日本製らしい真鍮タンクのバタフライランタン
関西の大きな被害をもたらした平成30年台風21号が北海道を通過した9月5日の翌日6日未明に胆振地方東部で最大震度7を観測する地震がありました。
震源から40キロ近く離れたわが町でも震度5強を観測しましたが、最初小さな縦揺れからいきなり大きな横揺れになり、手近においてあるヘルメットを被る暇も猫を抱き上げる暇も無く本や無線機やパソコンまで落下しました。
ベッドの上も床も落下物の山になり、10キロに成長したメインクーンのベルクもラグドールのうにも下敷きになって圧死したと思い、急いで電気をつけるとベルクはベッドと壁の間に頭をつっこみ、胴体も本の直撃を免れ、うにはたんすとベッドの間の安全空間に潜り込んでいたためにこちらも物の直撃を免れて奇跡的に無傷でした。部屋のドアを開けようにもドアの外側に物が落下してドアが開かず、仕方が無いので二階の屋根伝いに階段踊り場に窓を開けて進入し一階に下りてまずありったけの容器に水を確保し、風呂桶にも水をためるということをしました。
そうこうしているうちに停電してしまい、ミニマグライトの場所がわかっていたので手探りでマグライトを探し出して点灯し、つぎに前日の台風の停電対策用に石油を入れてあったうちで一番大きなDIETZのハリケーンランタンNo.80ブリザートにマッチで火を灯し、それを持って一階に降りたのと逆ルートで二階に戻り、この灯油ランタンの明かりでその後も頻繁に起こる余震の揺れを気にしながら明るくなるまでの一時間半あまりを過ごしました。
しかし、このすぐ使えるハリケーンランタンが在ったのは実に心強く、電池のなくなる心配をしなくとも済み、災害時にはツナ缶で明かりを取るよりもハリケーンランタン1個備えておくのがいかに有効かということが身にしみました。
家の周囲では余震を恐れて道端で懐中電灯を照らしながら明るくなるまで外で過ごしているアパートの住民などけっこういましたが、ポケットラジオさえ用意していないようでした。
近所の発電所が地震の影響で深刻な被害を被り、そのために北海道全体が停電し、いつ停電が解消するかわからないという情報だったので、3日は停電すると思って朝には石油の吊りランプをはじめ3基くらいに給油して停電の夜に備えたのですが、被災地優先措置だったのか停電は地震から9時間後の14時すぎに解消し、電気の無い夜を過ごさないで済んだことは言うに及ばずその日の晩には炊飯器も使え風呂のお湯も沸かせるというおおよそ被災地ではないような日常に戻ってしまいました。
それでも市内では停電が解消した地区は半分にも満たず、停電が解消しなかった地区では携帯電話の充電場所を探し回り、ホームセンターにカセットガスのボンベと乾電池と飲料水を求めて何時間も並び、夜は懐中電灯の明かりでカセットコンロで沸かしたお湯でカップ麺を啜っていた家が多かったようです。停電が翌朝まで解消しなかった妹宅では車はPHVなのでそこからリールを引っ張り、まず冷蔵庫の中身が解けないように電源確保し、余剰電力で電磁調理器を使って煮炊きしたそうです。新しい停電対策として今後こういうやり方が増えていくのでしょう。
その地震による停電が9月の初めだったために暖房の心配はありませんでしたが、北海道は電気を使わないと作動しない石油ストーブやましてオール電化の家が多いため、地震以降冬場の災害による停電を懸念して電気を使わなくとも使用できるポータブルの石油ストーブが飛ぶように売れて家電量販店でもホームセンターでも手ごろな価格のものは売り場から姿を消しています。
うちは反射式の古い石油ストーブは2台ありますが、まだ朝晩しか暖房を使用しない時期にはリビングでアラジンの石油ストーブを使用しています。その他カセットボンベを使用するガスストーブもありますし、ランプは売るほどあるので、また停電に見舞われても大丈夫でしょう。
ただ、灯油ランプはLEDなどのランプと比べるといかにも暗く、こんな明るさじゃゴハンも食べられないという人もいるのでしょうが、昔のひとはこの豆電球くらいの明るさの下で夜は生活していたのです。
