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January 31, 2019

星円盤計算器(STAR SLIDING DISK)No.120

Dvc00466 星円盤計算器(STAR SLIDING DISK)というのは昭和30年代に発売された円形計算尺らしく、数は少ないのにオークション上にとんでもない値段で出品されているものがいつもあるためか、あまり有り難みが感じられない計算尺です。とはいえ、ここ15年程でおそらく15点未満しか出品されていないため、レアな円形計算尺であることは確かです。 今回外箱、サックケース、説明書まですべて揃ったものを500円で入手。これが初めてのSTAR円盤計算器の入手になりました。 前々から感じていた事なのですが、このSTAR円盤計算器というのはオークションで出てくる地域がかなり偏っていて、北陸の石川、富山、新潟と長野あたりの出品が多いようで、九州や北海道などの末端からの出品がないことを不思議に思っていました。今回入手した商品が完全品で説明書も揃っていたためにその理由がわかりましたが、その製造元は富山県の富山市だったのです。製造元はスター円盤計算器製作所となっていますが、その説明書に稲垣測量器械店稲垣長太郎というスタンプが押されており、住所が同一なことからおそらくは両社は同一の会社でしょう。業態が個人商店であり、製造数もさほど多くはなく、その販売エリアが北陸周辺に限られたというのもわかるような気がします。富山は昔から製薬業が盛んな地域だということは知られていますが、その傍ら機械工業というのも中央から離れている地方にも関わらず盛んだったということは意外に知られていません。本江機械、後の立山重工業は産業用蒸気機関車を製造していましたし、不二越などは富山から発祥した世界的に有名な会社で、独自に考案した油圧計算尺がHEMMIからリリースされていたのはよく知られています。
Dvc00465 このSTAR円盤計算器の特徴としては製造側の能書きによると、(1) 中心軸と内輪の回転は金属と金属の回転であるから容易に摩耗しないこと (2) 使用材料はジュラルミン板及びビニール板であるから構造堅固であり永年の使用に耐える (3) 小型に製作出来るため携帯に便利である (4) 円形であるため計算能率を向上出来ること (5) 2乗、3乗、1/2乗、1/3乗、の精度が良いこと (6) 目盛が正確明瞭にして容易に摩耗しないこと (7) カーソルはアクリライト(風防ガラス)を使用しているから透明度よく破損のおそれがないこと となっていますが、「円形のため目はずれがない」が最大の特徴なのに「計算能率を向上出来る」とするのはいかがなものかと(笑)
 まあ能書きに述べられているようにこのSTAR円盤計算器だけが持ち、他のコンサイスなどの円形計算尺と最も異なる構造は真ん中に金属の円盤が入っていて裏面はこの円盤に接着されたピニールの三角関数尺、表面は金属の円盤をサンドイッチした形で外側の円盤は金属板に接着、内側の円盤が自由に回転するという構造になっています。そのため、コンサイスのビニール製円形計算尺と比べると金属板の部分だけ分厚く丈夫で、内側円盤の回転もスムースでした。
Dvc00464 このSTAR円盤計算器の型番はNo.120で主尺の基線長は10インチ。尺種は内側からカウントするようで、内側からL,CI,C,D,A,K,で裏面がtanとsinの3分割尺ならびにラジアンの尺が加わります。この時点では他に主尺の基線長が7.5インチのやや小振りなNo.250の2種類が用意されていたようですが、後に裏面がブランクで主にノベルティー用として広告スペースとしたNo.25と裏面にLL尺が加わってLog-Log 両面化したNo.1660が加わったようです。一連のSTAR円盤計算器はその構造が実用新案440028と意匠登録130076を取得したようで、昭和32年度の文部省教育用品審査合格品にもなっていたようです。
 しかし、学校現場では売価150円から200円の8インチ生徒用計算尺が普及しつつある時代に売価750円の円形計算尺が入り込む余地はなく、また製造元が学校等のまとまった数量の受注に対応できるほどの規模でもなく、さらに内田洋行などの有力教材商社と太いパイプを築き上げるには富山は地の利もなかったということもあり、北陸周辺でわずかに使用されただけで消滅してしまったということなのでしょう。入手したNo.120も金沢市内から出たものです。また、以前見かけたNo.25は裏面に富山市内の測量会社の広告になっていましたので、ノベルティー商品としても完全に身内の需要しかなかったということなのでしょう。
 でもまあこの構造の円形計算尺を大手の製造に任せず、個人商店レベルで作り上げたのは見事な事だと思います。

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January 30, 2019

アストロ光学8x30mm7.5°Z型双眼鏡(パルス光学)

