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May 22, 2022

HEMMI No.149A 5インチ両面機械技術用

 Dvc00553_20220522133001 HEMMIの代表的なポケットタイプの両面計算尺、HEMMI No.149Aですが、今まで3本入手しているもののたまたま3本とも未開封品だったため、恐れ多くて開封することを憚り、安心して使用できる中古品を探していたものの、No.149Aはそれなりに落札額が高いのです。それだけ計算尺に関わる人間ならば高周波素人でも欲しがる電子工学用No.266同様に誰もが最初のコレクション段階で少々金額が張ったとしても入手する計算尺ということが出来ます。以前は何か計算尺の精密度を鑑賞するという妙な人間がいて、その人達は尺度の数が多いほどその計算尺は「偉い」んだそうで、そういう人たちはNo.266を崇め奉り、No.250などは「あの何もない空間に腹が立つ」などと軽んずる輩も出てくる始末(笑) そういう計算尺鑑賞派にとっては最高の愛玩物がこのNo.149Aで、結果的に高額取引されることは否めません。それでなんとか今回、中古品で心置きなく使用できるNo.149Aを1本入手できました。1.5K円でドイツ製のポケットタイプ金属三スケが3本おまけで付いてきました。
 No.149Aは機械技術用計算尺のNo.259のサブセットの両面計算尺で、No.279Dが20インチ、No.259Dが10インチ、No.149Aが5インチのそれぞれ両面計算尺という存在です。この両面計算尺で3種類の長さが揃うのはこのシリーズのみで、あと3種類揃うのは片面計算尺のNo.72、No.2664S、No.2634。4種類あるのがNo.70、No.64、No.66、No.74と2シリーズしか無いのではないでしょうか?
 10インチと5インチがあるのは数多くの組み合わせがあるのですが、5インチで両面計算尺のNo.259DシリーズサブセットというのはNo.149Aが唯一です。それだけポケットタイプの計算尺としてのユティリティーが高かったために数多く作られて残っている数も多いはずなのですが、それにしても落札額は未だにけっこう高額です。
 戦後の日本で5インチ6インチの両面計算尺を最初に作ったのはどうやらダブルスター時代のRelayNo.550やNo.650だったようですが、その形状はK&Eタイプの10インチ両面計算尺をそのままスケールダウンした形状でした。ポケットタイプの両面なりにLL尺などが省略された必要最小限の両面計算尺だったものにHEMMIがぶつけて来たのがNo.149で、DI尺のない当時のNo.259と比較するとST尺が無い22尺、No.259及びDI尺が加わったNo.259Dは三角関数が順尺なのに比べるとNo.149は三角関数が逆尺です。DI尺がない分の工夫なのでしょう。このNo.149は上下の固定尺が同長のファーバーカステルスタイルで、当時まだこれだけの薄い竹にセルロイドを被せる技術が確立していなかったためか、セルロイドはサンドイッチ構造で上下は竹が見えています。そのNo.149が市場に投入されたのがおおよそ昭和34年と推定しています。というのも上下に竹がむき出しのNo.149は残存数が少なく、というよりも当時の経済事情でポケット尺の両面計算尺を買うのだったらまず10インチの両面計算尺のほうが優先という事情もあったようで、そのためかNo.149まで手が出ないということもあったのでしょう。東京オリンピックに向けたインフラ整備などもあった高度成長期の昭和30年代後半にはすでにNo.149Aにモデルチェンジしており、給与事情も好転したためかこちらのほうが圧倒的に残存数も多いですし、未開封新品のデッドストックも各地の鉱脈から豊富に発掘されます。そのため、希少性は全く無いのに落札額が高額になる計算尺の代表です。
Dvc00542-2  説明書は短冊型と冊子型があり、もちろん冊子型のほうが新しいのですが、その冊子型を2つ折にして革ケースに入った計算尺本体といっしょに外箱に納めるため、外箱の厚みが増しています。説明書は手持ちのものはデートコードが6807Yと6907Yがまだ短冊型で、7112Yが冊子型となっており、この間に変更があったようです。今回入手したものは本体のみで説明書はもちろんありませんでしたが、本体のデートコードが「VE」(昭46.5月)のため、どちらの説明書が付属していたかが微妙な境目にあるようです。それでいつNo.149からNo.149Aにモデルチェンジしたのかというと、おおよそ昭和37年から38年の間ではないかと考えているのですが、なぜセルロイドをエッジにかぶせただけで律儀に「A」の記号を追加して別物にしたのかというのも謎です。Relay/RICOHあたりなら同じ型番なのにまったく違う計算尺なんかけっこうあるのですが、Aの意味はAdvancedあたりの、日本語でいうと単なる「改」くらいの意味合いでしょうか?よく軍用機にあるマイナーチェンジごとに末尾にAから順番に付番していくような乗りだったのかもしれません。HEMMIのNo.149はRelay/RICOHでいうとNo.149にやや遅れて発売されたNo.551ですが、こちらはNo.149を2尺上回る24尺装備です。これは三角関数が順尺のため、DI尺を入れざるを得なかったのと、差別化のためにP尺を追加したためです。こちらもアメリカの業者のOEMブランドで相当数を売ったようですが、計算尺の出来栄えとしてはやはりNo.149/149Aのほうに分があるようで、カーソルグラスがアクリルかガラスかの質感の違いも大きいようです。
ちなみに今回のNo.149A(VE)は本体のみで革ケースもなかったのですが、たまたま以前にRICOHのNo.550Sの2本目を入手したときにそれが入っていた何故かHEMMI刻印の革サックケースがジャストフィットしました。ところがHEMMIにはこの形状の5インチ両面用ケースは無く、カーソル部分まで覆って保護するタイプの革ケースが普通なのですが、いったいこのケースは何用に作られたものでしょう?ちゃんと149Aのブリッジの跡が付いているし、素人がハサミでフラップ部分をちょん切ったという感じではないのです。ポケットから落下してカーソルグラスを割るリスクはあるものの、本体を取り出すのには非常に使い勝手がいいのです。どなたか何用のケースなのか教えて下さい(笑)

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