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November 10, 2021

日本計算尺 NIKKEI No.250 8インチ学生用

Nikkei 10年以上ぶり3本目の日本計算尺のNIKKEI No.250です。8インチの学生用と思われる計算尺です。よくRelay計算尺の東洋特専興業が戦後の一時期に名乗った日本計算尺と混同されるケースも多く、外国人コレクターが頓珍漢な説明を加えていることもあるのですが、この日本計算尺は東京の世田谷に存在したまったくの別会社です。それは宮崎治助氏の計算尺発達史中に戦後に製作を始めたメーカーとして出てきますのでこれはファクトでしょう。また、この日本計算尺は自社ブランドで輸出も行っていたようで、なぜかHEMMIの両面計算尺に自社のNIKKEIブランドを付したものの対米輸出もあったことがわかっています。この経緯は良くはわからないのですが、おそらくフレデリックポストに戦前から独占されていた対米輸出をポストの影響力なしに行うため、HEMMIがNIKKEIを利用して風穴を開けようとしたのかもしれません。そのNIKKEI計算尺のトレードマークが漢字の「日」をかたどった太陽マークで、これは旧日本水産の戦前からの社紋と同じ。今のネット社会では一発でクレームが入りそうなものですが、当時にしても缶詰やソーセージと計算尺を同一メーカーと誤認するようなことはなかったでしょう。
 このNIKKEI計算尺は国内向けには5インチと8インチのバックプレートが一体金属で厚みが比較的に薄いものと、HEMMIのNo.45と同様の構造の学生用8インチ計算尺に限られています。両面計算尺の生産が出来なかったというのがこの会社の技術力を物語っていると思います。金属の一体バックプレートを持つ構造は合理的なアイデアでパテントを取得しているようですが、一つ問題があって、裏側にS,L,T,尺を持ってきた場合に副カーソル線窓の移動で最終調整するわけにはいかず、さらに金属の温度変化の伸び縮みで精度が損なわれるのではないかということです。その問題を指摘されないために5インチと8インチという短い計算尺しかないのかと疑ってしまうのですが、さらにそのあたりの事情からか当時ではよくある三角関数尺とL尺を廃して裏側がブランクのものがあるようです。そのため滑尺裏に三角関数があるNo.200は構造的にはHEMMIのNo.45Kあたりとかわらないごく普通の竹製8インチ学生尺です。
 今回入手したのがNo.250という8インチの√10切断の機種です。この時代には5インチのポケット尺が一種類、8インチの学生尺が3種類記載されていますが、すべて√10切断のずらし尺を備えたもの。後にマンハイムタイプのA,B,C,D尺を備えるNo.260が加わったようです。普通は逆だと思うのですが。さらに4尺ですから1.2mの教授用のライナップがあるようで、それだけ学校教育用に食い込もうと試みていた様子。その教授用計算尺のおかげもあったのか、文部省、日本国有鉄道、東京都教育庁からの推薦を受けているということです。
 このNo.250の尺度は表面がK,DF,(CF,CI,C,)D,A,の7尺で裏側は竹の表面むき出しのブランク。それでもちゃんと竹を組み張り合わせている構造のため、反ってしまって抜き差しもままならないということはありません。このNIKKEIブランドの日本計算尺は世田谷区の上北沢1丁目というと今はこれといって特徴もない住宅街ですが昭和20年代から30年代はというと、近所の都立松沢病院を望む畑と雑木林が点在する場所で、近くの桜上水や赤堤にはまだ牛を飼っていた酪農牧場があったようです。以前、朝はさんざん千歳烏山から甲州街道の渋滞を避けて赤堤通りから環七の淡島通りに入り、大橋から旧山手通りに入り、鎗ヶ崎交差点で左折して恵比寿に至るルートを毎日走っていたはずなので、上北沢1丁目は毎朝通過していたもののまったく印象がないのです。昭和30年当時としても都内では割と辺鄙なところですから、単にどこかに計算尺を外注で作らせていたわけではなくて、ちゃんと小規模な製造工場を構えていたのかもしれません。入手先は埼玉の川口市で、ぼろぼろな一枚ペラの長尺折りたたみの説明書きが残ってました。

追記:当時の上北沢1丁目は現在の桜上水4丁目だそうで、昭和30年代は閑静な住宅街だったようです。おそらく現在の上北沢1丁目は当時完全な農業地帯で農家が点在するだけの場所だったのでしょう。なぜこのように地名が移動したのかは不明ですが桜上水には三井財閥の酪農牧場が存在し、後にその跡地が桜上水団地に化けたという話だけは知っています。元京王沿線の世田谷区民なもんで(笑)

Nikkei250
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