量掲載していたのがビクセンです。そのビクセンのカタログに掲載されていたのが俳優川口浩からの感謝のはがきで、確か若くして馬主だった川口浩が調教の様子を確かめるために双眼鏡を常用していたものの、それを軽量のミクロンタイプに変えたところ、肩こりがなくなり、マッサージにも通うことが無くなったというような内容だったと思いますが、今考えたら板橋の出来のよくない視軸のずれた双眼鏡を常用していたからそんなことになったのではないかと思ってしまいますが(笑)
川口浩というと我々世代はキーハンター、もっと若い人は川口浩の探検隊で川口浩が亡くなって30年が経過するもいまだに嘉門達夫の歌のおかげで忘れ去られないという俳優さんでした。
 そのあまり興味が無かったミクロン型(以後M型と省略)ですが、そもそもは大正時代末に日本光学がオリオン(陸軍13年式6x24mm)やノバー(海軍7x50mm7.1°)などとともに設計した民生用双眼鏡です。戦前から輸出されていたようですが、戦時中の製造中止を経て戦後は外貨獲得のために日本光学以外の各社でも製造および輸出を始めましたが、本来超小型双眼鏡であるはずのM型が本家の日本光学以外の手により独自に拡張し始めたのです。まあM型双眼鏡にあまり興味が無かったので記憶があいまいなのですが、最大50x50mmくらいのものがあったような気がしますが、それというのも日本人の高倍率高性能神話によるものでしょう。
 実はこのM型、ワイドだと低倍率ほど光束が太くなるためか大きなプリズムを必要とし、大口径高倍率になるほど光束が細くなるので小さくても済むという性質から30mmタイプの10倍と40mmタイプの10倍のものでは本体の見かけがまったく異なります。ホールド感は低倍率タイプのもののほうが優れるのですが、見掛けは極小タイプに近い本体の40mmタイプのほうが美しい、と個人的には感じます。
 また、このM型双眼鏡は日本光学オリジナルの対物レンズ部を繰り出して焦点調整する方式と、この双眼鏡のように接眼レンズ部分を繰り出して焦点調整する二つの方式があり、どちらが優れているとはいえませんが大型化したM型では対物レンズ筒を固定して接眼レンズ部分を繰り出す方式のほうが強度的にも合理的です。
Dvc00073 このVisionのM型、亡くなった釣り好きの叔父が昔、釣りに持って行き、釣り場のポイントを見つけたり周りの釣果を確認するために使用していたようで、夥しい釣り道具の中にまぎれて出てきたものを頂いてきたものです。JBナンバーが残っておりJ-B93の製造工場の組み立てです。対物レンズ内部カビ少々、プリズム曇りでどっちみち全バラシのうえレンズとプリズムの洗浄が必要なのですが、いままでM型双眼鏡に無関心で、かつBL型でさえこの間初めて分解したというM型初心者です。まず対物筒を取り外し、対物レンズをカニ目で回して取り出しますが、当然のこのタイプにはエキセンリングが組み込まれてなく、単にレンズを前から押さえ込んでいるだけでした。対物筒のネジの切り具合で微妙に焦点が変わるのかレンズ後部に極薄のシム2枚が左右ともに敷かれていました。
接眼レンズアッセンブリは回転軸カバーのアルミキャップを回して外すと軸ストッパーのネジが現れ、焦点調節リングを回して繰り出していくのですが、通常のZタイプと回転が逆。そしてプリズムカバーのネジを外すと長辺方向の2本のイモネジで固定されているプリズムが現れます。イモネジは貼り革で隠されているので左右とも千切れないように慎重にはがして、片側のネジだけ緩めてプリズムを取り外すのかコツです。これ、両側緩めてプリズム外すと後の調整で酷い目に逢います。実際やってしまいました(笑)
また、このネジを外さないでプリズムをこじり出すとイモネジが当たっている部分が欠けて調整不能になるかもしれないので、まずプリズムカバーを空ける前に貼り革をはがしてネジ位置を確認することから始めた方が無難です。またこのイモネジは1.2mmくらいのマイナス精密ドライバーが要ります。プリズム洗浄の後元に戻しますが、このプリズムポケットは短辺にまったく動く幅がなく、縦方向にしか微調整できません。
