RICOH No.121 10"機械技術用計算尺
RICOHの片面計算尺の中では比較的に新しい計算尺なのにも関わらず今迄オークションで見かけた数は十数年間で片手にも満たないというNo.121です。一応は機械技術用とのことですがその内容はHEMMIのNo.130同様にダルムスタット式の片面計算尺になります。
ダルムスタットの計算尺はドイツのA.W.Faberなどではおなじみでリッツ式同様に戦前には世界に蔓延った時代がありましたが、両面計算尺の普及に従い、戦後はFaberでも両面計算尺を作るようになって急速にその存在感を失ったような気がします。片面計算尺でべき乗計算が出来るように特化したものですが、HEMMIではリッツの片面計算尺の60番台シリーズは昭和一桁の登場と早かった物のダルムスタットのNo.130は昭和15年頃に一度発売が発表されたものの日中戦争激化と太平洋戦争の開戦でお蔵入りし、戦後の昭和20年代中頃になって初めて商品化されたものです。
そのため、戦時中も使用され、目盛が馬の歯形から物差し型に進化していったNo.64に比べ昭和20年代の発売にも関わらず目盛が馬の歯形という旧態依然さが疑問でしたが、これは戦前に完成していたダルムスタットの目盛の型をそのまま使用したためと理解しています。
そんな少々時代のニーズから外れたダルムスタットの片面計算尺をなぜRICOHで新しくつくらなければいけなかったというのがわかりません。しかも品番も110番台から飛んで120番台というのも驚きですが、この120番台の計算尺は当方このNo.121の存在しか知りません。
このNo.121は今迄見た数本はすべて透明塩ビケース入りの昭和40年代前半の製造らしきもので、それもすべてデッドストックの新品でした。今回初めて青蓋のポリエチレン製ケースの物が出て来たわけなので、昭和45年以降も継続してリリースされ続けたことになります。
この個体の記号はUS-5ですので昭和47年5月の佐賀製、RICOHの計算尺としてもかなり末期に製造になりますが、それにしてもこの時期にダルムスタットの計算尺なんか需要があったのかはなはだ疑問ですし、一般的にもある種の業務用途を除いてはほとんどが高校生用の用途で種類を絞りつつあた時代の生産です。おそらくはHEMMIでもNo.130はその時点で製造はされていなかったでしょう。
内容的にはHEMMI No.130の側面に刻まれたS,T尺を上固定尺に移動させ、L尺を滑尺裏に移したもので、尺のレイアウトは異なる物の尺種類と数はまったく同じです。尺レイアウトは表面がS,T,A,[B,K,CI,C,]D,Pの9尺、滑尺裏がL,LL1,LL2,LL3,の4尺です。カーソルはC,D尺側に副カーソル線を有するプラスチックの一体型で、このNo.121の専用品になります。
計算尺末期の製品でもあり、その特殊性もあって開封品で外箱などもありませんでしたが表面のざらつきも残るほぼ未使用品でした。最近匿名配送が多くなり、詳しい発送場所はわかりませんが大阪方面から出た計算尺のようです。
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