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March 19, 2021

地元防災無線がアナログからデジタルLPWA化

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 うちの街は東西に非常に長く(約40km)市の東西に渡りすべて海岸線に面しており、津波のリスク範囲が広範囲に渡ることと、樽前山という活火山に接していて、火山活動に伴う火砕流などのリスクも有り、地形的にすべての範囲で広報車等による避難連絡をくまなく伝えることが無理で、火山災害リスクの大きい市の西部を中心に音声で避難等の情報を伝える防災スピーカーを25基整備して市役所からの防災無線電波を受信して音声で拡声するというシステムを備えていました。しかし、北海道の気密性の高い家屋では外の音が十分聞こえないということもあり、東日本震災を期に家の中でも防災無線をキャッチして音声を復調する戸別受信機の整備を始めたのが平成25年度のこと。
 市では市民生活部危機管理室が平成25年に防災行政無線の戸別受信機を3期に渡り、まずはハザードマップによる津波浸水被害予想地域や火山災害予想地域の要支援者のいる家庭や公共施設などから配布を始め、その他の地域住民は希望者に個人負担金1,000円で防災行政ラジオを配布しました。この防災行政ラジオはリズム時計の9ZQA07、通称「おにぎり君」という特徴的な防災行政ラジオで受信周波数は69.5MHzのF3E波。いわゆるアナログのFM音声波の受信機だったわけですが、オートスケルチ内臓で、電波が入らないときは音が出ず、またFMやAMのラジオ受信中に防災行政無線の電波を感知すると自動的にこちらの回路が優先されるという仕組みです。市役所に近い地域では市役所屋上の電波塔からの直接波が、また市内の西部を中心に25基の防災無線拡声器が設けられいて、そこの中継機からも防災行政無線が中継されるというシステムだったようです。また、普段は外部電源をつけっぱなしにしておいて、停電すれば内部の乾電池に電源が切り替わるというものでしたが、実際にこの防災行政ラジオからの緊急地震速報で手近のヘルメットをかぶって落下物に注意したのは2回ほど。普段寝るときはNHKラジオがつけっぱなしなので、こちらのほうが先に緊急地震速報の警報音を鳴らすほうがタイミング的に早いようです。さらに胆振東部地震のときは防災行政無線から緊急地震速報が鳴ったときにはすでに大揺れしてましたし、先にNHKラジオの警報音で飛び起きていたあとでした。北朝鮮のミサイルが頭の上を飛んだときのJアラートは空襲警報を連想させてもう二度と聞きたくもないのですが。
Dvc00935  そんなアナログ防災行政無線の戸別受信機も国の政策で令和4年までに全国で完全デジタル化移行するべく国が特別交付金を付けたため、うちの街でも総事業費約15億円の予算を付けて防災無線のデジタル化を推進し、今年度末までにアナログ防災行政無線をデジタルに切り替える事業が進んでいます。そのため、従来配布されてきたアナログの戸別受信機は3/14日で使用不可になるのですが、今では緊急エリアメールが発信されるため、個別の受信機のニーズは従来よりも低くなったものの情報弱者を切り捨てるわけにも行かず、要支援者や福祉施設、学校や公共の施設に対しては戸別受信機10,000台無償配布、その他の希望する世帯は1世帯1台に限り3,000円で有償貸与するということです。
 防災無線のデジタル化は東日本震災で津波被害を受けた地方自治体を中心に60MHz帯アナログをデジタル260MHzに移行した音声通信の形式で、地域くまなく建てられた防災放送スピーカーならびにそこから再送信されるデジタル波を屋内で受信できる戸別受信機がすでにかなりの自治体で整備されています。ただ、津波被害のリスクが少ない内陸部などの自治体は防災放送スピーカーまでは完全デジタル化は達成しても、コストの高いデジタル戸別受信機をくまなく配布できる自治体はまだまだ限られているようです。