接眼レンズもそのままでも良さそうなものでしたが分解して洗浄することにします。独立した接眼レンズ筒がなく接眼レンズアッセンブリーのまま後ろからカニ目で押さえのリングを抜くのですが、玉はワイドタイプらしく3群3枚。真ん中が三枚貼り合わせのエルフレではなく、前後のレンズが貼り合わせ、真ん中の玉が単レンズの3群3枚構成の接眼レンズで、これは何という形式なのでしょうか?そのレンズですが分解して洗浄したまでは良かったものの、元に戻して実際に像を見てみると像が斜めに流れていたり接眼レンズ部からカタカタレンズが踊っている音がしていたりという組み立てで非常に苦労した接眼レンズでした。一番外側のレンズが組み立て時にひっくり返ったり、それを押さえるスペーサーがなかなか奥まで入り込まなかったり結構再組み立てで時間を取られた感じです。
 さらに合計4本のイモネジのみで視軸の微調整をしなければいけないM型双眼鏡は大変でイモネジの両側を緩めて取り出したプリズムはどういうわけか像が微妙に傾いていたりして、これをあれこれ調整してピタリとあわせるまでに試行錯誤を繰り返し、何やかんやで2時間はたっぷり掛かったような。像の転倒、水平の不一致というのはZ型以上に調整するのが大変で、最後にエキセンで微調整がない分これを調整する人は一種の名人芸だったような。
 まあ、こういう生産性の悪さと部品のプラスチック化が不能で部品コスト上昇に耐えられなかったというのが今にM型双眼鏡が残らなかった最大の要因ですが。
 この双眼鏡にはJ-B93の刻印が残っていたことは気が付いていましたが、その組み立て工場は板橋区板橋で昭和30年9月に設立された成和光学工業です。栃原光学同様にマイクロ型双眼鏡専業の会社で、おそらくはその殆どがビクセンに収められていたのでしょう。いちおう長谷川シールの痕跡も残っていました。いつごろからビクセンのセカンドブランドのVision名で製品を発売することになったかはわかりませんがおそらくは成和が創業当時、ビクセンがまだ光友社の時代からM型双眼鏡をビクセンブランドで納めていた会社なのでしょう。そのM型双眼鏡ですが、プラスチックに置き換えてコストダウンするという部分がなく、組み立て調整および金属剥き出しの部品にキズが付かないように細心の注意を払わなければいけないなどの理由からビクセンでは昭和50年代中ごろ、栃原光学あたりでも平成に年号が変わるのを待たずして製造中止になり、日本光学のミクロン型誕生から数えて60年余りでM型双眼鏡は終焉を迎えました。その後韓国でミクロン型の生産がされたようですが、鏡筒がプラスチックなどM型の本質的な良さを理解しない劣化コピーぶりで、市場からすぐに消えてしまったようです。
その後ニコンが復刻版のM型オリジナルを技術の継承目的で再発売したのはご存知のとおりです。

 さて、調整の終わったVision M型15x40mm 5.0°ワイドの実力ですが、さすがに15倍ながら視野が広いことは認めますが、中心部解像力はそこそこながらコントラストとシャープネスはほめられたものではありません。また15倍の倍率というのは当方にとっては倍率が高すぎて何の目的に使用したらよいのかの用途がわからないのですが、叔父のように釣りに出かけて離れているところで何が釣れているかどれだけ掛かっているかなどの確認のための双眼鏡としては小型で使いやすくていい双眼鏡だったのでしょう。もしかしたら大手の釣具チェーンかなにかに並んでいたものを購入したのかもしれません。そういう販売ルートのためのサブブランドの存在だったのでしょうか。

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