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January 18, 2022

☆Relay☆ No.R-816 8"学生用計算尺

 ダブルスター時代のRelay No.R-816 学生用です。このアルファベットが頭につく品番はアメリカへの輸出品番と言われていますが、この昭和20年代末期から30年代には国内にも広く出回っており、必ずしも輸出専用というわけではないようです。この「R」が練習用とか生徒用を表し、800番台は8インチの片面計算尺を表します。ただ、アメリカでは昔から生徒用も10インチの片面計算尺が主流でしたので、この一連のR800番台8インチ尺が輸出されていたのかというと2、3のOEMブランドがあったのみで、さすがに8インチ計算尺はオフサイズ扱いだったようです。この8インチというサイズの計算尺はアメリカのほうが出現が早かったのですが戦前に早くも淘汰されてしまいました。
 日本では戦時中、旧制中学での教育のために作られたHEMMIのNo.2640が標準になったため、学生用計算尺というと8インチ片面尺というのが標準化してしまいましたが、この8インチというのは当時の教科書を開いたときにはみ出さないサイズということになっています。ただ、戦時中ということもあり、材料を節約するために2インチ短い計算尺を標準にしたという動機のほうが大きかったはずです。
 そのような8インチ学生用計算尺に√10切断ずらしが採用されたのは昭和25年頃にリリースされたHEMMIのNo.45だと思われますが、RelayではHEMMIに遅れてR-806とR-816という2種類の計算尺がほぼ同時にリリースされています。R-806はおそらく当時各社でよく作られた表面しかなく裏側に三角関数はおろかセルロイドも貼られていないというチープな初心者用ですが、このR-816はHEMMIのNo.45に対して表面にK尺まで加わった豪華版。当然のことながら裏面にも三角関数もL尺もあるのは昭和36年リリースのHEMMI No.45の改良版No.45Kよりもかなり早かったということになります。ただ、HEMMIのNo.45は相当な数が残っているのにも関わらず、このRelay R-816は珍尺に近いくらい数が少ないことからもわかる通り、HEMMI No.456の競争相手にはならなかったようです。また、滋賀のKIM氏も言われている通り、このR-816も例外ではなくセルロイドの経年劣化で左右の基線が一致しないのです。というのも剥がれかけたセルロイドをめくってみると、HEMMIでは竹の表面を接着剤の食いつきを良くするために加工してあるのにRelayは表面がつるつるのまま。それがどうやらセルロイドの収縮防止には何の配慮もなかったために、65年以上の経年で縮んでしまったということなのでしょう。また、このR-816は竹は組み合わせられておらず、単純に切ってみぞを加工しセルロイドを張っただけです。そのため、ある程度のエージングもなしに市場に出されたことも容易に想像されます。これも目盛のズレに影響しているはずです。表面はK,DF,[CF,CI,C,]D,A,の7尺で滑尺裏はS1,L,T1の3尺ですが三角関数はインバースではなく順尺です。ポケット計算尺のように携帯を意識した豚革製サックケースが標準で付属しているところが学生尺としては珍しいのですが、こちらも輸出を意識してのことでしょうか?当時のダブルスターリレー独特の弁当箱にような黄色いアルマイト処理がされた裏板で、表面セルロイドも光沢仕上げというのが目を引きますが、本当に計算尺として品質が上がるのはRelay末期のNo.84を待たなければいけなかったのかもしれません。デートコードは「CS-3」ですから昭和29年3月の佐賀製。発掘場所は愛知県内からでした。

Relayr816
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January 17, 2022

HEMMI No.254W-S Stadia 10"両面別製学生用(工業高校土木科向)