そこにいきなり加わったのが灯油使用の加圧式マントルランプ。これ、6月に亡くなった叔父の釣り道具小屋を整理していた従妹が持ってきてくれた代物でバタフライランタンです。香港製かと思って別にありがたみも感じてはいなかったというのが正直なところでしたが、ダメな加圧式ランタンの代表みたいに言われるバタフライランタンにしては作りこみも悪くなく、さらに良く見るとまだ西ドイツ時代の工業硝子メーカーショット社の風防硝子がついています。また最初からリフレクターがはめ込まれていました。
俄然よく調べてみる気になり、ネット上の情報を検索するとバタフライランタンは中国製だけではなくどうやら日本で組み立てられたものも存在するらしく、その識別法はタンクが真鍮製か鉄製の違いがあるとのこと。ためしに磁石を当ててみると確かに磁石がくっ付かないためにタンクは真鍮製のようです。さらに風防硝子はmade in West Germanyなので統合前の西ドイツ製であることから、おそらくは30年はゆうに経過している古いシロモノのようです。
そうなると自身は炭鉱の安全灯の専門でキャンプ用の灯具にはまったく興味がないとはいえ、そのまま放っておくには忍びなく、整備する気になってしまったのですが、工具や消耗品は一部が欠品ながら黒のビニールレザーの収納ケースの中にマントル5枚と一緒に入っていました。とりあえずはポンプが固着していてまったく動かないため、パッキンを交換する必要がありますが、ポンプの革パッキンは予備の部品が入っていました。ネットの情報とyoutubeの実際の取り扱い動画などを見ながら圧力漏れや各部の緩みが無いことを確認。なにせ数回くらいしか使われた形跡が無い個体だったのでそのままいけると思い、何十年もそのままだった黄色に変色した灯油をタンクから排出して新しい灯油を500cc補充。メーターを見ながらポンプで加圧してプレヒートバーナーを点火しようとするとどうもガスの出が良くないようで、ノズルが少々つまり気味のようですが、徐々にガス圧も安定してきて盛大に炎を上げます。
そしてコックを下に回すとマントルに着火するものの半分くらいしか明るくなりません。さすがに古いままのマントルではダメなようで一旦圧を逃がして消火し、冷えるのを待ってトップを外し、新しい500CPのマントルを取り付けます。
そして再度プレヒートバーナーで一度マントルを焼き、再度プレヒート1分少々でコックを下に回すと見事マントルにやや黄色っぽい光が点りました。
よく新しい中華製シーアンカーなどのランタンが炎上するという情報や動画を見ましたが、炎上することもなく、ポンプの革パッキンを交換しただけで殆ど手が掛からなかったのはもともと出来が悪くなかったからでしょうか?
そしてこの日本製らしいバタフライランタンの正体ですが、プレヒート用アルコール皿が付属していて、さらにトップの作りが違うのでフシミ製作所で作られたものではないようです。そして付属していたのが紙箱ではなくビニールレザーのキットケースになっており、それはオリンピック釣具名義で発売したものに近いのですが、ケースにオリンピックのロゴがなく、バタフライのエンボスしかありません。叔父が釣り道具の一つとして買い求めたものなので、おそらくは釣具店で昔買い求めたものに間違いはなさそうです。山用品やキャンプ用品の専門店に出かける人ではないので。そのため、オリンピック釣具のバタフライランタンを手がけたメーカーの製作ながらオリンピック釣具とは異なったルートで販売されたものだと断定できるかもしれません。 国産品のバタフライランタンには間違いないようです。
ところで、これをもってきてくれた従妹からこんなものも出てきたけどいるなら捨てないで確保しておくというメールとともに送られてきた画像は何と古いホエーブスとコールマンのケロシンストーブ。
こういうのもありがたがってオークションで競り合う趣味はないのですが、とりあえず確保だけお願いしておきました。しかし、双方ともにさほどは使用しないまましまい込んでしまっていたようですが、見る人間が見たらとんだお宝が転がっていたと思うかもしれません(笑)
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