オリンピックの聖火を運ぶランタンはどこのメーカーの製品か?
オリンピック発祥の地ギリシャから航空自衛隊松島基地に降りたオリンピックの聖火。 そのときにチャーター機から降り立ったランタンがどこのランタンであるか、売っていたらほしいなどというキャンピングランタンマニアがあれこれツィートしているのを見かけて少々WW
あのランタン、英国製のトーマスウイリアムスなどの灯油使用の炭鉱安全燈レプリカではなくて、英国製Protector lamp & Lighting社のEcless揮発油安全燈Type 6のレプリカ、オフィシャルオリンピック仕様でしょう。 油壺のロックシステムの形状を見れば炭鉱安全燈マニアはすぐにわかるW もともと創業1873年の英国ランカシャーの安全燈メーカーだったのですが、Type 6は英国の鉱山保安局の検定を通った本物の炭鉱安全燈です。オリジナルは鉄製ボンネットの油燈Type6がいつのころからかボンネットを鉄から真鍮に変更したいかにもレプリカ然とした揮発油燈になったものを、どこかの会社が社名Protector lamp & LightingとEclessの名前を継承して製造しています。
そのProtector & LightのEclessオリンピックランプはすでに30年ほどの採用実績があるようで、大会ごとに微妙に姿を変えているようですが、一貫して腰ガラス(明治の炭鉱用語)側面に鎖でつながれたプラグが付いていて、ここから火種を取り出せるようになっているのが特別仕様の証拠。 燃料は国内ではおそらくどこでも手に入るジッポのライターオイル(粗製ガソリン=ナフサ)を使用するのでしょうか?再着火のためのリライターシステムが付いており、なぜか外側からラックが刻まれたピンを差し込んでライター石のホイールを回すという特異なシステムを備えます。チャーター機から降りてきた大きなループ状の取っ手のついた安全燈と各地を巡回する炭鉱安全燈の姿そのものの真鍮フックが付いたものの2種類が使用されているようです。 実は、56年前の東京オリンピック時にギリシャから聖火を運び、各地を巡回した安全燈は当時の国産本多電気製(旧本多商店)の本物のウルフ揮発油安全燈と予備にハッキンカイロが使われたんだそうで。 今や日本国内でこんなものを作る機械も技術も継承されなくなってしまい、技術立国日本の聖火が国産安全燈ではなく英国製レプリカ安全燈だっていうのが少々釈然としないとは当方だけでしょうか。それだけ炭鉱技術という忘れ去られた負の遺産は顧みられないのでしょうね。
なお、オリンピックマークなどをあしらったトータルデザインは吉岡徳仁さんというデザイナーさんらしいので、まったく同じデザインの物を入手するのは無理なようで。
ベースになったProtector & Lighting Co. Ecless Type 6レプリカは英国FOBで£299.00くらいらしいです。どうしても欲しい人は
https://www.protectorlamp.com/olympic-torch-relays/
に問い合わせてみましょう(笑)
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Comments
同じく昭和9年頃の船舶設備規則では消防設備として「船舶には防毒面1個及び安全灯1個より成る装具2組を隔たりたる箇所に1組宛備うるべし」との規定が見えます。(この規定の防毒面は炭鉱の自己救命器同様の濾過式でありまして、酸欠には耐えられません)
個数より判るように、少数の船員が危険を冒して煙の中に潜入して火元の探索や消火を行う場合に使う物であったようで、今でも「消防員装具」の中に防爆の携帯灯火として「安全灯」の名を留めて居るようでります。
おそらく、大海原の中の火元も判らぬ煙ばかりの火災、船を救う為に決死の覚悟、当然人選も行い、よく段取りした上で火煙に潜ったのでしょうから、給油位は可能であったのでしょう。
Posted by: pochi | July 05, 2022 06:18 PM
日本船燈の防爆安全燈は昭和10年代から昭和30年代末期まで本多商店、戦後の本多電機のOEMです。
四角い日本船燈で施した銘板が取り付けられているのが特徴で、戦前は逓信省、戦後は運輸省の形式番号、製造年、製造番号が明示されています。
炭鉱用の瓦斯検定燈と異なるのは炭鉱用にはある吸気リングが無いこと。炭鉱用はこの吸気リングのニップルにゴム球付きのホースを取り付け、空気より軽く坑道上部に溜まりやすいメタンガスを安全燈内に導入する仕組みになっています。
ただ、戦後の船舶用はこの吸気リング付きのものがそのまま転用されて炭鉱用も船舶用も見かけでは差がなくなり、四角い日本船燈の銘板だけでどちらの用途か判断するしかないようです。
不思議なのは揮発油安全燈は普段、燃料を充填しておくと燃料がどんどん気化してしまうので、使用のたびに燃料を充填しなければいけないものが、いざ火災などの際にすぐに使用できるものかどうかということなのですが? 乾電池式に取って代わられるのは必然だったのでしょう。
Posted by: じぇいかん | July 05, 2022 07:57 AM
この画像の本多製、昔ヤフオクで競り落とし損った日本船灯の船舶消防用安全灯と瓜二つな気がします。
船用の頑丈なランプを沢山作ってはいても、安全灯は流石に実績ある炭坑用をOEMしたのでしょうね。
船用はてっきり平芯灯油と思い込んでましたが、昭和9年の船燈試驗規程では自動発火装置を義務付けていますので、揮発油ライター式この本多製とまるきり同一かもしれません。
Posted by: pochi | July 04, 2022 08:51 PM