 今の測量というと急速に発展したレーザー測距とマイクロコンピュータと無線LANを内蔵したトータルステーションの取って代わられて久しく、今や測量現場は一人で行うことができるものですが、30年ほど前までは助手が持った標尺をトランシットもしくはセオドライトと呼ばれる三脚の上に乗った望遠鏡で覗き、2本の線の間に見える標尺の目盛り長さや角度を割り出して距離を測るということが街の中でも当たり前に行われたのです。その角度と距離の関係はスタジア表と呼ばれる数表や計算機を叩いて求めるのですが、以前はスタジア計算尺というものがあり、これにより数値を求めることも行われたのです。ただ、目視による測定は当然のこと誤差があり、さらに目視で角度目盛りを読むときにも誤差が生じ、さらに計算尺で数値を読み取るのにも誤差があるアナログ的な測量法なわけですから、GPS衛星が地球の周りをカバーしている時代には基本的な測量法ではあるものの正確さを担保しきれなくなってしまいました。そのため、この目視によるスタジア測量法というのは土木科目の基本的な測量実習と測量士補や測量士の試験問題の中でしかお目にかからなくなりました。
 当方、まったく土木分野には縁がなく、トランシットは覗かせてもらったくらいなのですが、相当昔に航空写真測量の基本が知りたくて測量士補の教科書を入手したことがあります。まあ、スタジア測量の項目はすっかり忘れてしまいましたが、大学の工学部土木専攻の男が測量事務所のアルバイトに出かけ、夏の炎天下の中で標尺抱えて熱中症になりかけたとか、標尺抱えてふと横を見るとマムシに注意の看板があってゾッとしたとかそんな話が伝わってましたが、大学で測量実習の単位をもらい、卒業して測量士補かなにかの資格がもらえたのだったかどうかはうろ覚えです。そんな土木では必須の基本技術のスタジア測量は現場の土木技師を養成する工業高校の土木科でも当然のこと行われており、実習で単位を取得すれば卒業時に測量士補の資格要件が与えられたはずですが、今や工業高校の工業化学科あたりでも完全週休二日制の通常授業だけでは単位が足りないのか、昔は卒業時にもらえた一般毒劇物取扱責任者資格も補習を受けないともらえないという話も聞きますので、今はどうなのでしょうか?そんな工業高校土木科の先生の要求でNo.254Wにスタジア目盛を追加した別注品バージョンのNo.254W-Sです。おそらくは各学校に営業を掛けていた内田洋行のみの扱いだと思います。数ある工業高校科目別別注品No.254W-Sの中でも土木科専用スタジアというのは土木科以外には必要なかったわけで、全国の工業高校土木科、しかもある一部の先生の要求だけで作られた計算尺だけに数は少ないと思われます。個人的な感覚としてはこの工業高校科目別の別注品No.254W-Sは東日本よりも西日本、特に大阪、兵庫、京都あたりから出てくる例が非常に大きいような気がするのですが、どうやら関西圏では戦前からの老舗教材社と各学校とのつながりが深く、内田洋行とのつながりの深いHEMMIよりもRICOHの取り扱いが大きかったような気がします。そのため、関西圏に食い込みたかった内田洋行が高校の担当教諭の「こんなものがあったらいいのに」を具現化しものが科目別No.254W-Sなのではないか、なんて考えたりもするのです。それだったらNo.269という選択肢だってあるのでしょうが、さすがに土木科全生徒に購入させるということから価格的なしばりもあったのでしょうか。いつのタイミングか工業高校の計算尺もポケコンに様変わりしました。「子供が工業高校に入学したので購入させられたが、2ヶ月で退学したので不要になった」などという親が出品したポケコンをオクで見ると、なんか「親の心子知らず」を実感させられます(笑)
 このNo.254W-Sのスタジアは出現数がここ15年ほどで両手の数よりも少ないほどだと思うのですが、それだけNo.254Wのスタジアのバリアントを要求するような先生が少なかったのでしょうか?入手先もやはり関西圏の神戸市でした。
このNo.254W-Sスタジアのの表面は普通のNo.254Wと共通でLL/1,LL/2,LL/3,DF,[CF,CIF,CI,C,]D,LL3,LL2,LL1ですが、裏面がK,A,[SIN,COS,COS^2,TI,SI,C,]D,DL,L,となります。デートコードは「TB」と「UB」の実は2本まとめてで、それぞれ昭和44年2月と昭和45年2月のものです。どういうわけで一年違いのものが2本まとめて出てきたのか理由はわからないのですが、年子の兄弟が一年違いで同じ高校の土木科に入学したのだったら話はわかります。一年違いじゃお下がりというわけにはいきませんものね(笑)またこのスタジアバリアントは上下滑尺が同長のヨーロピアンスタイルのものがなく、K&E型のスタンダードスタイルのものしか見つからないようです。時代が下るに従い、わざわざ同長型を用意する意味と手間を失ったのでしょうね。次世代のフルログログ化したNo.254WNは当然のことK&Eスタイルオンリーです。

Hemmi254wsstag
Hemmi254wsstad

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