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April 24, 2021

HEMMI 機械試験所式工具寿命計算尺

 HEMMIの機械試験場式という形式名がなくタイトルだけが付いた5インチ両面計算尺です。これ、ATOMさんのコレクションか何だかPaul Rossさんのところに掲載されているくらいしか知られていない大変珍しい計算尺だったのですが、3年ほど前にまとめて何十本もの未開封品が出てきて一気に普遍化しました。ただ、その時に出てきた計算尺は倒産して民事再生法手続きを受けた本間金属工業という新幹線の車輪削正機械などを一手に手掛けていた機械メーカーのノベルティーで、何らかの財産整理で市場に出てきたものだと思いますが、今回入手したものは無印の市販計算尺です。機械工具の切削バイトなどの工具寿命に特化した計算尺に類するものだと思われます。機械試験所というのは当時の通産省工業技術院傘下の産業機械技術の試験研究に携わる国の機関で、メイドインジャパンの工作機械が欧米の工作機械の水準に並ぶことが出来ず、そこから生まれる製品が安かろう悪かろうの時代からメイドインジャパンが耐久性信頼性の代名詞になることをけん引していった組織です。昭和46年に通産省工業技術院機械試験所から機械技術研究所に名称変更し、昭和55年には東京の杉並区井草からつくば学園都市に移転。そして現在は独立行政法人の産業技術総合研究所の一組織になっています。40年ほど前に当時学芸大学駅近辺に住んでいた知り合いの父親が機械技術研究所の技官で、確かつくば移転直後くらいに定年で退官したはずですが、けっこう海外への出張などが多かった人でした。専門分野が何だったかは聞いていませんが「パリの町は小汚くて、まず店のシャッターを開ける前に大量の犬の糞を掃除する」などというフランス出張のときの話だけを妙に覚えています。まさかこの計算尺の設計に係わっていたわけではないでしょうけど、そんな機械試験所との関りが少しだけあるということです(笑)
 少し以前に三菱金属の切削計算尺について書いたときに本気でHEMMIが切削計算尺を作ったことがなさそうだというのは誤りで、自社設計ではないもののこういう計算尺を作っていた事実は特筆ものでしょう。しかもNo.149Aと同じ形のポケット型両面計算尺という付加価値もあり、これが昭和45年以降の新規製造ならば、おそらく山梨に丸投げされてコストの安いNo.P35Sのようなプラスチック製両面計算尺になってしまったはずです。説明書によるとこの計算尺の目的はやはり「生産工場に置いて所定の材料に旋盤加工を施すに際し、どの程度の切削条件を選ぶべきかの目安をうるためのものである。本計算尺の基をなす方程式は長期に渡り機械試験場において実施してきた切削作業超順の設定に関する研究で得られた結果を最大公約数的に丸めたものである。したがって総ての場合に厳密に適合するものではなく、あくまでも第一近似的目安を与えるものであり、その値を出発点とし、生産途上でこれを理想的に近づけることをたてまえとする。そのためになるべく簡単化して使いやすいように心がけた」とあり、より正確な切削速度などを得るためにはやはり各工具メーカーで出している専用切削計算尺のほうがより有効なのでしょう。本計算尺の適応範囲というものが記されていてそれによると1.作業の種類:旋削加工 2.工具の種類:超硬合金 3.切削材の種類:鋼系(オーステナイト系ステンレス及び耐熱鋼を除く)及び鋳鉄系とあります。
尺度は表面がT,N,K2/V,[K2/DΦ,CI,C,]D,A,Lの9尺このうちN:主軸回転数(rpm) V:切削速度(周速)(m/min) DΦ:工作物の直径(mm) T:工具寿命(min) K1:毎分あたりの直接人件費+経費(作業員及び補助作業員の人件費+設備保全費+動力費+償却費+保険費等)(\/min) K2:工具一刃当りの工具費(工具価格/廃却まで使用できる総切刃数〈または廃却までの総研削回数〉+1切刃あたりの工具ホルダー償却費+1切刃当りの再研削費+1切刃当りの工具交換費)、ここに工具交換費は(毎分当りの直接人件費+経費)×工具交換時間(min)であるとあり、工業簿記の素養があって原価計算などの業務に精通している人ではないとなんのことだかさっぱりわからないかもしれません。
 裏面尺度は赤字でδB2(鋼),青字でδB1(鋼),HB(鋳鉄),[fH,fδ2,TH.Tδ2,]VH,Vδの計8尺です。このうちfδ2(赤字),fδ1(青字):一回転当りの送りで、鋼計の場合のみに用い、それぞれδB2(赤字…送り0.2mm/rev以上の場合)尺とδB1(青字…送り0.2mm/revより小さい場合)尺を使用した場合に対応する(mm/rev)、TH:工具寿命で、鋳鉄系の場合にのみ用いる(min),Tδ2(赤字),Tδ1(青字):工具寿命で、鋼系の場合のみに用い、それぞれfδ2(赤字)尺とfδ1(青字)尺を使用したときに対応する(min)、VH:鋳鉄系の切削速度(m/min),Vδ:鋼系の切削速度(m/nin) だそうですとしか言いようがありません。
 実際にこの機械試験所式工具寿命計算尺が届いて驚いたのは、なんとNo.149Aなどと違って、本体がプラスチック製だったことです。もちろんのこと固定尺をつなぐブリッジは金属製ですし、カーソルもNo,149Aと変わらないのですが、こういう少数生産の特殊尺は当時から山梨丸投げOEM生産だったのでしょうか?入手先は千葉県内でデートコードは「RI」ですから昭和42年の9月の製造ということになります。残念ながら革のサックケースが欠品でした。

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