HEMMI No.274-S 高校生用(別製)10"両面型
HEMMIのNo.274は高校生用の計算尺で、それはNo.264のリプレース版です。というのも計算尺の需要も昭和40年も後半になると学校教育用以外は電卓が幅を利かせるようになり、事業・研究用としての用途が減少してきた結果、新規の計算尺は山梨へのOEMでプラ尺製造委託を拡大させ、No.264などのナローな両面尺は新規の材料仕込み・エージングをやめ、No.259のようなワイドな両面計算尺に集約した結果として生まれたのがNo.274だと推測しています。それがだいたい昭和48年くらいの時期だと思うのですが、一部No.264とNo.274が混在していた期間があったようです。そのNo.274ですがデートコードからすると昭和48年以前のものは見当たらないようで、おそらくは青角蓋ポリエチレンケースのものしか見かけませんがNo.264は紺帯貼箱も青角蓋ポリエチレンケースも存在します。
このNo.274は高校特納品なのか一般市販もさせたものなのかはわかりませんが、用途からして輸出はまったくされなかった計算尺です。時期も時期ですし、No.254WNという高校生用計算尺も存在したため、存在感も薄く、数も少ない計算尺ですが、RICOHの高校生用No.1051Sあたりと内容はほぼ同じですので、高校生用としてある程度の需要はあったのでしょう。そのNo.274ですがさすがに高校用だけあってNo.254Wほどではないにしてもちゃんと使用側の要望で「別製」というオーダー品が存在しNo.274-Sのスペシャルを表す「-S」があるということは、わずか2年ほど前にその存在が知られたばかりのことなのですが、実はうちには3年前にこのNo.274-Sが転がり込んできています。しかもPaul Ross氏のカタログに掲載されたものは通常のNo.274にdB尺が追加になったものですが、こちらはさらに交流のベクトル、力率などを計算するのに必要な角度換算尺(度とラジアン)が追加になっているNo.274-Sです。おそらくは工業高校の少々こだわりのある電気科あたりの先生からの特注品でしょうか?
表面は上からL,DF,[CF,CIF,CI,C,]D,LL3,LL2,LL1,の10尺で裏面がdB,K,A,[B,TI2,TI1,SI,C,]D,DI,x,θ,の12尺の合計22尺です。√10切断ずらし尺の両面計算尺です
これ、まったくの未使用未開封品でとてもではありませんが袋を開封してスキャナーに掛ける気がしません。そのため、袋のまま画像にしましたがご勘弁あれ。デートコードはXFで昭和48年6月ですが、説明書は7502Yと2年の開きがあります。デートコードは製品完成というよりも目盛を刻まない状態でエージングに入ったのかいつかという確認用になっているようで、通常説明書の2年の開きがあるのが普通ですから実際に目盛を刻んで説明書が付き、完成品となって出荷されたのは昭和50年の新学期ということになるのでしょう。
実はこのNo.274-Sのバリアントの中にはデートコードZ刻印で、おそらくは昭和52年以降に工業高校に納品されたものなのでしょうが、なんとCIF尺がグリーンに化けただけでNo.274-Sのスペシャルコードが付いた、まるでP-253SPECIALのようなバリアントが昨年発掘されました。まだまだ各種のバリアントが発掘される可能性が残っているNo.274W-S、侮りがたい注目株です。
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