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September 01, 2018

Kenko マイクロズーム5.5-10x20mm Mタイプ双眼鏡(東亜光学)

Dvc00102 ケンコーのちょっと変わったマイクロズームという双眼鏡で、ツアイスタイプのような筐体の実はミクロン型でさらにズームという双眼鏡です。形態的にはエイコーのブルズアイがズームになってより一層不恰好になったような双眼鏡です。ミクロン型のズームが珍しいのではないかと思いましたら今のプラスチックの皮が被った小型ズーム双眼鏡はみなミクロン型ですからその今の小型ズーム双眼鏡を先取りしていたということでしょうか。
 この双眼鏡はケンコー自身が製造したものではなく当然のことOEMで作った会社は輝けるJBナンバーのファーストナンバーを獲得したJ-B1の東亜光学です。この会社は現在東京都の三鷹市で医療機器を製造している東亜光学と同一だと思われますが、その前身は戦時中に補助的に陸軍の13年制式6x24双眼鏡を製造していた東亜光学研究所で、戦後は昭和20年12月に発足した日本光学機器工業組合のメンバーに名前を連ねています。
 終戦後早いうちからミクロンタイプの双眼鏡を製造し、その殆どが海を渡りましたが昭和20年代から30年代前半は本家の日本光学だけではなくこの東亜光学のようにかなりの業者がミクロンタイプの製造に携わっていたようです。というのもZタイプの双眼鏡部品同様にミクロンタイプのパーツも分業体制が出来上がっていて、おそらくは部品ブローカーに何百台というよう発注をかけると過不足無くすべての部品が納品され、あとは組み立てて調整するだけの仕事だったのでしょう。
Dvc00100 この時代には基本はミクロン型ながら少しスタイリッシュな外殻を被せたニコンのルックのような小型双眼鏡が大流行し始めた時代にあえてツアイスタイプの外殻を持つミクロンタイプが意味があったかは知りませんが、この時代にズームのメカを格納するためにはまだ内部にも余裕があるこの形でなければいけなかったのでしょうか?ズーム連動機構はギアではなく鳥居の部分に溝が刻まれており、このスリットの中を左右を連動させるための細い金属のベルトが入るもので、ズームもレバーではなく視度調整のようにリングを回して変倍させるものです。
 某フリマサイトで購入したこのケンコーのマイクロズームは送料込みながら当方としてはやや高めの購入金額でした。まあこれを使用するという目的はまったく無かったのですが、分解前にいちおう覗いてみると遠くの送電線鉄塔がきれいに左右に分かれています。対物レンズは小口径ながらエキセンリングが仕込まれていてこれで視軸調整するらしいですが、はたしてこの口径の小さな対物レンズのエキセンリングだけで左右に離れた像を追い込むことができるのかどうか?
 対物レンズ筒を外し、対物レンズ枠を外してモノコート2枚合わせのレンズを磨きますが、取りきれないカビのスポットはありませんでした。エキセンリングにグリスアップして元に戻し、対物側鏡板を止めているネジを抜いてこれを外すと対物側のプリズムが現れます。このプリズムは対物径の小ささゆえにかわいらしい大きさですが頂点が平らに削られていて台形をしたプリズムです。プリズムにもシングルコートが施されていますが、迷光防止のための処置はまったくありませんでした。小口径ゆえにあまり心配ないものなのでしょうか?
Dvc00101 次に接眼レンズアッセンブリを抜くために対物側のビポット部分からマイナスドライバーで昇降軸抜け止めネジを外したのちにフォーカシングリングを回して接眼レンズ部分をすっぽりと抜き、接眼ガイドスリーブをベルトレンチで緩めて外し、接眼側鏡板のネジを一本抜くと接眼側プリズムに達しますが、この双眼鏡はズームの連動メカニズムと視度調整双方ともに右の接眼部にあるため、左右の接眼筒の大きさが異なり、接眼スリーブガイドも右が太くて左が細いという違いがあります。接眼側のプリズムも対物側と同じく頂点がカットされた台形方プリズムです。
 接眼レンズ部分は曇りもカビも無く割と状態が良好だったため、分解はせず、左右の連動がややきつかったためにベルトの摺動部分に給油しただけでよしとしました。
 組み立てなおしたのですが、対物のエキセンリングだけでは左右の像を一致させることが出来ず、またプリズムは鏨で位置を固定され、殆ど動きしろがない状態のため、この鏨の打痕をミニルーターで削ってプリズムの位置をずらしたかったのですが、現在この筐体に入るような適当な工具が無くて、現状での視軸調整は断念しました。
 まあ、あまりこういう無骨な形のミクロンタイプ、さらにズームというのが無く、コレクター心をそそられる双眼鏡なのですが、実用的にはこのサイズでズームというのも不要で、単焦点のエイコーブルファイトのようなもののほうが多く残っていることを見てもまあ技術とコンセプトの先走り感が強い双眼鏡です。製造番号の捨て番から推察すると昭和41年の製造となるでしょうか?
 それで戦時中からの老舗双眼鏡メーカー東亜光学ですが、昭和46年12月に始まったドルショックおよび昭和48年からのオイルショックによる材料費高騰で双眼鏡の製造からは縁を切って業種転換に成功したようで、双眼鏡と縁を切ったことがいまだに命脈をつなぐ結果になった賢い選択だったようです。
 

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