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October 21, 2020

無銘のJ.HEMMI No.6の謎

 逸見治郎が当時の豊多摩郡渋谷町猿楽町に工作所を移した直後のおそらくは大正2~3年の製品と思しきJ.HEMMIのNo.6です。しかも非常に興味深いことにまったくの無印良品ノーブランド。こういう100年ものの計算尺というのは付喪神となって意思を持って共鳴し合うらしく、先日玉屋商店OEMのNo.6系統のNo.9が来たばっかりですが、No.9に呼ばれて世に姿を表し、我が家にやって来ることになったのでしょうか?(笑)
 内容的には前回のNo.9とまったく同じで(但しNo.9の目盛は10インチ計算尺と同じ刻み方の精密計算尺)、滑尺に逆文字で特許の文字、滑尺を抜いた溝にPATENT.No.22129が入れられているのみ。No.9の上固定尺に刻まれたスケールはインチで、今回のNo.6はセンチという違いがあります。しかもよくよく観察すると上下の固定尺左右に刻まれている読み換えの指標がありません。なのにも関わらずπマークはA,B尺とC,D尺の両方にすでに刻まれています。裏側の換算表がないのは経年で失われることが多いものの、計算尺の程度からすると不自然で、最初からなかった可能性もあります。もしかしたら職人逸見治郎が目盛りの仕上がりが気に入らなくて名前を入れないまま廃棄した半完成品を、悪い使用人がいてそれを外部に持ち出し換金したことだってあるかもしれません。ブランド名がないのでその後の足がつかず、好都合だなんて廃棄品転売を繰り返していたら…ってどこかのHDDデータ消去会社じゃありませんけど。そんなことを想像するくらい、この無印J.HEMMI No.6は別な興味を掻き立てるものです。また、この時代はまだまだ舶来嗜好が高かったでしょうから国産でこういう完コピー商品作ってもなかなか売り先に恵まれず、職人に給料を払えなくて現金の代わりに現物支給したものなどと戦後の路上の万年筆売みたいな話を想像するのもなかなか楽しいことです。
 まあ、それだけ特許が降りた直後の逸見治郎の計算尺製作場は渋谷の猿楽町に工作所を移しただけでもかなりの資金が必要だったでしょうし、計算尺の需要がまだまだ限られた当時の社会状況で、なかなか計算尺製造販売のための回転資金を得るのは容易ではなく、相手先OEMブランドというのが必須だったとともに、このような無印のものが出回ったという事実に興味がつきません。カーソルにヒビがありますが、この時期のJ.HEMMI計算尺のカーソルガラスは単なる青板ガラスを切り抜いたものだったのか、特別に弱いような感じです。入手先は群馬県からでした。ところで滑尺右に刻まれている文字は「ヤミ」?ヤミの深さは超一級ですけど…

追記:これを譲っていただいた方からのご指摘で、この刻まれている文字はその方の名字の頭の「さ」ではないかとのこと。たぶんお祖父様の持ち物だったらしいとのことで、そうするとずっとその家に受け継がれてきたものですから疎かには出来ません。また、無銘で思い出しましたが、atom氏がロンドンのコレクターから譲り受けたNo.1がこれと同じく無銘で特許の逆文字入のものでした。海外に無銘のJ.HEMMI初期の計算尺が渡っているということは、もしかしたらJ.HEMMI”SUN"を刻み、海外で取得したパテントなどを刻む以前には輸出先でどうブランドを刻んでもいいように「無銘」で輸出していた可能性があります。 それを裏付けるように滑尺溝に刻まれているのはインチですし、滑尺を引いて全体の長さを図るスケールとして使用するのも主にインチを単位として使用している国への輸出が主目的と考えられますし。しかし、なぜ国内に出回ったのか、売り主様のお祖父様がどういう経緯で入手したのかという疑問と興味は残ります。

追記#2:古い玉屋の商品目録から拾った画像ですが、大正初期、おそらく大正十年あたりまでは5"の計算尺はこのように普通にノーブランドで出回っていたらしいのです。それが玉屋扱いだけなのか、他もそうであったのかはわかりませんが、やはり輸出が絡んでいただけにあえて日本のメーカー名を刻まず、国籍不明のノーブランドとして玉屋扱いで輸出に出されるのと同じものも国内に出回ったと考えたほうがよさそうです。このころまではJ.HEMMIなどという名称はまだ何の付加価値も生み出せなかったということでしょうか。

Jhenmi6
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Tamaya1942

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