HEMMI 海軍兵学校計算尺(戦時No.2664簡易型)
通称海軍兵学校計算尺と呼ばれる戦時中のNo.2664の簡易型です。別に材料が枯渇してNo.2664からスケール部分が省略されたのではなく必要最小限の仕様として公用に注文されたアメリカでいうところのGovernment Propertyとしての計算尺ではないかと想像しており、海軍兵学校が発注した特別仕様の計算尺という証拠はありません。ただし、海軍兵学校ではちゃんとこの新しいずらし尺の計算尺を使用するための教本を用意しており、新しいずらし尺用準拠の教本をわざわざ作成したのが海軍兵学校以外に見あたらないため、主に海軍兵学校で使われたというのは間違いないところです。
その兵学校計算尺ですが、戦時中から他の官公庁にも出回ったらしく、こちらは旧電電公社、今のNTT関係の方から入手した計算尺です。その入手経緯というのは出品者のお父上が工業高校を卒業した昭和29年に北海道で電電公社に就職した際、個人の計算道具をまったく所持していなかったため、10歳程年上だった先輩がこれを使えと言ってくれた計算尺がこの兵学校計算尺だったそうです。その先輩とは2年程で転勤のため別れ別れになり、その後一度も一緒にならなかったため、どういう経緯でこの計算尺を所持していたのかはわからないそうですが、戦時中の海軍兵学校で使用された計算尺と同形のものと出品者からお父上に伝えていただくと驚かれていたそうです。計算機が出回りだす迄の十数年間、非常によく使いこなされた計算尺で、黒のサックケースがぼろぼろになり、それを中子に布の巾着ケースをかぶせたものの中に入っていました。
その通称兵学校計算尺ですが、製造開始時はまだ材料にも余裕があったようで、裏側はちゃんとアルミの総裏でオーバル窓が開いていますが、その後にはさすがに材料にも余裕が無くなったと見えて裏側金属はオーバル窓の空いたアルミを両端だけに使い、中程は裏抜きされて樹脂のままというモデルも見つかっています。それからすると総裏金属兵学校計算尺は昭和18年頃、中抜きモデルは昭和19年あたりの製造でしょうか?本当にアルミ等の材料が枯渇した戦争末期の計算尺のようにカミソリの刃のような金属で上下の固定尺を繋いだモデルももしかしたら存在するのかもしれません。
まだ総裏アルミ継ぎのモデルが存在する事から本当に材料が無くなってしまってこういう簡易型のNo.2664が出来たわけではないことがわかると思います。
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