Royal ロイヤル計算尺 10"ダルムスタット型技術用?(内田洋行輸出用?)
Royal Plastics Slide Ruleというお目に掛かるのは初めてのプラスチック製計算尺なのですが、国内にはまったくこのロイヤル計算尺の情報はなく、辛うじてアメリカから「内田洋行のUK向け輸出用ブランド名」という情報があるだけです。考えてみれば内田洋行といえば戦後にわざわざ計算尺課という部署を作り上げ、HEMMI計算尺の最有力なディストリビューターとして全国の教育機関にHEMMI計算尺を売るだけではなく、計算尺普及のための教育や指導、ならびに文部省検定の制定などに多大な貢献を行った会社ですが、こと輸出に関しては欧米には個人商店時代からのHEMMIの代理店が存在し、HEMMI計算尺を輸出品として扱うことが出来ないというジレンマがあったのではないかと想像してます。
そのためかどうかはわかりませんが、山梨のプラ尺メーカーの輸出向け既製計算尺を、自社から輸出するためのブランドとして使用したのがこのRoyalというブランドではないかと思われます。それで今回入手したRoyalブランドの計算尺は構造的にはHEMMIのP45Dなどと共通ですので、おそらくはFUJI計算尺のOEMではないかと思われますが、ケースはある時期の技研計算尺にも似ています。時期的には昭和40年代中頃よりも古いのではないかと思われますので、もしかしたらFUJIからOEM専業になっていた技研工業のほうに回された仕事かもしれません。
ケースにはRoyal Plastics Slide Ruleの表示はあるものの、本体にはメーカー名も形式名もまったくありません。それで、FUJIの輸出用計算尺にも同尺度のものがあるだろうと調べてみるとFUJIのNo.201Pがそっくりです。カーソルの形状もFUJIのNo.2125Dあたりと同じカマボコ状のものです。ただし、No.201PはDI尺がP尺に変わってますが。このRoyalはFUJI計算尺の滑尺が薄いグリーンに着色される以前のものらしく、のちのFUJI No.201Pは滑尺がグリーンです。ケースも紙製ですからのちのポリエチレンケース一辺倒になったFUJI計算尺よりも年代的には古そうな。尺度はLL1,LL2,LL3,A,[B,BI,CI,C,]D,DI,K,LL0の12尺。滑尺裏がT2,T,L,S,の4尺の合計16尺ですが、裏側に副カーソル線窓が空いていないため、三角関数の計算は滑尺を裏返さないと計算できません。この裏側に副カーソル線窓がないFUJI製輸出向き計算尺は割りに種類があるようですが、単に単価を下げるためのコストダウンの産物なのでしょう。それだけ輸出用計算尺ともなると仕切価格が厳しかったのでしょうがこれだけ尺を詰め込んで副カーソル線窓も開いていない計算尺は国内では受け入れられなかったでしょう。またUK向けのブランドと言う情報ですが、自由貿易港香港を拠点にした代理店により、東南アジア方面にこのロイヤル計算尺は出回っていたかもしれません。同じくFUJI計算尺がOEMで製造に関わった輸出ブランドHOPEと同様に。入手先は大分県内からですが、輸出先の都合か何かでキャンセルになったものが換金のためHOPE同様に国内に出回った例もあったのでしょうか?まあ天下の内田洋行の販売網からすれば、販売報奨金代わりにHEMMIの学校納入用計算尺のバーターで末端の教材問屋に配ったという可能性もありますが、今までまったく姿も形も国内からは見つからない計算尺というのがHOPE同様に不思議な感じがします。入手先は大分県内ですが都内からなら余剰品換金説も成り立つものの、大分から発掘されたという事実が何となくバーター説というのもありうる話。おそらくは既製品のFUJI No.201Pを無刻印の状態で輸出用に手当したものの、なんらかの理由で余剰になったものが国内に出回ったのは確定的のようです。もちろん国内用の説明書の用意なんかなかったでしょうから中箱と本体だけで出てきたものですが、中身は未使用品でした。入手先は大分市内です。それでまたそっくりさんを発見したのですが、それは件のHOPEの輸出用No.65-Gというもの。こちらのほうは尺度もほぼ同じですが、表面A,B,尺とC,D,尺が印刷でグリーンに着色されています。RoyalにしてもHOPEにしても輸出用なのに国内からひょっこり出現するという怪しさは共通かも(笑)
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