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August 17, 2022

Royal ロイヤル計算尺 10"ダルムスタット型技術用?(内田洋行輸出用?)

Royal Plastics Slide Ruleというお目に掛かるのは初めてのプラスチック製計算尺なのですが、国内にはまったくこのロイヤル計算尺の情報はなく、辛うじてアメリカから「内田洋行のUK向け輸出用ブランド名」という情報があるだけです。考えてみれば内田洋行といえば戦後にわざわざ計算尺課という部署を作り上げ、HEMMI計算尺の最有力なディストリビューターとして全国の教育機関にHEMMI計算尺を売るだけではなく、計算尺普及のための教育や指導、ならびに文部省検定の制定などに多大な貢献を行った会社ですが、こと輸出に関しては欧米には個人商店時代からのHEMMIの代理店が存在し、HEMMI計算尺を輸出品として扱うことが出来ないというジレンマがあったのではないかと想像してます。
 そのためかどうかはわかりませんが、山梨のプラ尺メーカーの輸出向け既製計算尺を、自社から輸出するためのブランドとして使用したのがこのRoyalというブランドではないかと思われます。それで今回入手したRoyalブランドの計算尺は構造的にはHEMMIのP45Dなどと共通ですので、おそらくはFUJI計算尺のOEMではないかと思われますが、ケースはある時期の技研計算尺にも似ています。時期的には昭和40年代中頃よりも古いのではないかと思われますので、もしかしたらFUJIからOEM専業になっていた技研工業のほうに回された仕事かもしれません。
 ケースにはRoyal Plastics Slide Ruleの表示はあるものの、本体にはメーカー名も形式名もまったくありません。それで、FUJIの輸出用計算尺にも同尺度のものがあるだろうと調べてみるとFUJIのNo.201Pがそっくりです。カーソルの形状もFUJIのNo.2125Dあたりと同じカマボコ状のものです。ただし、No.201PはDI尺がP尺に変わってますが。このRoyalはFUJI計算尺の滑尺が薄いグリーンに着色される以前のものらしく、のちのFUJI No.201Pは滑尺がグリーンです。ケースも紙製ですからのちのポリエチレンケース一辺倒になったFUJI計算尺よりも年代的には古そうな。尺度はLL1,LL2,LL3,A,[B,BI,CI,C,]D,DI,K,LL0の12尺。滑尺裏がT2,T,L,S,の4尺の合計16尺ですが、裏側に副カーソル線窓が空いていないため、三角関数の計算は滑尺を裏返さないと計算できません。この裏側に副カーソル線窓がないFUJI製輸出向き計算尺は割りに種類があるようですが、単に単価を下げるためのコストダウンの産物なのでしょう。それだけ輸出用計算尺ともなると仕切価格が厳しかったのでしょうがこれだけ尺を詰め込んで副カーソル線窓も開いていない計算尺は国内では受け入れられなかったでしょう。またUK向けのブランドと言う情報ですが、自由貿易港香港を拠点にした代理店により、東南アジア方面にこのロイヤル計算尺は出回っていたかもしれません。同じくFUJI計算尺がOEMで製造に関わった輸出ブランドHOPEと同様に。入手先は大分県内からですが、輸出先の都合か何かでキャンセルになったものが換金のためHOPE同様に国内に出回った例もあったのでしょうか?まあ天下の内田洋行の販売網からすれば、販売報奨金代わりにHEMMIの学校納入用計算尺のバーターで末端の教材問屋に配ったという可能性もありますが、今までまったく姿も形も国内からは見つからない計算尺というのがHOPE同様に不思議な感じがします。入手先は大分県内ですが都内からなら余剰品換金説も成り立つものの、大分から発掘されたという事実が何となくバーター説というのもありうる話。おそらくは既製品のFUJI No.201Pを無刻印の状態で輸出用に手当したものの、なんらかの理由で余剰になったものが国内に出回ったのは確定的のようです。もちろん国内用の説明書の用意なんかなかったでしょうから中箱と本体だけで出てきたものですが、中身は未使用品でした。入手先は大分市内です。それでまたそっくりさんを発見したのですが、それは件のHOPEの輸出用No.65-Gというもの。こちらのほうは尺度もほぼ同じですが、表面A,B,尺とC,D,尺が印刷でグリーンに着色されています。RoyalにしてもHOPEにしても輸出用なのに国内からひょっこり出現するという怪しさは共通かも(笑)