 当自治体が採用したデジタル防災行政無線のシステムはLPWA(低出力広域通信)という最新の技術を使用しており、NTTドコモの閉域ネットワークと携帯電波網及び準天頂衛星みちびきとのダウンLINKを使用し、市内に130基新たに設けられたパンザマストにドコモの携帯波と衛星の電波受信装置と拡声スピーカー及びLPWA電波送出装置を設けるものです。このLPWAは無線LAN等と同様に無線局免許状や無線主任技術者の専任がいらないようで、従来のアナログF3Eなどと異なり、文字情報のみを送信して端末側でそれを合成音声で復調するシステムとのこと。従来の屋外スピーカー設置塔もこのシステムに改修して再使用するでしょうから合計150基あまりのLPWA送出設備で東西に長い市全域をカバーできるのかどうかは試験電波を出さないとわからないことも多いのでしょうが、電界強度が低くてLINKできない地域では窓に貼るような形の外部アンテナを有償配布するとのこと。その使用周波数はどうも920MHz帯を使用しているようで、アナログの中継機の再送出出力が100mWだったのに対して10mWで周囲1kmを超えるカバレッジがあるという話なものの2.2GHzや5GHzの無線LANなど比べて伝送速度が圧倒的に遅く、今のところは文字情報送出くらいしか実用出来ません。電波の飛びは段違いだということはわかるものの、今後の920MHz帯の電波利用やLPWAの技術革新の可能性などに関しても完全に浦島太郎状態のアナログ電波技術者の当方にはよくわかりません(笑)
Dvc00934  この新たなデジタル防災無線戸別受信機(LPWA受信機)は平成30年から総務省主導で各メーカーが参加して基本的な3つの仕様が決められましたが、コストの高い安いに関わらず2波ラジオ内蔵、自動録音機能、聴覚障害者のための警報ランプ点滅、外部電源と電池の自動切り替えなどの機能が必須らしいです。そのためアナログの戸別受信機よりも調達価格がかなり上がり、調達数で値段がかなり変わるものの単価の平均は46,000円あまり。アナログ受信機の単価が29,000円ほどなのでかなりの価格アップということになります。うちの街では10,000台での調達単価が29,800円。アナログの調達価格が7,980円だったので市の負担も大きいのですが、どれくらいの割合で国の交付金が付いたものなのやら。そのLPWA送信装置付きの防災無線スピーカーパンザマストですが、基本市有地に建つわけですから小中学校のグラウンドの隅とか児童公園とかそういう場所に増設するのだと思ったら、なんとうちの家とアパート一軒及び道路を一本挟んだ公園内に知らない間に建ってました。昨年8月中頃から建設をし始めたらしいのですが、この公園には11月くらいに公園内のトイレの改修と同時期ぐらいに建設されたらしいのです。うちとの距離はおそらく30mくらいとローケーションは抜群ですから家のどこに戸別受信機を設置してもLINKされないということは考えられません。なにせこの距離だと我が家のWIFIの電波さえ到達するくらいの距離なのですから(笑) ただ、パンザマストの接合部分がまだ自己重量で十分締まっていないらしく、スピーカー設置部分の頂上が風でゆらゆら揺れているが気になりました。なお、LPWA再送信設備は低出力広域送信技術なので、その必要電力は文字通り極小のため、万が一停電で外部電力が供給不能になっても、内蔵電源で何日も送信し続ける事ができるというサバイバビリティーが高いことは言うまでもありません。ただドコモ側のサーバーが使用不可になったときは動作することはできませんが、万が一そんな災害が発生したら市から直接電波を発するシステムだってダウンはまぬがれません。東日本震災時に南三陸町の防災庁舎が津波で浸水し多くの犠牲者を出して機能を喪失しましたが、そういうことにならないようドコモの閉域ネットワークと携帯電波を使用したLPWAの再送出システムというのはサバイバビリティーに対してはかなり有効だと思われます。万が一市役所の親局システムがダウンしても消防庁や気象庁が発信する準天頂衛星みちびきを利用した緊急情報を衛星通信リンク各再送信装置が直接受信し、防災スピーカーで合成音声での放送を行うとともに緊急地震速報携帯のエリア速報メール同様にLPWA網で再送信が可能なのですから。しかし、あの放送冒頭のアナログ制御信号のキュラキュラ音が聞こえなくなるというのも時代の流れでしょうか。そして防災においても資格不要の無線ネットワークの普及というのはますます無線有資格者の肩身を狭めてきます。
 
