半纏・清酒大雪山(北海道上川郡愛別町)
世の中には日本酒の酒造メーカーの半纏というのがよく残っており、紺や黒の色の濃い半纏のほかにめくら縞と呼ばれる細かい縦ストライプの半纏があります。蔵元に働く蔵人の労働着としてのものと、得意先の酒問屋経由で小売店や飲食店に配られるものがあり、こちらは一種の広告宣伝費として消費されたものなのでしょう。そのほかに帆前掛けと呼ばれる帆布の紺染め抜きの前掛けなどもあり、これも宣伝用として問屋経由で大量に配られたようです。
今から50年程前までは宴会といえばまず日本酒で、重量物ゆえに地産地消の商品として地方の中小酒蔵のいわゆる地酒がまだまだ地元で流通消費され商売出来る環境だったのですが、昭和40年代も半ばを過ぎてアルコール消費の嗜好変化、輸送環境の改善で地元の中小酒蔵は大打撃を受け、日本酒の蔵元は一気に数を減らしました。今に残っている地方のメーカーは何かしら特徴を持ち、ある程度のリピーターを抱えているところばかりで、普通酒や日常酒に関しては大手の日本酒メーカー製品が全国津々浦々まで出回っている状況です。普通酒しか仕込んでいなかった地方酒蔵は大手の傘下に入り、桶買い専門として仕込んだ酒はタンクローリーで運び出されるか、大手の商標が付けられたいわゆるOEM生産、もしくは大手の看板が掲げられてしまうところもあるようです。
この大雪山という名前の清酒は上川の愛別町に蔵を構えていた酒造メーカーでしたが昭和56年に廃業しています。旭川周辺の地域を商圏としていた小規模の酒蔵でした。それゆえに札幌以南の道南あたりで見かけた事はありません。
愛別にまだ蔵の建物が残っているという話も聞きましたが、もう20年近く前に美瑛の有名な酒屋さんの倉庫でそのまま大雪山が未開封で発見されたというのが新聞に載ったことがあります。大雪山の名はお隣の上川町で40数年ぶりに日本酒酒造免許を獲得した蔵元が地元の酒造米を使用した清酒が上川大雪という名前で間接的に継承しています。蔵元は金滴酒造で日本酒鑑評会で金賞を受賞した程の杜氏なので、これからの発展が楽しみな酒蔵です。
半纏はざっくりとした大きめのメクラ縞で半纏襟にはよいお酒大雪山の染め抜き文字があります。裏に染め文字その他はありません。問屋経由で飲食店向きに配った半纏でしょうか。
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