HEMMI No.257 10インチ化学工学用「TJ」
最近入手した2本目のHEMMI No.257、化学工学用計算尺です。化学工学用計算尺はすでにNo.257とNo.257Lの2種類を所持しているのですが、No.257のほうは製造が昭和30年代の前半の「GD」(昭和31.4月)と早く、昭和40年代に入ってからの、出来ればNo.257Lに切り替わる直前の末期型No.257とゲージマークの書体などの違いを詳細に観察してみたいという欲からつい「ポチッとな」してしまったのです。ケースが紺帯時代のものなので、昭和41年から昭和45年あたりのものだと思っていたのですが…。届いたNo.257はデートコード「TJ」だったので昭和44年の10月生産品です。昨年入手したNo.257Lがデートコード「VC」の昭和46年3月生産品」で、紺帯箱入りでしたからその年代差は一年半以内ということになり、目論見通りNo.257としてはマイナーチェンジ直前の最終仕様ということが出来ると思います。
基本的には尺度などの差はないもののはやり単位の書体などに些細な差は認められます。まず、GDのL尺の数字はそのままですが、TJのほうは数字の前に小数点が存在すること。よくあるπゲージマークの違いは双方にほとんど差はないように見えます。裏面単位系の書体などにはけっこう見かけ上の差があり、ますGDのCh尺のhの末端が跳ねているのにTJは下がったまま。また、GDがαtmという単位に対してTJは素直にatmgとあり、さらにGDがLbs/in2 Gage(ポンド/スクエアインチ)に対してTJはlb/in2 gageになっていました。そして一番気になっていたのが物質名の追加が無かったかどうかでしたが、TJのほうにはMo(モリブデン)のあとにさり気なくI(ヨウ素)が追加されているようです。入手先は兵庫県に姫路市で、ビニール袋は開封されていたもののまったく使用した跡のない未使用品でした。
実は昨年、HEMMI No.257Lを落札した際に発送時は無事だったカーソル枠が破断して届き、ありがちなことなのでいちおう売り主に話だけして、昭和30年代中頃のNo.259のジャンクからカーソル枠だけトレードして交換したのですが、たまたまケースを逆さまにしたら蓋がゆるくて本体が30cmくらいの高さから絨毯に落下。それだけでカーソル枠の同じ箇所が破断してしまいました。10年くらい古いカーソル枠でも同じ箇所が破断したとなると、もう寸法公差がプラスに傾いているカーソル硝子のせいだとしか思えません。カーソル硝子が標準よりも縦か横の寸法が大きくて常にカーソル枠を押し広げている状態になっていて、温度低下の金属収縮と衝撃でカーソル枠が破断してしまうのが原因と結論付けました。
このNo.257も届いた当初は何でもなかったのに、数時間後に見てみると同じくカーソル枠上部左端が破断。30年代のカーソル枠には起きない現象が昭和40年代中頃のカーソルには起きているということは、カーソル枠自体の寸法誤差ではなく、どうもこの時代にカーソル枠を破断させるカーソル硝子が混じっているとしか思えないのです。念のためノギスで寸法を測ってみるとどうやら1/10mmくらいのプラスの誤差で仕上がっているものがありこれが怪しいのです。たとえカーソル枠をハンダ付けしたところでこのカーソル硝子をはめるといつかはハンダ付け部分が取れることは目に見えているので、まずはカーソルグラスをオイルストーンなどで砥いで硝子の寸法を誤差の範囲内に収める作業から開始。そしてカーソル枠は0.6mm直径の表面実装部品用共晶ハンダで100Wクラスの板金用ハンダゴテを使用し、フラックスも銅板などの専用フラックスを使用しました。なにせ接着面積が極小で、ハンダ付け向きの作業ではないのですが、カーソルグラスを削ったことでカーソル枠に負担をかけなくなって、何とか納まりがついた感じです。カーソル枠を破断させた人は、カーソル硝子を砥石で砥いで正寸に整形することがマストです。それをやらないとハンダ付け部分はいつか必ず剥がれます。また、ハンダを盛りすぎるとカーソル硝子が嵌らなくなりますからハンダの量は必要最低限で手早くハンダ付けしなけばいけません。まあ、日常ハンダ付けに慣れている人じゃないと難しい作業なのは確かです。
| Permalink | 0
| Comments (0)
Recent Comments