アナログの防災無線が停波したのが予定通り15日。そして新しいLPWA個別受信機が送られてきたのが19日でした。やはり受信機はNTTデータのもので形式がCLT-100というものでした。市役所から送られて来るのかと思ったらNTTデータ北海道の名前で札幌郵便局扱いで送られてきたようです。一切の初期設定はユーザーがする必要もなくアンテナを接続して乾電池を入れ、外部電源をつなぐだけでLINKが成立し日付も時刻も自動的に修正されます。電波強度は携帯電話のように棒3本で表示され、なにせ隣の公園にLPWAの送出アンテナがあるので強度はバリ3なのは当然でした。ただ、ラジオのFMロッドアンテナが内蔵されていないため、ラジオ受信用のワイヤーアンテナが付属しているのですが、実際に地震で停電になったときはラジオだけが情報源ということもあったので、これから設備保守が大変なAM放送を廃止してFMだけにしようという時代にいざというときワイヤー伸ばしてFM放送を聞くという悠長なことができるかどうか。まあスマホがガラケーを駆逐して100%普及すればこのような戸別受信機も基本不要で、スマホですべて完結ということになるのでしょうけど。
 追記:戸別受信機を受け取った市内の各所からラジオがまったく聞こえないというクレームが市役所の危機管理室に寄せられているそうで。というのも実は当方も対策に関して電話したのですが、説明によるとデジタルとアナログ混在の回路の関係で弱電界の地域ではラジオが聞こえない(?)ので、現在メーカーとその対策を協議予定だが、LPWAのリンクの機能に関しては問題なく、とりあえずそのまま使用し続けてほしいとのことでした。そうなるとリズム時計のおにぎり君(9ZQA07)も新しい電池を入れてそばに置いておかないと、万が一胆振東部地震時のような長時間の停電に見舞われた時はラジオで被害の情報も把握できなくなります。
 また、このNTTデータCLT-100の通電開始後時間積雪量1cm程度の雪や雨がありましたが、再送信装置のパンザマストと数十メートルしか離れていないのにも関わらず、表示電界強度が3本から2本、1本しか立たない時間もあり、降雨降雪での920MHz電波の減衰というのはかなり問題になり、時間100mmくらいの豪雨になったときはほんのわずかな距離しかLINKが成立しないのではないかという懸念も伝えておきました。いちおうはそういうことも勘案してパンザマストの設置場所は検討されているということですが、LPWAは新しい技術だけにまだ実用的な問題がこれからもいろいろと露呈してくる可能性は大いにあります。
 再追記:最初の防災無線試験放送がありましたが、予定時間を過ぎてもなかなか戸別受信機が鳴り始めることがなく、しばらくしてから隣の公園に設置された防災スピーカからの放送が鳴りだしてから相当のタイムラグ(10秒ほど?)があったのちに戸別受信機からも音声が鳴り始めました。テキストベースのパケットを全受信したのちにそれをデコードし、音声に合成する現在のシステムではこれが限界なのでしょうか?準天頂衛星みちびきから中継されるJアラートなどの警報はまた違ってくるのでしょうが、正直携帯に発信されるエリアメールでの緊急速報のほうに伝達速度的には敵わないようです。翌日、正午の第2回目の試験放送。あいかわらすラジオの時報より時刻表示に数秒のタイムダグがありますが表示時刻が12:00になる直前に11:59の表示のまま試験放送の音声が発出されました。まあこれくらいのタイムラグだったら良しとしますが、前回試験放送時と何の変化が生じたのでしょうか?しかし、いまのところはこのLPWA戸別受信機はアナログ防災行政無線時代のように、戸別受信機の作動状態を確認するため毎日正午にメロディー(うちの街はエーデルワイス)が送出されません。音楽を鳴らすためにはテキストベースのMIDIファイルで音を鳴らす音源チップが必要なのですが、今のシステムではプリセットされた警報音は当然あるものの、そこまでのことは考えられてはいません。また戸別受信機の作動状態は「ON LINE」の表示のみで確認するのですが、急にエーデルワイスの曲が流れななくなったというのも何か寂しいものがあります。