Royal
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August 15, 2022

☆Relay☆ E-1001 10インチ電気技術用

 ☆Relay☆E-1001というダブルスターリレー時代の輸出品番電気用計算尺です。RelayとRicoh時代の電気用計算尺No.107は所持しているのですが、昭和30年前後の輸出用電気尺には初めてお目にかかりました。当時のリレー産業時代のRelay計算尺はほどんど輸出で成り立っていたことが伺え、かなりの仕向け先ブランドを抱えていたのは国別の有力な代理店1社に絞って計算尺を輸出していたヘンミ計算尺とは異なります。また、仕向け先からの要求で作り上げた国内には出回っていない尺度の計算尺も多く、その点でも興味は尽きないのですが、ことRelayブランドの計算尺にあっては日本国内向けと同様のものが輸出用品番を付番して自社ブランドで輸出されたものが多いのです。それも後のRelayやRicohの同型式のものと比べると微妙に尺度のレイアウトが異なっていたりして、そういう差異をほじくり出すのも面白いのです。
そもそもRelayの100番代片面計算尺は戦前のIdeal Relayブランドの時代には成立していて、おそらくはNo.107も軍需産業用の用途として戦時中にすでに発売されていたとは思うのですが、Ideal Relay時代の一般のマンハイムタイプの計算尺は珍しくないものの用途別計算尺は航空用計算尺のNo.109を2本所持しているだけで戦前モノのNo.104のスタジアやNo.106の坑道通気、No.107の電気などは過去オークション上に登場したかどうかも定かではありません。特筆すべきは戦争終末期にいよいよ金属の枯渇により計算尺のカーソル枠まで代用品の竹で作ったのはRelayだけで、HEMMIは軍納があったためかカーソルのバネをハーフサイズにして金属節約したものはあったものの、最後まで学生用のNo.2640でさえ金属製カーソル枠で作り続けられています。まあ戦後になってさすがに耐久性に劣る竹枠カーソルは新しい金属枠のカーソルに交換されたようで、確認できたものはいままで3点ほどしかありません。残っていないのではなくて残らないというのが正確なような。
 そのダブルスターブランド時代のNo.E-1001ですが、尺度のコンテンツはのちのRelay No.107やRicohのNo.107と同じものの、レイアウトが全く異なります。No.107はべき乗尺をすべて滑尺裏に集めたのに、このE-1001はべき乗尺が表面にあります。どちらもダルムスタット型の片面尺なのですが、ここまで見た目が異なるというのは全く知りませんでした。E-1001は表面がE,LL2,A,[B,K,CI,C,]D,LL3,V,の10尺、滑尺裏がS,L,T,の3尺で、合計13尺です。これに対してNo.107は表面がE,V,A,[B,K,Ci,C,]D,S,Tの10尺で、滑尺裏がLL3,LL2,LL1,L,の4尺の合計14尺とL尺が増えています。べき乗尺が滑尺裏に集められて、より利便性が増したような気がします。、このダブルスターブランド時代のNo.107や、未だ現物がない戦時中のアイデアルリレーブランドのNo.107のレイアウトが果たしてこのE-1001と同じなのか、それとものちのNo.107のほうと同じなのかはいまのところわかりません。ところが今回のE-1001よりも新しいGK-2刻印の国内向けNo.107の情報があり、こちらはE-1001とまったく同じでした。そうすると他のRelay計算尺にもありがちですが、同一型番なのにいつのまにやらまったく見かけの異なる計算尺にマイナーチェンジしてしまったようです。その境目はやはり昭和33年から昭和34年に掛けてでしょうか?そうなると、おそらく戦時中に発売されたと思われるIdeal Relay時代のNo.107はこのE-1001とまったく同じものであったことが推測出来ると思います。戦時中、HEMMIのNo.80が両面尺のNo.153同様に電気技術を離れて広く軍事産業分野で多用されたのはべき乗尺があったからではないかと思うのですが、おそらくIdeal RelayのNo.107も当初からそのあたりの需要を狙ったのかもしれません。ただ、当初から3本線カーソルは用意されていなかったようです。デートコードは「CS-3」ですから昭和29年3月の佐賀製。ダブルスターリレー計算尺時代にありがちの象牙色っぽい光沢表面のセルロイドと黄色いアルマイトの裏板が使用された計算尺です。入手先は都内からでした。

☆Relay☆ E-1001 電気技術用(CS-3)

Relaye1001
Relaye1001_20220815105001
Relay No.107 電気技術用(J.S-3)

Relay107
Relay107_20220815124601

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