Kenko Skymate 8x30mm 7.5°Z型双眼鏡
3台のKenko 8x30mm 7.5°のZ型双眼鏡の一台で、こちらはSkymateという機種名が付いています。おおよそ昭和40年代の後半の製品らしく、すでにJBコードもJEコードも刻印されていない双眼鏡ですが、前出2台の新井光学の双眼鏡とは明らかに作りも見え方も異なり、けっこう名のある双眼鏡OEMメーカーの製品は確かでしょう。
スカイメイトと名前がついているくらいですからおそらくは昭和46年の火星大接近による天文ブームにあやかった天体観測用を連想させるネーミングですがどうなのでしょう?当時、なりたての天文マニアで、望遠鏡も双眼鏡もビクセンを購入してしまい、あまりケンコーには注目していなかったためか記憶がありません。
しかしまあ、カートンにしてもケンコーにしても当時はメーカーだと思っていたのは当然ですが、実のところ光学商社でいろいろな会社に望遠鏡双眼鏡を作らせ、それを自社ブランドとして売っていたなんてまったく知りませんでしたし、よくカタログの写真と店頭に並んでいる同じスペックの双眼鏡が外観がまったく違うということが不思議だったのです。
そのケンコースカイメイト8x30mmですが、見かけは昭和40年代末期の鎌倉光機のZ型双眼鏡にそっくりです。それでも鎌倉光機にしても大塚光学にしてもどこかにメーカーコードがさりげなく打たれているのが普通なので、鎌倉光機の製品の可能性も高いながらその確証はありません。また対物セルのカバーと鏡筒の間に飾りリングが入れられる手法というのが当時同じく鎌倉光機からOEMで双眼鏡を受けていたコピターのZ型双眼鏡にもよく似ているような感じもしますが、内部まで探ってみたもののその出自を証明するような証拠はなにもありませんでした。
それでも実際に覗いた感じも解像力、コントラストもけっこう高く、視野の周辺部の収差もよく押さえられており、OEMの双眼鏡としては一流どころの製品に匹敵する双眼鏡だと思いました。新井光学のOEM双眼鏡とは比べ物にならないくらいのいい双眼鏡です。対物接眼レンズともにシアンのモノコートで、ブリズムは当時のことですからBK7材のプリズムですが、射出瞳径も真円でした。プリズムも新井光学のようなタガネ固定ではなく透明なグルーを使用した固定法です。視軸の調整はさすがにエキセンリングでした。このあとすぐの時代の大塚光学製Kenko 8x30mmは対物レンズセルもプラスチック化して視軸の調整も鏡体2カ所に設けられた芋ネジでプリズムを微動させる手法に変わりましたが。
何かスカイメイトと名付けられているくらいですから一応は光学性能にうるさい天文マニア用に材料、メーカー共に吟味した結果なのかと想像してしまいます。実はこの双眼鏡、まったくレンズもプリズムも曇っておらず、視軸も狂っていなかったためレンズの表面だけ拭いただけの双眼鏡で、古い中古の双眼鏡としては珍しい個体でした。
まあ一般的にはKenkoの双眼鏡として片がついてしまう双眼鏡なのですが、板橋輸出双眼鏡の底なし沼に入り込んでしまうとそれがどこのOEM製品か気になって仕方が無いのです(笑)
追記:このKenko Skymateの同じ8x30mm双眼鏡にJ-B30刻印の興富光学工業製のものが見つかりました。おそらくはこのSkymateも同じ興富光学工業製なのでしょう。興富光学工業は板橋製輸出双眼鏡のなかでも至極まともな双眼鏡を作っていたようです。この双眼鏡も噂に違わずなかなかの良い製品でした。
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