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November 08, 2021

成東商会ダウエル 7x50mm 7.1度 Zタイプ双眼鏡

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 久しぶりに駄双眼鏡を購入しました。とはいえ戦後に雨後の竹の子のように、というよりもキノコのように出現しては消えていった板橋の四畳半メーカーと異なり、いちおうは戦前から存在した東大そばの文京区西片の成東商会ダウエルブランドの双眼鏡です。扱う商品は天体望遠鏡から顕微鏡、双眼鏡に至るまで多種な光学製品と望遠鏡鏡自作のための部材など多種多様にわたり、カタログだけ見れば同じく戦前派の総合光学商社のカートンやエイコーあたりとかわりありませんが、その実体は一軒家のような社屋に部品の箱が山と積まれていて、注文があるたびに部品を組み立て調整して送り出すというような業務形態だったようで、決して大きな倉庫に完成品のダンボールが山と積まれていて出荷を待つという業態ではなかったようです。
というのもどうやら中間マージンをまったく廃して戦前から一貫してコンシューマーに直接通信販売という形態をとっており、そのため業者に中抜きされる輸出光学製品などは扱っておらず、一時期輸出双眼鏡に刻印を義務付けられていた輸出メーカーコードを取得した形跡もありません。また国内の光学製品問屋の扱いもなかったため、けっこう昔の天文少年たちにとっては一度は切手を送ってカタログを入手したものの、実際に購入した天体望遠鏡や双眼鏡はケンコー、ビクセン、カートン、エイコーなどを地元の眼鏡店でというケースばかりだったような気がします。というのもその時代はまた雑誌広告などの通信販売というのは親の世代にまだまだ拒否感があり、お年玉などを貯めて通販で現金書留送ろうとしたら「足りない分は出してあげるから地元の眼鏡店で買え」などと親ストップが掛かったというケースもけっこう多かったのではないでしょうか。ネットを見て製品の評判を調べてポチで完結する現代とは隔世の感があります。そのためか名前が知れている割には今に残っている製品はあまりないようで、天体望遠鏡に輪をかけてダウエルの双眼鏡は見たことがありません。数年前にたまたまダウエルのかなり古いIFの12x50mmのZタイプ双眼鏡を入手しましたが、分解しなければわからないもののなんと1.6mm径の針金をシム代わりに焦点調整している部品かき集めででっち上げた中身の実態にどん引きしたことがありましたが、それでも調整はちゃんと出来ていて下手な輸出双眼鏡よりもぜんぜんよく見えるというところにこのメーカーの実態がよくわかるような気がしますが、全般的には「割安だが部品の精度不足や調整不足もあって性能の個体差が激しく、買って後悔するメーカーの代表」のような評判が常につきまとっていたような。昔はこういうネガティブ情報がネット上を駆け巡るということもないのですが、やはり天文少年の直感で手を出したらいけないメーカーということを悟っていたような感じで、周りでダウエルの天体望遠鏡、双眼鏡を実際に購入した仲間はさすがにいません。
Dscf4258以前入手したダウエルの双眼鏡は時代的には昭和30年代くらいは遡ると思われるものでしたが、12x50mmの表示ながら実倍率が7倍しか無いというもので、ダウエルまで倍率詐称双眼鏡を普通に供給したというのがちょっと意外でした。今回の双眼鏡はずっと時代が下っておそらくは昭和40年代後半から50年代はじめくらいの製造と推測出来ます。というのもネジが黒染めのプラスネジになり、モノコートながらコーティングも厚くなったような至極まともな双眼鏡に変わったようですが、実態はどうなのでしょう。 静岡の熱海にあるリサイクルショップから届いたダウエルの7x50mm、7.1度のZタイプ双眼鏡はひどく黴びている様子は無いものの、接合部のグリスの油分が蒸発してプリズムや対物レンズの表面を曇らせていました。どっちみちフルオーバーホールするつもりで分解していったののですが、分解前に500mほど先にある送電線の鉄塔を見てみると左右は若干開いていたような気がしますが上下の視軸はぴったりと合ってました。分解してみてわかったことは、部品をかき集めてでっち上げたというものではなく、まともな板橋輸出双眼鏡レベルのもので、プリズム面はちゃんとコーティングされてますし遮光筒を備え、内部も黒塗装がされています。対物レンズは全面コートですが、接眼レンズは外側だけのコートでした。また外部ネジはプラスネジを使用しておりましたが、プリズムはタガネ打ちによる固定です。それから推測するとこの双眼鏡は昭和45年から50年くらいにかけてのものではないかということ。そして、おそらくは成東商会内部で組み立てられたものではなく、板橋のどこかの業者に製造を丸投げして納められた外注品だったのではないかと推測できるのです。ダイキャストはC-3とかいう陽刻が内部にあり、これは確かビクセンの7x50mmと同じもののような記憶があるのですが。考えるに昭和46年の火星大接近などをきっかけとして天体望遠鏡需要バブルが起きて天体望遠鏡の組立調整が一時的に忙しくなり、双眼鏡の組立まで手が回らなくなって板橋の業者に外注に出してしまったのでしょう。双眼鏡屋にしてみれば円の切り上げや変動相場制移行で輸出が立ち行かなくなり、一過性の事とはいえ天体望遠鏡需要バブルで双眼鏡の需要まで生まれたのはありがたいことだと思います。これ、注文取りに出かけたのが当時すでにブローカー的な役回りだった野口光学工業の野口社長だったら話は面白いのですが。
 それでクリーニングが終わって再組み立てし、エキセンリング調整で気持ちよく上下左右の画像が合ったダウエルの双眼鏡はコントラストは足りないものの解像力はそこそこの実力を発揮。さすが20mmの口径の違いだけで8x30mmの双眼鏡とは一線を画します。ただし、同年代のニコン7x50mm 7.3度のトロピカルと比べてみるとさすがに視野はニコンが圧倒的に明るくコントラストも解像度も段違いです。まあ比べる対象としてはフェアではないでしょうけど。 それにしても以前のダウエル12x50mmのように噴飯ものの裏技を期待していたのですが、今回は見事に裏切られました。これなら買って後悔するようなものではありませんが、子供時代にビクセンじゃなくてダウエルの双眼鏡なんか持って天文クラブの活動に参加していたら馬鹿にされたんじゃないか、なんて思ってしまいます。子供同士ってそういうのに敏感でしたし。

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