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March 13, 2021

技研 No.2510 10インチ片面標準一般形

 山梨の技研計算尺製No.2510という10インチ片面計算尺です。このNo.2510という型番は昭和38年1月1日の技研計算尺価格表によると両面計算尺の型番となっていますので、昭和38年よりも前の型番ということになります。この旧型番の技研計算尺は他に一本あるのですが、残念ながら旧取説が無いので、昭和38年よりも前に技研ではどういう型番でどんな種類がリリースされていたのかということがわかりません。昭和38年1月1日付け以降の説明書なら色違いで3種類もあるのですが。
 その旧型番のNo.2510ですが、尺度が微妙に後の技研計算尺と異なり、どうやら旧型番のみの存在の技研計算尺のようです。その後の後継機種はNo.252という標準一般形のタイトルの10インチ片面計算尺のようですが、尺度が微妙に異なり、こちらはL尺が裏側に移動して下固定尺にDI尺が加わったRelayのNo.116とほぼ同じ内容の計算尺です。なぜNo.2510を廃してNo.252を新たにリリースしたのは言うまでもなくHEMMIのNo.2664S同様の操作性を得るためなのでしょう。そのため、廃版のNo.2510は滅多に見かけることがない計算尺です。もっとも技研の計算尺自体オリジナルブランドでリリースしていた期間が非常に短く、技研計算尺自体がレアな存在ですが。
 尺度は表面がK,DF,[CF,CIF,CI,C,]D,A,Lで、裏面がS/Cos,T2,T1、逆尺は尺種と数字のみ赤入れされているというシンプルなデザインです。三角関数の尺度の末端部分の分割はちゃんと1°が6分割で刻まれていてRelayのNo.116同様にHEMMIの片面尺より細かく刻まれているという特徴を持ちます。この時代の技研計算尺の貼箱はHEMMI同様の緑一色で、のちの技研計算尺のような白っぽい緑の貼箱ではありません。これも昭和38年より前にリリースされた技研の旧型番計算尺の特徴でしょうか。この時代の技研計算尺の欠点として塩化ビニールの可塑剤の影響で目盛に入れた塗料がすっかり柔らかくなってしまい、ふき取ると目盛がほとんど見えないほど薄くなってしまうのです。そのため、なるべく触らずにそのままにしておくか、すっかりふき取ってパステルか何かで再度色入れする必要があります。入手先は千葉県ですが、この技研の計算尺は東日本から出てくるケースが多く、西日本、特に大阪以西から出てくるケースが少ないように感じます。西日本は当時、Relay/RICOH計算尺の地盤。その強固な商圏に販売力で劣る技研が食い込むことは難しかったのでしょうか。そのため、技研計算尺は「計算尺検定需要」をもくろんだラインナップを用意して、その需要を掘り起こそうとしたのですが…

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March 10, 2021

RICOH No.1053-I 高級(両面型)計算尺 逆尺付

 HEMMIの計算尺は戦時中に発売されたNo.2664の三角関数が逆尺として設計された以降は戦後、新たに発売されるずらし尺を備える計算尺は両面尺も片面尺も基本的には三角関数逆尺で発売されています。これは連続計算手順を含めたトータルの使い勝手を考えたヘンミ計算尺研究部長平野英明氏のアイデアで国内の特許を取得したといわれていますが、他社ではこれに追従した形跡は見当たりません。しかし、昭和30年代あたりから盛んになった計算尺競技大会などのスピードレースにおいては連続計算が一手増えるというアドバンスは大きく、その当時の計算尺競技の標準モデルHEMMIのNo.2664Sに対してRelayでは表面にDI尺を1尺増やして何とかNo.2664Sに対抗したNo.116を発売するに至るわけですが。そのRelayからRICOHにブランドが変わっても三角関数逆尺は採用されることはありませんでしたが昭和47年ごろになって「-I」という枝番が付いた三角関数逆尺の計算尺が発売されたということはあまり知られていません。学校教育用用途の品種に限られ、市販品があったかどうかはわかりませんが、今までは知られていたのはRICOH No.116-IとNo.1051S-I及びNo.1051SE-Iの3種類でしたが、今回初めてNo.1053-Iを発掘しました。
 発掘先は香川の高松で、この手の高校で使用されたRICOHの計算尺は大阪以西が圧倒的に多いのですが、西日本では内田洋行の勢力があまり及んでいなかったのでしょうか?もっとも大阪には戦前から営業する老舗の教材業者が何軒もありましたし大連から引き上げてきて大阪にも拠点があったものの、所詮本社が東京になった関東者の内田洋行の商売はなかなか関西には浸透しにくかったのかもしれません。このNo.1053-Iのデートコードは「SS-12」で昭和45年12月の佐賀製です。「-I」の逆尺付き計算尺が昭和45年には作られていたことがわかります。この時期のNo.1053は大型金属枠カーソル付きながらCIFはグリーンという過渡期の仕様で、ケースは前年頃に透明塩ビケースから青蓋ポリエチレンケースに変更になってあり、この個体も当然ながらブロー成形の青蓋ポリエチレンケースです。ぱっと見であまりNo.1053らしさが薄いなと思ったら、なんと各尺度の末端の計算式がすっぱり無くなっています。あるべきところに数式がないNo.1053というのは何か間が抜けて見えるのは当方だけでは無いと思いますが、数式削除の理由は判然としません。HEMMIのNo.254WNに先駆けての様式を同じ形式を名乗りながらなぜ削除してしまったのでしょうか?またNo.1053にまで三角関数逆尺のバリアントを用意したという理由はやはり高校の教師側からの要求に従ったのでしょうが、No.1051SE-Iなどが意外に普通な存在なのに対し、No.1053-Iは話に聞いたことがあったものの現物を見たのは初めてです。
奇しくも現在所持している4本のNo.1053中で3本までがデートコード「S」の昭和45年製です。その3本中すべてが青蓋のポリエチレンケース入りで金属枠カーソル付きですが、2月製造分のπ切断No.1053がノングリーンCIFなのに11月製造分及び12月製造分はグリーンCIF付という変更期の境目が昭和45年だったということがわかります。このグリーンCIF化はNo.116などと比べるとやや早く転換したことが伺えます。

