☆Relay☆ No.R-816 8"学生用計算尺
ダブルスター時代のRelay No.R-816 学生用です。このアルファベットが頭につく品番はアメリカへの輸出品番と言われていますが、この昭和20年代末期から30年代には国内にも広く出回っており、必ずしも輸出専用というわけではないようです。この「R」が練習用とか生徒用を表し、800番台は8インチの片面計算尺を表します。ただ、アメリカでは昔から生徒用も10インチの片面計算尺が主流でしたので、この一連のR800番台8インチ尺が輸出されていたのかというと2、3のOEMブランドがあったのみで、さすがに8インチ計算尺はオフサイズ扱いだったようです。この8インチというサイズの計算尺はアメリカのほうが出現が早かったのですが戦前に早くも淘汰されてしまいました。
日本では戦時中、旧制中学での教育のために作られたHEMMIのNo.2640が標準になったため、学生用計算尺というと8インチ片面尺というのが標準化してしまいましたが、この8インチというのは当時の教科書を開いたときにはみ出さないサイズということになっています。ただ、戦時中ということもあり、材料を節約するために2インチ短い計算尺を標準にしたという動機のほうが大きかったはずです。
そのような8インチ学生用計算尺に√10切断ずらしが採用されたのは昭和25年頃にリリースされたHEMMIのNo.45だと思われますが、RelayではHEMMIに遅れてR-806とR-816という2種類の計算尺がほぼ同時にリリースされています。R-806はおそらく当時各社でよく作られた表面しかなく裏側に三角関数はおろかセルロイドも貼られていないというチープな初心者用ですが、このR-816はHEMMIのNo.45に対して表面にK尺まで加わった豪華版。当然のことながら裏面にも三角関数もL尺もあるのは昭和36年リリースのHEMMI No.45の改良版No.45Kよりもかなり早かったということになります。ただ、HEMMIのNo.45は相当な数が残っているのにも関わらず、このRelay R-816は珍尺に近いくらい数が少ないことからもわかる通り、HEMMI No.456の競争相手にはならなかったようです。また、滋賀のKIM氏も言われている通り、このR-816も例外ではなくセルロイドの経年劣化で左右の基線が一致しないのです。というのも剥がれかけたセルロイドをめくってみると、HEMMIでは竹の表面を接着剤の食いつきを良くするために加工してあるのにRelayは表面がつるつるのまま。それがどうやらセルロイドの収縮防止には何の配慮もなかったために、65年以上の経年で縮んでしまったということなのでしょう。また、このR-816は竹は組み合わせられておらず、単純に切ってみぞを加工しセルロイドを張っただけです。そのため、ある程度のエージングもなしに市場に出されたことも容易に想像されます。これも目盛のズレに影響しているはずです。表面はK,DF,[CF,CI,C,]D,A,の7尺で滑尺裏はS1,L,T1の3尺ですが三角関数はインバースではなく順尺です。ポケット計算尺のように携帯を意識した豚革製サックケースが標準で付属しているところが学生尺としては珍しいのですが、こちらも輸出を意識してのことでしょうか?当時のダブルスターリレー独特の弁当箱にような黄色いアルマイト処理がされた裏板で、表面セルロイドも光沢仕上げというのが目を引きますが、本当に計算尺として品質が上がるのはRelay末期のNo.84を待たなければいけなかったのかもしれません。デートコードは「CS-3」ですから昭和29年3月の佐賀製。発掘場所は愛知県内からでした。
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