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November 28, 2020

三菱金属ダイヤチタニット切削速度計算尺

 三菱金属(現三菱マテリアル)から発売されていたダイヤチタニットという超硬合金を使用した切削工具用に製作した切削速度を計算するための計算尺です。この計算尺は素材の直径(D:mm)、旋盤の回転数(N:rev/min.)、切削速度(V:m/min.)の三要素しかありませんが、工業簿記的にみると、この切削時間というのが製品が時間あたりどれくらい製造できるかということと機械の減価償却など原価計算の重要な要素になっており、これらがおろそかになると製品の価格も設定できないということなのです。 このような切削速度計算尺というのは日本では専ら切削工具メーカーのサービス品のような扱いで、他には東芝系のタンガロイなどの切削計算尺もありますが、その全てが薄いプラスチックで作られたカーソルも不要なスライドチャート的なものしか出てきません。
 しかし、欧米には計算尺メーカーによる切削速度計算尺というのがちゃんと存在し、うちにもドイツのNestler No.26がありますし、他にもAW FaberからNr.348や1-48なども発売されています。諸外国では1970年辺りまで存在した切削速度計算尺ですが、日本の主な計算尺メーカ2社ではこの分野にまったく手を付けた様子がありません。これが非常に不思議な感じがしますが、これは当時の工業的な成熟度の違いで、日本では旋盤職人の親方の仕事に合理的な切削速度を計算する必要は無かったでしょうし、大メーカーはこういう挽き物のパーツは下請け孫請け町工場の仕事で、原価計算には部品仕入れの値段しか必要なかったという産業構造がこの手の計算尺が大手で作られなかった原因かも知れません。ただ、金属製円形計算尺の藤野式にNo.2557号として工作機械用マニシストコンピュータという工作時間計算尺発売の予告が出ていたことがあるのですが、玉屋発売の片山三平著の「最新計算尺原理及使用法」の藤野式計算尺使用法の部分は、版を重ねても一向にNo.2557号が出てこず、今だかつて現物を目にすることもなかったため、もしかしたらなんらかの理由でお蔵入りしてしまったのかもしれません。このNo.2557号が発売されたら我が国最初の素材と切削時間に特化した工作時間計算尺になったはずですが、この藤野式計算尺No.2557号は戦後、藤野式円形計算尺が元になったコンサイスの工作時間計算機として世に出ますから、こちらが日本で最初の工作時間計算機になるのでしょう。
このダイヤチタニット切削速度計算尺は製造したのがどこかの手がかりはありませんが、おそらくは山梨系のメーカーの仕事でしょうか?

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