 追記:この逆尺付きのNo.1053-Iは過去帳を参照してみたところ、当方の把握しているところではオクに出てきた数は16年余りで片手の指の数に満たないくらいの数量です。その中にNo.1053最初期フレームレスカーソル付きで丹頂クリーム色貼箱の昭和39年から40年にかけての製造品が一点ありました。そうなるとどうやら「-I」付のRICOH両面計算尺は昭和40年代も半ばを過ぎて現れたのではなく、当初から用意されていたということがわかります。もっともそこまで逆尺を要求する声はほとんどなかったということなのでしょうが、グリーンCIF化するまではカーソルやケースだけアップデートして古いデートコードのベースボディを出荷し続けていたのかもしれません。そんな例、無印のNo.1051にもありましたよね(笑)

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March 09, 2021

RICOH No.1053 高級(両面型)計算尺 最終型

 RICOHの10インチ両面計算尺のNo.1053は「高級(両面型)計算尺」という扱いですが、その実No.1051系統などと同様に高校生需要を狙って作られた計算尺です。No.1051がHEMMIでいうとNo.P253やNo.264相当になのに対してNo.1053はNo.254Wの対抗馬ながらフルログログデュープレックスで発売されており、HEMMIではNo.254WNになってやっとフルログログ化しています。No.254WNまで5年間のアドバンスがあったもののNo.254Wは内田洋行という強力な代理店があり、高校の先生の好みでいろいろな仕様の別製に応じられる柔軟な受注体制もあって、RICOHのNo.1053は数量的にはNo.254Wの敵ではありませんでした。
 また、No.1051系統は型番に枝番が付いたバリアントが各種存在するのにNo.1053は同一型番で√10切断とπ切断が存在するくらいのバリアントしか見かけません。ただ、世の中に出ている数がNo.254Wなどに比べて少ないだけにまだ知られていないバリアントがありそうで、No.1053が出てくるとついつい注目してしまうのですが。
 しかしRICOHでは高校の教育用としてNo.1053はある程度の推し商品だったようで、わざわざOHP(オーバーヘッドプロジェクタ:透過投影機)用の計算尺まで作っていたことからもうかがえます。
 そのNo.1053ですが製造初年がおそらく昭和39年。最終の製造がRICOH計算尺最終期の昭和50年ごろだと推測していたのですが、今回小型カーソル付きでグリーンCIF化した個体を持っていないことを思い出して入手したのが今回のNo.1053。なんとこれがおそらくは最終製造ロットの昭和50年製造のNo.1053でした。
デートコードが「XS-3L」ですから昭和50年3月の佐賀製。末尾のLはLast Issueの意味合いでしょう。おそらくは工業高校に入学したときに買わされたもののあまり使われずに放置されたものらしく、青蓋ポリエチレンケースは埃っぽかったものの中味は表面のざらつきがまだ残るほどの極上に近いものでした。
 後発である高校生用両面計算尺HEMMI No.254WNと比べると尺度はレイアウトなどに若干違いがあるものの内容的にはほぼ同じです。ただし、HEMMIの三角関数尺はほとんどの物が逆尺ですが、RICOHは特別なものを除いて順尺。また、HEMMIのNo.254WN発売後にNo.1053はいち早くグリーンCIF化したもののHEMMIのNo.254WNは工業高校への特納のみの扱いになった昭和50年代も半ば近くになって初めてグリーンCIF化したものが現れたという話だけは聞いていますが。またこのNo.1053のグリーンCIFは大型金属枠カーソルの物と小型プラメッキ枠カーソルの両方に存在し、その境目が昭和47年あたりではないかと推測しています。
 RICOHの高校生用計算尺のNo.1051が豊富なバリエーションを有するのにこちらNo.1053は型番の変わらない√10切断とπ切断があるのみだと長年思い込んでいましたが、最近枝番付きのものも見つけましたので、これは後日改めて取り上げます。

RICOH No.1053(XS-3L)

Ricoh1053
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RICOH No.1053(SS-11)
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RICOH No.1053 [π切断](SS-2)
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