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May 26, 2022

HEMMI No.P267 10インチ構造設計用「ヘWJ」

 実に14年ぶり2本目のHEMMI No.P267構造設計用計算尺です。No.P270の大気汚染用計算尺とほぼ同時代の昭和46年以降に発売された新系列の計算尺で、当時すでに製造はHEMMIが直接関わらず山梨の技研系列のメーカーに丸投げOEMで製造されたもので、当時のFUJIの計算尺などと同様に着色されて発売されました。ただ、FUJIの計算尺の滑尺はFABER CASTELLがそうであったように緑色(FABER CASTELLのシンボルカラー)だったことを世界のHEMMIが嫌がったためか、薄いブルーに着色されており、このブルーの滑尺は学生尺のP45SやP45Dなどにも採用されていて、後期のHEMMIプラ尺のアイデンティティーになったような感があります。中にはこの時代まで製造されたNo.P261のようにブリッジとカーソルバーが緑で滑尺が白のものがブリッジ、カーソルバー、滑尺まですべてブルーにマイナーチェンジし、全く違う印象の計算尺になったものもあります。当時はすでにHEMMIに特殊計算尺を設計する人材がおらず、400番代の特殊計算尺はすべてヘンミ計算尺自身で設計されたものではなく外部の技術者の考案によるものです。また昭和30年代から盛んにヘンミサークル誌を通して計算尺論文等を募集しており、その中から計算尺のアイデアをもつ人材を探していたのでしょう。そんな投稿者の一人が当時不二サッシ工業設計部強度計算係勤務の伊藤次朗氏で、このNo.P267は氏の考案が製品になったものです。当時、伊藤次朗氏はカーテンウォールの構造設計の第一人者で、氏のおかげもありその後霞が関ビルを始めとする高層ビル群が誕生するきっかけになりました。氏は「朝、会社に着いてまっさきに計算尺に触れると全身に血が巡るような気がする」などということも言っていたほどの計算尺ヲタクで、日頃から自分なりの計算尺の設計アイデアを練っていたその情熱は大正末期に猿楽町の逸見の事務所にさまざまな考案・意匠を持ち込んで入り浸っていた往年の計算尺ヲタクたちと何ら変わりません。しかし、その構造設計計算尺のアイデア発表から発売に至るまで数年のインターバルがあり、大手ゼネコンでも構造計算はIBMか富士通のコンピュータが急速に普及しました。以前No.269を譲っていただいた昭和42年入社の大手ゼネコン地方支社社員の方でさえ「No.269を買ったけど、数回使用しただけであとは計算機叩いていた」という時代の変換期に発売された計算尺だったのです。説明書におそらくは伊藤氏の言葉で「最近、コンピュータや電子式卓上計算機などの進歩、普及はめざましいばかりです。ややもすると計算尺は軽視されがちですが、計算尺にはそれなりの長所があります。とくに、構造設計の場合は、計算尺の精度で十分であることと、ファクターとファクターの乗除計算をする場合が多いので、計算尺が非常に適当しています。コンピュータと共にご愛用下さい」などと書かれていましたが、当時のモーレツサラリーマンが仕事に追われ、特殊な新しい計算尺を習得する時間もなく、わざわざ後発の専用計算尺を使おうという人も少なかったのでしょう。用途が限られるということもあって発売したはいいけれども「売れなかった計算尺」の代表みたいなものです。追加生産分は在庫が積み上がっていたようで、実に西暦2000年になる直前まで注文すると入手可能だったという話も聞いています。同じようにNo.269の土木用も21世紀に入るまで在庫があったそうですから、機械設計や電気技術以上に建築や土木はコンピューター化で計算尺の引退が早かったのでしょうね。実はこのNoP267のあとに同じく伊藤氏の設計のサッシデザイン/カーテンウォール構造計算尺も出来ていたものの試作のみで、一般向けに市販されなかったのはNo.P267の在庫の山に懲りたからでしょうか?長野の塩尻市からやってきたNo.P267はデートコードが「ヘWJ」で昭和47年10月製。頭のへの字は製造委託先が当時ドイツ製プラ尺なども製造していた関係で発注先を区別するためヘンミのヘの字を付けたのでしょう。ちなみに最初に入手したものはデートコード「UL」昭和45年12月製。おそらくはP267の初回生産ロット品だと思われます。尺度や特徴に関しては14年前に詳しく書きましたのでそちらを参照ください。

Hemmip267
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