信和工業 HATO No.800 8"生徒用
信和工業のHATO No.800という生徒用8インチ計算尺ですが、これはおそらくは山梨のあるプラスチック計算尺のOEM専門メーカーにより提供された計算尺の一つだと考えていました。というもの、ほぼ仕様が同じ計算尺でプランドだけが違うものが数社確認されているためですが、印象としてはどうやら技研系や富士計算尺系ではなく、まったく別の山梨系統の計算尺のような気がします。ところが考えてみると、今を去ること15年も前に金属板で目盛が逆に陽刻された計算尺の原版のようなものが一度に多数出品されたことがあり、その原版は大阪の業者だったヘブン計算尺のHEAVENのものに混じってHATO No.800の原版のあり、合わせてHEAVENのポケット計算尺で尺全体が拡大レンズになっているものやHATO No.800の箱にも入っていないむき出しの完成品が多数含まれていたのです。当然、山梨のどこかの下請け業者から流れたのかと思っていたのですが、その出処は神戸。ヘブン計算尺が大阪だということもあり、もしかしてこれらは山梨ではなく関西のどこかにプラ尺の製造元があって、そこから高級な計算尺はないものの、8インチの学生尺や5インチの名入れノベルティー専用計算尺などを作っていた可能性がありそうなのです。そうでもなければ山梨で使っていた原版が関西から大量に出てくる道理がないような気がします。ただ、ヘブン計算尺を除いて信和工業にしてもその類似尺のパイロットの計算尺にしてもそのOEM先は殆どは東京の業者なのです。まだ新幹線も開通していなかった時代にわざわざ東京から大阪に計算尺の発注が出ることがあったのかは疑問ですが、その当時ノベルティー名入れ専用クラスのチープな計算尺はHEMMI計算尺や富士・技研系の計算尺メーカーではベースになるモデルがなくて、この時期、在関西の、それもプラスチック加工のメッカである東大阪あたりの工場が一手に生産を担っていたという可能性は大いにあったと思います。考えてみれば東京の興洋商事の名入れ計算尺もベースは関西メーカーのものだったかもしれません。
そんな関西のプラ尺専門メーカーOEMと考えられる信和工業のNo.800ですが、この手の計算尺に共通の説明書はまるで風邪薬の説明書のようなペラ一枚を折りたたんだもので、発売元の所在地も電話番号もないというシロモノです。尺度はK,A,[B,CI,C,]D,L,の7尺で滑尺裏はブランク。またカーソルはバネこそ入っているものの一枚のアクリル板を曲げて裏側に折り返しているだけの単純なものです。紙の筒型ケースは2種類あるようで、今回のものはブルーグレーの張り箱でした。姉妹品に√10切断系のNo.820があるようですが、それ以上の発展はなかったようでこの2種類以外にHATOブランドの計算尺は見たことがありません。入手先は東京の大田区からでした。
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