Dvc00463 アストロ光学は現在こそ天体観測施設の設計施工の仕事しかしていませんが、我々が天体少年だったころは間違いなく一流の天体望遠鏡メーカーでした。地元の眼鏡店でビクセン、エイコー、カートン、ケンコー、ミザールあたりしか並んでいない時にアストロの屈折赤道儀は日本光学の8cm屈折赤道儀とはいかないものの医者や土建屋の息子でなければ決して手の届かない存在だったことは確かです。またポータブルではなくドーム据え付け型が主力だったのも敷居が高かった原因でしょうか。そのアストロ光学ですが、総合光学メーカーとして天体望遠鏡のほかに双眼鏡も提供していましたが、双眼鏡は自社では生産せずに外部調達で済ませていたようです。 そのアストロ光学ブランドの双眼鏡ですが、あまり数量的には出回っていなかったようで、おそらくはロット2-300個くらいの数量で作らせたものが在庫になりそれを求めに応じて少しずつ出荷していったという程度の数量しか生産されていなかったのかもしれません。ただし天体観測の主流だった7x50mmは見かけの異なるタイプを見かけますので時間を置いて追加発注された節があります。
Dvc00462 それにしても天体望遠鏡は有名なのにアストロ光学の双眼鏡は情報も現物も少なく、昨年に7x50mmを入手しましたがその後まったく現物にはお目にかからず、今回やっと8x30mmの双眼鏡が久しぶりに見つかって入手した次第でした。
 外観は以前入手した7x50mmほぼそのままで、一見大塚光学製のようにも見えますが7x50mmと同じくパルス光学の製品でしょう。光学設計としても戦時中に設計され、戦後にその設計図が共有されたために板橋輸出用双眼鏡としてスタンダードになった8x30mm7.5°と凡庸なスペックの双眼鏡です。この時代、8x30mmは広角化が進み、すでに8.5°がスタンダードになりつつある時代に旧態依然の7.5°とは天体観測用としても少々物足りない感じですが、製造のパルス光学自体スタンダードな8x30mmの部品を自社製造出来るわけでもなくスタンダードな部品しか外部調達できなかったということでしょうか。
 東京杉並のリサイクル業者から1k円で入手したアストロの8x30mmでしたが、さほど酷使された様子も無く本体の程度は悪くありませんでした。さらに内部の状態も対物レンズ裏が若干曇っていた以外にフルオーバーホールの必要もありませんでしたが、視軸は縦横に若干ずれており、対物レンズをセルごと外してクリーニングしたついでにエキセンリングで視軸調整実施。
Dvc00461 視軸がきれいに合った状態でいつもの送電線鉄塔先端を観察してみたところ、視野がスタンダードな7.5度なのに周辺部のゆがみが若干大きいような感じがします。分厚いフルコーティングのおかげもあって視界は標準的な板橋輸出双眼鏡と比べるとやや明るいながらコントラストが物足りないのは標準的な板橋輸出双眼鏡と変わりありません。ただ解像力は意外に高く、線も細い描写を見せてくれるような気がしました。夜間、天体観測用に使用するのであればまた別な見え方をしてくれる期待度が高い双眼鏡です。
 以前入手したアストロ光学7x50mm7.1°の双眼鏡はJ-B230のパルス光学の刻印がありましたが、この8x30mm7.5°には今の所J-B230刻印は確認していません。しかし、細部の作り込みやデザインの共通性からしてもパルス光学でOEM製造されたことは間違いないでしょう。このパルス光学ですが、JBナンバーもかなり末番で、おそらくは厚木光学やオパル光学あたりと創業が近いような感じがしますが、いろいろと資料を探してみても工場がどこに存在していたかさえわかりません。しかし、このパルス光学は例の東栄光学樹脂環訴訟の被告の一社になり、500万円の賠償金が確定したようですが、その際会社を解散して損害賠償金を逃れたか、それともまともに払ったのかは定かではありません。この訴訟の控訴審判決が出た昭和の末期までは存続していたことは確実です。

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January 29, 2019

東亜光学Comet7x18mm7°M型双眼鏡

Dvc00460 昭和20年代から小型のミクロンタイプを生産していたJ-B1のコードを持つ東亜光学の7x18mm7°Mタイプ双眼鏡です。Cometの商標がありますが、Comet名義では対米輸出はなかったようで、国内向けの東亜光学Mタイプ双眼鏡の商標なのでしょう。また国内向けのためかダイキャストメーカーのJ-E7の刻印はありますが、J-B1の刻印はありません。Mタイプの双眼鏡はニコン方式の対物レンズを移動させて焦点を調整する方式とVixsenなどのように接眼レンズを動かして焦点調節する2タイプがあります。この東亜のCometはニコン方式です。またM型双眼鏡専業メーカーの栃原光学はかなりのメーカーにOEM生産でM型双眼鏡を一手に供給していましたが、こちらも焦点調節はニコン方式だったために小型のM型双眼鏡といえば対物レンスを移動させる方式の方がポピュラーだったかもしれません。
 この東亜光学のMタイプ双眼鏡は札幌から入手したものでしたが、北海道の光学製品は季節による寒暖差が激しくて内部が結露してしまい、カビだらけのものが多いようなイメージがあったのですが、多湿で夏場が高温な地域や冬場に雪が多くて湿気がこもるような地方のものよりもコンディションがマシなものが多いような気がします。たとえプリズムやレンズの裏側にカビのスポットが見受けられてもクリーニングで取りきれるものが多いような感じがします。夏場はそれほどジメジメしておらず、冬場は気温が氷点下2桁にもなると空気中の水分も氷結して湿度が極端に低くなるというのも要因でしょう。
Dvc00459 この東亜光学のMタイプ双眼鏡も構造上埃の侵入こそありましたが内部まで分解クリーニングの必要も無く、外側から視軸の調整をしてそれで終わりでした。見え方としては口径が小さいだけに分解能に不満はありますが今出来の視軸もあっているのかどうか怪しいような輸入品プラスチック製Mタイプ双眼鏡と比べることが出来ないほどよく見えると感じました。東亜光学はこれより小型の6x15mmがミニマムサイズだと思いましたが、それよりも実用的な小型Mタイプ双眼鏡だと思います。

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