旧ソ連のLSLO 5167-72 10"ダルムスタッド片面型計算尺
旧ソビエト社会主義連邦共和国時代の計算尺で、LSLOというウクライナのキエフで作られた5167-72という形式の計算尺です。250-14Pというカテゴリーナンバーが付いていて、これは基線長250mmの計14尺を持つプラスチック製計算尺という意味らしいです。
多分ドイツFaber-Castellの57/89あたりを参考に作られたダルムスタッドの計算尺で、同じものが1972年から80年台中頃まで作られたようです。これは4年位前にミリタリーカテゴリーに弾道計算尺として出たような気がしましたが、特定の砲の弾道計算尺にはカーソルが無いものもあるものの、こいつは明らかにカーソルが欠品です。しかし、旧ソ連時代の計算尺が国内で出てくる機会というのは稀で、とりあえずは捕獲しておきました。
幅がちょうど5cmで長さが30cmという、いかにも共産圏らしい割り切りの寸法で、これがHEMMIのNo.645Tになると幅は約5.3cm長さは29.4cmというインチ由来の寸法なのかメトリックでは「なぜ?」という寸法になります。材質は技研計算尺などと同様に塩化ビニールが使用されているのでしょう。
尺配置は上からK,A,[B,BI,CI,C,]D,S,ST,T3,L,の11尺、滑尺裏がLL1,LL2,LL3,の3尺の合計14尺です。プラ尺なのにも関わらず、当時流行の尺種によって色を着けるということはなく、わずかに逆尺 BI,CI,尺だけ数字も目盛もまっ赤赤。ちなみにロシア語で猿のことを「マカーカ」というらしく日露戦争のときなど日本兵を侮蔑する意味でロシア兵は「マカーカ」を連発していたようですが、猿のおケツはまっ赤赤っていうのは偶然にしては面白いかもしれません。
1980年というと世界ではすでに計算尺を生産しているのは共産圏に限られ、日本の教育用計算尺も終了しようという時期にソ連はまだ計算尺を製造し、それで設計した宇宙ステーションのミールなんかも飛ばしてしまうのですから、ある意味コンピューターがなくとも時間さえ厭わなければ計算尺と手動計算機でちゃんと欧米列強と同じことができるという証明みたいなものでしょうか。いちおうカーソルがないと間が抜けて見えるので、HEMMI No,642Tからカーソルをトレードして画像にしました。ただ、642Tのほうがほんの僅か幅広なのでゆるゆるです。オリジナルカーソルも副カーソル線付きだったようです。
ケースは緑色のポリエチレンケースですが、ケースの蓋を抜いたところに値段が4ルーブル20コペイカと陽刻で入っており、共産主義国家だけあって統制価格で売られていたことがわかりますが、物のない社会主義国家でほんとうにこの価格で買えたのかどうかということは甚だ疑問です。そもそも外貨獲得のための外国人専用の店にはいろいろと物が存在したのでしょうが、ロシア人用の店先に品物が豊富に並ぶなどなかったでしょうし、物があっても裏で倍の価格にウォッカ1本とタバコ2箱くらい袖の下として付けないと売ってもらえなかったかも知れませんし、さらにそれを転売して儲けが出るというような共産主義国家特有の「金はあるけど物がなくて買えない」現実があったかもしれません。
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